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王者・川崎F、公式戦連敗スタートも変わらぬ貪欲さを胸に連覇を目指す【J1戦力分析:川崎フロンターレ編】

■開幕予想スタメン

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■公式戦3連敗も…選手たちは前を見据える

初めてJ1王者として新シーズンに臨む川崎フロンターレは、セレッソ大阪とのFUJI XEROXスーパーカップに続き、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)でも上海上港(中国)と蔚山現代(韓国)に敗れて、公式戦3連敗スタートとなった。

試合ではボールこそ保持できているものの、連係面がまだまだ不完全で、肝心の縦パスが相手に引っ掛かるなど、ミスが散見される。好機も作っていないわけではないが、肝心のゴールネットを揺らすことができず、今のところ自慢の攻撃力は鳴りを潜めている。

一方、守備でも際どい場面でのミスから失点を重ねている。就任2年目となる鬼木達監督も「自分たちのミスからやられた失点」と指摘しているように、ACLをはじめとする強豪との戦いでは、ひとつのミスであり、一瞬のスキを突かれる“怖さ”を、選手たちは改めて痛感していることだろう。

ただ、選手たちは現実を受け止めつつ、しっかりと前を見据えている。

何よりチームの特徴である多彩なパスワークとアグレッシブなサッカーを極めようとする中で、彼らは継続することの難しさを、誰よりも知っている。そこは今シーズンもキャプテンを務める小林悠の言葉を借りよう。

「昨年優勝して今年はそれ以上の結果を求められる中で、いろいろと難しいことも起きると思う。その中で、どう成長していくかが大事になる。そのためにも昨年やってきたことをブレさせずに、継続していくことは一番チームとして続けていかなければならないところだと思います」

結果が出れば、すぐに進化であり、次なるバージョンアップを求めがちだが、新しいメンバーが加わった中で、昨季と同じ質を維持していく難しさもある。だから、鬼木達監督も、キャンプでは確認からはじめたのであろう。最終ラインを統率する谷口彰悟が言う。

「(キャンプでは)攻守において、『自分たちがまた、こういうサッカーをするんだよ』ということを、みんなで意思統一する作業に時間を割いてきた。しっかりボールを握る中で、前からボールを奪いに行く守備であったり。最後のところではブロックを作る守備だとかもそう。新しいことをやろうというよりは、今までやってきたことにプラスして、質や精度を高めていく練習が多かったですね。継続性こそが僕らの生命線じゃないですけど、優勝できた大きな要因でもある。そこは忘れてはいけないし、蔑ろにしてはいけないと思っています」

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■大型補強で厚みを増した攻撃陣

その上で、さらに質を高めていくという点においては、新戦力の活躍が欠かせない。そうした視点で見ると、風間八宏前監督時代から継続されるこのサッカーを知り尽くす大久保嘉人の復帰は、やはり大きいと言えるだろう。

実際、途中出場したスーパーカップや先発したACLの初戦を見る限り、周囲とのコンビネーションに違和感はなかった。また、大久保は、「以前は自分が得点を取らなければという思いがあったから、前でプレーしたかったけど、今はどこでもいい」と、復帰への決意を語っている。

事実、ACLの初戦は左サイド、続く第2戦の蔚山戦ではトップ下で先発したように、FWだけでなく、サイド、さらにはトップ下でプレーできる素養が大久保にはある。前線で起用された際は、エースである小林との役割分担を明確にする必要はありそうだが、大久保がひとりいることによって、今季の川崎Fは、さまざまなバリエーションが考えられる。

さらに、現在はケガからの復帰に向けてリハビリ中だが、齋藤学というドリブラーを手にしたことも大きい。ひとりで複数の相手を引きつける、もしくは抜き去ることのできる彼が加われば、永遠のテーマである“引いて守りを固める相手を崩す”際にも、有効な攻撃手段となる。途中出場から好機を演出できる長谷川竜也も含め、パスワークだけではなく、ドリブルという個の力で打開する攻撃こそ、2018年バージョンの川崎Fが見せる進化となるかもしれない。

また、公式戦に3試合連続で起用され、早くもデビューを飾った守田英正や湘南ベルマーレから獲得した下田北斗の加入で、中盤の選手層は厚くなった。懸念はセンターバックだが、ここは不動のコンビを組む谷口と奈良竜樹が、ケガなくフル稼働できるかにある。

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■Jを制してもなお、貪欲にタイトルを狙う

ACLでは躓いたが、それでも目指すのはJ1連覇も含めて、狙えるすべてのタイトルである。優勝したことで、今季の川崎Fは追う立場から、追われる立場へと変わった。それだけに周囲も、対戦相手も、厳しい目であり、対策を講じてくるだろう。ただ、それでも川崎Fには変わらないスピリットがある。キャプテンらしくなった小林がチームを代表するかのように語ってくれた。

「昨季優勝したといっても、ひとつだけですし、それも本当にぎりぎりで手にしたもの。本当にチャンピオンだと誇れるくらいの成績を残さなければ、大きな自信は得られないと思いますし、やっぱり僕らはチャレンジャーですよね。今年もタイトルを目指して、一丸となって戦っていくだけです」

ディフェンディングチャンピオンとして迎える今シーズンに当たって、鬼木監督は「チャレンジ精神」を忘れるなと選手たちに告げたという。追い求めるサッカーに完成がないように、川崎Fは今季も貪欲に勝利を、タイトルを狙っていく。

思い返せば優勝した昨季も、シーズン序盤は戦い方であり、それぞれの役割をいかに全うするかで苦しんだ。そこでチームとしても個としても、悩みに悩み、考えに考え、目指すべきサッカーがはっきりとしたことで、ひとつの結果を手にした。

だからこそ——昨季つかんだ確固たる自信をなくさないためにも、まずはひとつ目の勝利が大きな意味を持つ。王者としての自負と、変わらぬチャレンジ精神を携え、彼らは並々ならぬ決意で開幕戦に臨むはずだ。

文=原田大輔

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