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現地記者が見るPSGの今シーズン…エメリ監督が起こした「競争」の正体

パリ・サンジェルマン(PSG)はパルク・デ・プランスで7-1とASモナコを下し、リーグ・アン優勝を決めた。これは、常に優勝を追い求めてきたチームの息の長い仕事の賜物である。同時に、昨シーズン、国内リーグ制覇という栄誉をモナコのために諦めざるを得なかったウナイ・エメリ監督の手腕が認められた瞬間でもある。すべてが完璧だったわけではないが、エメリ監督の手腕は成功したと言わざるを得ない。

「競争」――策士エメリが絶えず口にする言葉のひとつだ。

今シーズンずっと、エメリ監督は最高の選手を起用すべく、厳しい要求を出し続けてきた。指揮官はライヴィン・クルザワを信用するあまり、左サイドのプレーが満足できるものでなくなっているという明白な事実に苦しまざるを得なくなった。そのため、シーズン当初には明確であった、クルザワとユーリ・ベルチチェのヒエラルキーは次第に逆転し、ベルチチェは、最高に重要な試合でプレーするようになっていく。

同じことは、ニース戦(2-1)とクープ・ドゥ・ラ・リーグのモナコ戦(3-1)でベンチだったラッサナ・ディアラにも言える。この件に関して、エメリ監督はこう説明している。

「実力と彼が成し遂げてきたことには、とても満足している。だが、これが競争というものだと彼も理解しているだろう。このことは、彼がPSGと契約する際、話をした」

だからこそ、実力は充分ながらこのポジションを嫌がっていたアドリアン・ラビオが、いくつもの重要な試合でアンカーとして起用されたのであり、レオナルド・ジャルディム監督率いるモナコとの、タイトルがかかった試合でもそうだったのだ。同じく、ディフェンスラインもチアゴ・シウバ、マルキーニョス、プレスネル・キンペンベの3人で競争が行われてきた。

一方で、熾烈な競争にさらされなかった選手もいる。アルフォンス・アレオラだ。ゴールキーパーのアレオラはリーグ・アンでもチャンピオンズリーグでもプレーし、控えのGKケヴィン・トラップには2つのカップ戦が任された。このわかりやすいヒエラルキーは、競争が徹底されていなかった昨シーズンとは逆に、2人にとって効果的で不可欠なものであり、健全な競争の恩恵に浴したとも言える。ドイツ代表のトラップは、充分なプレー時間が与えられていないと言うが、国内の2つのカップ戦はトラップの占有であり、すでに3月31日にボルドーで行われたクープ・ドゥ・ラ・リーグ決勝のモナコ戦の勝利(3-0)により、自身初めてのタイトルを獲得している。また、第31節のパルクでのアンジェSCO戦(2-1)では、ゴールキーパーコーチのハビ・ガルシアがエメリ監督に「トラップはワールドカップ前でもう少し多くのプレー時間が必要だ」と囁いたおかげで、ドイツ人GKはピッチに立つことができた。特別な配慮に感激したトラップは、ミックスゾーンで、コーチへの感謝を語っている。

Alphonse Areola Real Madrid PSG Champions League 14022018Getty

下された厳しい選択

エメリ監督は今シーズン、皆を驚かすような選択をしてきた。チアゴ・モッタが長引くケガでマルセイユへの遠征(2-2)に帯同できなかった際、エメリ監督はディフェンスラインの前にラビオを配置し、同時にユリアン・ドラクスラーを左のつなぎ役に起用した。2人はそれぞれの慣れないポジションで活躍し、監督の選択が戦術的に正しかったことを証明した。

だが、ラビオは守備的な役割を与えられることを好まず、エメリ監督はほどなくして新たなテストを行うことになる。こうして、生粋の10番タイプであるジョバンニ・ロ・チェルソが、すぐにモッタの代役として抜擢されることとなった。ロ・チェルソは驚くほど素早いボール奪取を見せて不足なく役割を果たし、エメリ監督はまたしても賭けに勝ったのだった。

模範生ロ・チェルソに気を良くした策士エメリは、サンティアゴ・ベルナベウでの試合のスターティングメンバーにも、彼を起用。2月14日の夜、エメリ監督はキャプテンのチアゴ・シウバをベンチに置き、キンペンベをマルキーニョスとともに先発させた。これらの選択は、今まで挙げてきた決断と異なる結果となる。さらに、エディンソン・カバーニに代えてトーマス・ムニエを投入したが、多くの疑問を巻き起こし、敗戦の主な原因であると指摘された。それでもエメリ監督はまったく動じることなく、リーグ・アンのニース戦(2-1)で同じ交代を繰り返し、レアル戦よりは成功したのだった。

選手の管理に関していえば、エメリ監督のスター選手のエゴも封じることに成功した。特筆すべき出来事として、冬の中断期間明けに2人の選手が集合に遅れた。一人はカバーニで、いつものことだったが、もう一人はハビエル・パストーレであった。エメリ監督は遅刻した2人を躊躇なく処罰し、コンディション的には問題がなかったにも関わらず、クープ・ドゥ・ラ・リーグの準々決勝のアミアンSC戦(2-0)に出場させなかった。

唯一の例外は、ダニエウ・アウベスとムニエだ。全試合出場したいと強く主張したことにより、アウベスは平均的なプレーしかできていなかったときにも、優先的に起用されていた。シーズン当初、アウベスはリーグ・アンとチャンピオンズリーグ、ムニエはカップ戦というヒエラルキーが存在していたが、これは、シーズンが進むにつれて消えていった。

PSGのフランスリーグ7回目の優勝が決まった夜、エメリ監督は採点でPSGの監督として、カタール・スポーツ・インベストメント(QSI)がクラブの筆頭株主になって以来の最高得点である、2.45点を獲得した。アデュー(さよなら)の代わりとなる最後の贈り物だろうか。

PSG stats entraîneursGoal

文=サブリナ・ベラルミ/Sabrina Belalmi

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