【現地発】逆境でも変わらなかった岡崎慎司の真摯な姿勢…チャンスを待ち、活かした日本人がもたらしたゴラッソでの歓喜

ウエスカFW岡崎慎司が15日のリーガ2部第28節アルメリア戦で5得点目を記録。今冬に獲得したFWラファ・ミルに出場機会を奪われ、ここ2試合ベンチスタートだった岡崎だが、ライバルが出場停止で欠場した一戦で先発復帰を果たすと、見事に期待に応えた。『マルカ』ウエスカ番、セラーノ記者が岡崎の現状を解説する。

■異なる意味のゴール

(C)MutsuFOTOGRAFIA

岡崎慎司がウエスカで過ごす日々に、暗雲が立ち込めていたのは間違いない。しかしクラブの本拠地アルコラスは今一度、彼のゴールに雄叫びを上げることになった。収容人数8000人弱のスタジアムが日本人のシュートに熱狂するのはこれで4度目。日本人がアウェー含め、スペインの地でゴールネットを揺らしたのは5度目だ。そして、このゴールはこれまでとはまた異なる意味を持つものとなった。

ウエスカはこの冬、ウォルヴァーハンプトン・ワンダラーズに移籍金300万ユーロを支払いFWラファ・ミルを獲得。191センチの長身を誇る22歳のスペイン人は、機動力の高い岡崎にとって良いパートナーになることが見込まれた。しかしながら、現実は違った。ウエスカを率いるミチェルはミルを獲得した直後、フォーメーションを1-4-3-3から中盤ダイヤモンドの1-4-4-2に変更して実際に彼と岡崎の2トップを試したものの、不慣れなシステムで中盤が機能しなくなってしまい、あえなく元のフォーメーションに戻すことに。そのあおりを受けたのは、岡崎だった。ミチェルは1トップに、日本人にない高さを持つミルを求めたのだった。

ウエスカにとってのガラクティコ（銀河系選手）だと鳴り物入りで入団し、一時期はずっとレギュラーを張っていた岡崎にとって、辛く、不安が募る日々だったろう。だがしかし、フットボール選手がピッチ内外で振る舞う姿、人間性は一緒だという通説はやはり真実のようだ。たとえベンチで過ごすことになろうとも、日本人の姿勢は変わらなかった。岡崎は現状に不満を漏らすことなく、練習に真摯に取り組みながら、チャンスを待った。そしてミルが出場停止となった今回のアルメリア戦で、3試合ぶりとなる先発出場を果たすと、見事チャンスをモノにした。しかも、さらなるゴラッソでもって。

■岡崎が生む歓迎すべき悩み

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決定機をなかなか生かせず、それでも果敢に走り続けた岡崎が褒賞をつかんだのは、時計が22分を示したとき。ダビド・フェレイロが左サイドからクロスを上げるや否やの刹那、日本人はマークにつくダビド・コスタスを一瞬の加速で振り切る。だが、ボールが飛び込もうとするところは、自分のいる位置の少し後方だった。すると背番号12は後ろに低く飛び上がり、しかし頭をしっかりと前に振って、ボールを枠内に向かわせた。叩かれたボールの勢いは速くも遅くもなかったが、まさかシュートまで持ち込むとは思っていなかったGKアントニオ・シベラが弾き損ね、ゴールラインを割った。ミルが持つ高さではなく低さが際立つヘディングシュートだった。

彼は同じくアルコラスで行われた第8節ジローナ戦でアクロバティックなボレーシュートを決めてみせたが、出場機会含めたチャンスをモノにする姿勢も含めて、今回のゴールの方がより心を打つものだったかもしれない。それにしてもゴールへの凄まじき執念と、それを実現する技術がしっかりと混ざったゴラッソだ。彼にはこういった、はたから見れば泥臭く、しかし機微あるゴールがじつによく似合う。その後クールに振る舞うのではなく、感情を吐き出すように口を大きく開けて走り回るゴールパフォーマンスも含めて。

スペイン語でアブリール・ラ・ラタ（缶詰を開ける）と言われる困難な行為、先制点の記録を岡崎がやってのけたウエスカは、その後シーソーゲームとなった試合に3-2で勝利。フル出場だった岡崎は、試合終了まで攻守両面でボールを追いかけ回し、練習から見せている執念を一度も切らすことなくたぎらせていた。しかし、アルコラスの観客は、岡崎のゴールとチームの勝利を、もはやワンセットとして考えていいだろう。彼がここでゴールを決めた4試合すべてで、ウエスカは確実に勝ち点3を手にしているのだから。

先発出場の機会を得て、そこですべきことをしっかり果たした岡崎は、再びストライカーに関する議論を活発化させるだろう。ミチェルは23日に行われる次節、敵地バジェカスでのラージョ・バジェカーノ戦で、復帰するミルと岡崎のどちらを先発で起用するのだろうか。はたまた、再び2トップを試す可能性もあるのかもしれない。いずれにしろ、彼にとってもウエスカのサポーターにとっても、歓迎すべき悩みであることは間違いない。

文＝クリスティアン・セラーノ(Cristian Serrano)／スペイン紙『マルカ』ウエスカ番
翻訳・構成・加筆＝江間慎一郎

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■異なる意味のゴール

■岡崎が生む歓迎すべき悩み

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