献身の象徴とも言うべきカイト…どのチームでも愛されたその魅力とは?

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1980年生まれのカイトが36歳で現役を引退した。純粋なストライカータイプの選手ではなかったが、カイトはどのチームでも指揮官や同僚から重要な存在として認識され、ファンからも愛されてきた。オランダ王者としてスパイクを脱いだ“汗かき役”の魅力に迫る。

Dirk Kuyt HP GFX

■信頼される最高の引き立て役

在りし日のオランダサッカー界最大のレジェンド、故ヨハン・クライフは生前、こう語った。

「カイトのような選手がチームにいるのなら、それは神のご加護と言っていい」

気難しいことで知られる大御所クライフは、はるか年下の同胞カイトを「ゴールドに匹敵する価値がある」と絶賛している。クライフがそもそも選手を褒めること自体、大変珍しいケースだった。

36歳となったカイトは16-17シーズン限りで現役を退いた。故クライフのカイトに対する評価を否定する者はいないだろう。

カイトはお金を払ってスタジアムで見る価値があるかと言ったらそうではないかもしれないし、エンターテインメントを提供するような選手でもなかった。だが、主役を引き立てる、脇役としての存在感は抜群だった。

決して一人で試合を決めてしまうようなこともないし、次々にネットを揺らすような決定力があるわけではなかった。だが、チームに対しての献身性は絶大なもので、どのチームでも指揮官やチームメートから全幅の信頼を寄せられる存在であり続けた。

HD Dirk Kuyt
■常にチームのために

1998-99シーズンにプロデビューを飾ったユトレヒトでは5シーズンを過ごし、在籍最終年の2002-03シーズン、オランダカップ決勝では獅子奮迅の活躍でマン・オブ・ザ・マッチに選ばれた。

リヴァプール時代には、エヴァートンとのマージ―サイド・ダービーでの決勝点や、マンチェスター・ユナイテッドとの大一番ではハットトリックを決めたことも。

フェネルバフチェ時代には、ガラタサライとのトルコ・スーパー・カップで1人目のPKキッカーという大役を務め、しっかりネットを揺らしている。

そして今年の5月14日、フェイエノールトを18年ぶりのエールディビジ優勝に導いた最終節ヘラクレス戦では、キャリア最後の試合でハットトリックをやってのけた。キャリアを通じて、カイトは決定的な役割を果たしてきたことを最後の最後で改めて証明している。

チームのために数多くのことを成し遂げてきたカイト。その献身的な姿勢について、かつてトッテナムやアヤックスで指揮を執ったマルティン・ヨルは「100%のチームプレーヤー」と称賛した。

2014年のブラジル・ワールドカップ、メキシコを下してのオランダの準々決勝進出は、カイトのマルチロールぶりによってもたらされた。オランダ代表での100キャップという節目の試合でカイトは左ウイングバックとして出場すると、試合途中で逆サイドにポジションを移した。

エスタディオ・カステランで行われた戦いでは、ゴールが必要な状況で前線に上がって相手の最終ラインと激しいバトルを展開し、試合終盤には右サイドに回って失点の危機を防ぐために自陣深くまでカバーリングに奔走した。

この日は奇しくもカイト最愛の父の命日でもあった。この試合でのカイトの鬼気迫る活躍がいかに凄まじかったかは、同じく先発出場したFWロビン・ファン・ペルシーの言葉が物語っている。

「カイトと少し話をしたんだ。僕は君のことを誇りに思っているってこと、そしてカイトは全ての選手のお手本になるべき存在だってね。(代表100キャップ達成は)すばらしいことだ。彼にふさわしい快挙だよ」

Kuyt ps

■ベニテス「何よりも精神面の強さが素晴らしい」

カイトは選手のための選手とも言える存在だった。チームメートをカバーし、ボールの受け手となり、栄光に向けて他者のために汗をかく。重要な局面でプレッシャーがかかるシチュエーションだったとしても、カイトは常に正しいポジショニングで、正しいタイミングに、正しい姿勢で臨む。ラインを抜け出してボールを受け、チームもそれに続く。

