FUJI XEROX SUPER CUP2019で浦和レッズのゴールを射抜いた強烈な左足。今季Jに加入した新外国籍選手の中でも特に大きな期待を寄せられる存在、それが川崎フロンターレのFWレアンドロ・ダミアンだ。3連覇を狙うチームに”強さ“と”高さ“という武器をもたらした。そんな彼はどんなサッカー人生を歩み、今に至るのか?
■荒削り過ぎるダイヤの原石
幼少からの育成組織が整備され、スカウト網が全国各地に張り巡らされているブラジルサッカー界において、ストリートサッカー育ちのサッカー選手は、もはや「絶滅危惧種」となりつつある。
そんな「絶滅危惧種」の一人が、川崎フロンターレに加わったレアンドロ・ダミアンだ。
彼のサッカー人生は、まるで出来過ぎた映画のシナリオを見るようでもある。
スラム街出身のクラッキ(名選手)は決して珍しくないブラジルではあるものの、ダミアンはプロチームの下部組織どころか、サッカースクールにさえ通ったことがない少年だった。
幼きダミアンがボールを蹴ったのはサンパウロ市内にある周囲を3つのファヴェーラ(スラム街)に囲まれた赤土むき出しのピッチ。10代当時、アマチュアの草サッカーチームでプレーしたダミアンは、1日あたり30レアル(約1000円)の助っ人代で試合に出場することもあったというが、プロへの道はあまりにも険しいものだった。
サンパウロ市内では名門のみならず中堅など計10クラブのテストにもことごとく不合格。父の勧めでブラジル南部の無名クラブにかろうじて合格するも、当時の指導者は細身の少年が成功するとは思っていなかった、と証言する。
ブラジル南部のマイナークラブでプロとしてプレーしていた2009年、転機が訪れる。ダミアンの活躍に目をつけたのは名門インテルナシオナウ。ただ、十代で基礎技術を学ぶ経験がなかった荒削りの大砲に対し、クラブはトップチームではなく、あえて下部組織に相当するインテルナシオナウBに所属させ、基礎技術を磨かせたのだ。
インテルナシオナウB時代には、半年間、元フットサルブラジル代表の名選手、オルチス氏がマンツーマン指導。「ダミアンは左足のキックが下手で、それを改善したが一番の欠点は、ポストプレーだった」とオルチス氏は証言する。荒削り過ぎるダイヤの原石を、あえて遠回りさせることで磨き上げたインテルナシオナウの指導方針はさすがだったと言える。
■「過去の人」で終わらなかった不屈の精神
©Getty Imagesその名をブラジルのみならず、南米全土に知らしめたのは2010年8月18日のコパ・リベルタドーレス決勝の舞台である。
インテルナシオナウは、メキシコのグアダラハラと対戦。優勝を決するセカンドレグは後半に入って1対1で拮抗していたが、後半18分、この大会初めてピッチに送り出されたダミアンはわずか2分後に決勝ゴール。シンデレラボーイとして、サッカー界の表舞台に躍り出た。その後、U-23ブラジル代表として2012年ロンドン五輪で得点王に輝き、ブラジル代表へと順調にステップアップしていく。
ブラジル代表の実況を担当する名物アナウンサーが「3階の高さから繰り出すヘディングシュート」と評した空中戦の強さと、相手をあざ笑うヒールリフトなど華麗な足技を兼ね備えたダミアンは、2014年のワールドカップブラジル大会でも有力な9番候補のはずだった。しかし――。
好事魔多し、と言うべきだろうか。
2013年のコンフェデレーションズカップでも主力として期待されたが、大会直前に負傷。代わって招集されたのが現在名古屋グランパスでプレーするジョーだった。負傷が癒えてもダミアンは、代表での居場所を失ってしまったのだ。
サントスやクルゼイロ、そして初めての海外移籍となったスペインのベティスなどでは鳴かず飛ばずのパフォーマンスが続き、もはや「過去の人」となった感があったかつてのシンデレラボーイが復活を遂げたのは2018年。
インテルナシオナウで復調し、ブラジル全国選手権で得点ランク7位となる10得点をゲットした。全国選手権での二ケタ得点は実に2011年以来である。
豪快なヘディングあり、キャプテン翼さながらのオーバーヘッドキックあり、と多彩なゴールパターンを持つダミアンは、ポストワークも一級品。タフで泥臭いサッカーを好むブラジル南部のインテルナシオナウでクラブ歴代10位となるゴール数を積み上げて来た。数少ない懸念材料は前線でハードワークするがゆえの負傷である。
文字通り、波乱万丈のサッカー人生を過ごして来た苦労人だが、実力は間違いなく一級品だ。
川崎Fでのデビュー戦となった2月16 日のFUJI XEROX SUPER CUP2019では左足で豪快に浦和レッズのゴールを射抜き、早くもクラブの初タイトルに貢献。新天地での大舞台で期待に応えてみせた。
苦楽をともにした父、ナタリーノさんへの敬意を表す口髭ダンスを含めてゴール後のパフォーマンスも多彩なレアンドロ・ダミアン――。王国産ゴールマシーンの、本格稼働が楽しみだ。
FW 9 レアンドロ・ダミアン
1989年7月22日生まれ、29歳。188cm/90kg。ブラジル出身。アトレチコ・イビラマ→ドーゼ・デ・オウトゥブロ→CNマルシリオ・ジアス→CAツバラン→インテルナシオナル→サントス→クルゼイロ/以上ブラジル→ベティス/スペイン→フラメンゴ→インテルナシオナル/ブラジルを経て今季川崎Fに加入。
文=下薗昌記
■試合情報
明治安田生命J1リーグ第2節
3月1日(金)19:00キックオフ
川崎フロンターレ vs 鹿島アントラーズ(等々力)
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