派手さはないがユーティリティー性に優れるカイトを指揮官たちは称賛している。ラファエル・ベニテスはカイトをアメリカの大手電池メーカーにちなんで“Mr.デュラセル”と呼んだ。自己犠牲と献身的な姿勢、そして滅多にケガをしないタフさに何度となく助けられたベニテスならではの賛辞だった。

ベニテスは2006年夏、カイトをオランダのフェイエノールトからアンフィールドへと連れてきた。「カイトは素晴らしいメンタルを持っている。我々は彼を右ウイングでもプレーできるストライカーとして考えている。それにセカンドストライカーとしてもプレー可能だろうね」と獲得の理由を述べている。

だが、カイトの献身性や類まれなバランス感覚はすさまじく、当時リヴァプールで本領を発揮できていなかった右サイドバック、フィリップ・デゲンのプレーを見て、監督にこう直訴したという。

「もし監督が望むのなら、僕は右サイドバックでもプレーできる」

これは彼の多才さだけの話ではない。実際、カイトはリヴァプールでキャリア最高のプレーを披露していたが、そんな中でチームのバランス感覚を見抜く力、チームへの献身性が素晴らしかったことを表す逸話でもある。

ベニテスは次のように述べて、カイトの真髄を強調した。

「カイトは常にチームのために働く準備ができている。彼はどんな指揮官も『チームに加えたい』と思う選手だろう。誰かのためにプレーするという覚悟が、常にできている。そして、いつだってチームを助けてくれるんだ」

「もし選手に対して、チームについて話す時、選手たちにカイトのような能力があったらどれだけ素晴らしいか。試合に向けて何かを変えないといけない状況や、選手のポジションを変えざるを得ない時、カイトはどのような状況にも対応してしまう。これは監督にとって大きな助けとなるよ」

また、カイトへの称賛の言葉は元オランダ代表監督ベルト・ファン・マルヴァイクも次のように語っている。

「カイトは本当に素晴らしい選手だ。彼は天性のチームプレーヤーであり、まさにお手本と言える存在なんだ。彼はいつでもチームのために集中していて、その姿勢が他の選手たちへの良い相乗効果を生むんだよ。私にとってそれは最高の体験だったね」

HD Dirk Kuyt Steven Gerrard

■献身性でファンからは絶大な支持

ユトレヒト、フェイエノールト、そしてリヴァプールのサポーター。いずれもカイトを重要な存在だと認めた。常に全力でトライし、自身が持つ全てをピッチに置いてくる素晴らしい選手として、どの所属クラブでも愛されたのである。

彼はキャリアを終えるまで、3つのクラブでリーグ戦の得点ランクトップ6に入った。また、トルコのフェネルバフチェでも3つのタイトル獲得に貢献し、サポーターから絶大な信頼を寄せられている。

カイト自身はこう語っている。「フットボールの世界には、たった一度のボールタッチで試合を決めてしまう選手と、常にチームのためにプレーする選手がいるんだ。僕は自分について、後者のカテゴリーに属する選手だと思っている。だけど、それは僕にとって何ら問題ではない。どの試合でも、勝つためにできることをやる。僕は“ファイター”だからね。全ての試合が僕にとっては等しく重要なんだ。すべての試合で全力を尽くすことができれば、おのずとタイトルはついてくるものさ」

カイトは持ち前の屈強なメンタルを最後まで保っていた。だが、そのままキャリアを続けるよりも、36歳にして現役に終止符を打つことを選んだ。

彼が16-17シーズン、フェイエノールトにもたらしたリーグタイトルは1998-99シーズン以来のもの。そしてカイトは王者としてピッチを去った。それは紛れもなく彼自身がこれまで体現し続けてきた、理想の一つの姿と言える。

そして17-18シーズンが始まる頃に、我々は大きな喪失感に直面することになるだろう。そう「カイトの姿はもうピッチで見られない」と痛感することは間違いない。

文=ロビン・ベアナー/Robin Bairner

GFX Dirk Kuyt quote 

 

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