Jurgen Klopp Liverpool Champions League 2018-19Getty

【独占】クロップが語る“メンタル”の育て方「人が好きなんだ。当たり前だろ?」/インタビュー

■成功の味

「いいね、カメラなしか!」

ユルゲン・クロップはリラックスした様子だ。日焼けした顔で笑みを見せるこのリヴァプール監督は、ゆったりと座って『Goal』に詳細を語ってくれた。

これは今日初めてのインタビューでもなければ、最後のインタビューでもない。ここはマンハッタンの中心にあるきらびやかなロッテパレスホテルだ。太陽の光が降り注ぎ、ニューヨークはいつものように喧騒に包まれている。廊下からは、チームランチに向かうクロップの選手たちの笑い声とジョークが聞こえてくる。アイコニックなヤンキースタジアムでのスポルティング・リスボン戦の前の話だ。

以下に続く

レッズの米国ツアーは完璧からは程遠かった。ケガ人がいたし、負けもした。選手が足りないため、新加入選手にさらなる脚光が浴びせられている。クロップへの質問は、チーム、そしてクラブに関することだ。

とはいえ、ハッピーなキャンプであることに変わりはない。リヴァプールは今やワールドクラスの1つに数えられるエリートチームだ。6月にヨーロッパチャンピオンとなったが、視線はすでに、次のシーズンで国内外のさらなる栄光を掴むことに向けられている。

クロップの選手たちは、集中と願望に溢れている。異なるキャラクターとバックグラウンド、そしてストーリーを持つ選手たちが、1つのゴールの下に集結している。単に成功を求めているだけではなく、渇望しているのだ。クロップは「我々はその味を知ったのさ」と認める。

クロップは昨シーズンの選手たちを「とんでもないメンタルの巨人」と呼び、信念と集中を保ち続け、何があっても立ち上がることができる能力に大いに驚かされたようだ。「彼らが成し遂げたことは信じられない」とクロップは言う。「ただただ信じられないよ」

■“メンタルの巨人”

Mohamed Salah vs LiverpoolGetty Images

思いがけないことだといえるだろう。実際、このチームがヨーロッパフットボールの頂点にたどり着く日が来るなど誰も信じてはいなかった。

もちろん、リヴァプールはそこに到達するために多額の出費をした。しかし、ワールドクラスの選手を獲得しながらも、同時にチーム作りにも余念がなかったのである。個人としても集団としても見せた成長は、クロップがモチベーター、そして戦術家としていかに優れた能力を持っているかを証明している。もしレッズが本当に「メンタルの巨人」であるならば、それはクロップが作り上げたからだ。トム・ワーナー会長が述べたように、クロップは望みさえすればおそらく心理学者にもなれるだろう。

クロップは、「もし選手が才能を備えていなければ、偉大な選手として成長させることはできない」と話す。「でも、メンタルはどんな人間でも持ち合わせているものだと思うよ。どんな選手にもあるものなのさ」

クロップはとても鮮やかでドラマチックな絵を示してこの点を説明する。

「こういうことさ。たとえば、自分の命を守るために指一本で崖にどれだけぶら下がっていられるか? 他に術はない。多分10秒、もしかしたらもうちょっと長いかもしれないね」

「だが、もしもう片方の手に小さな男の子を抱えているとしよう。彼の命も救わなくてはならない。3日間でもぶら下がっていられるかもね。いずれにしろ、イマジネーションの世界の出来事だけど。自分のためではなく、その男の子のためならできるかもしれないということさ」

「自分が周りの人間にしている様々なことにどれだけの価値があるか、その認識が高まれば高まるほど、自分の限界を超えやすくなるものなんだ。選手たちにはその才能がある」

「今の選手たちは、お互いのために崖に4年間でもぶら下がっていられるだろうね。間違いないよ!」

では、メンタリティに変化をもたらしたのは一体何だったのか? 見捨てられ、見限られ、批判され、さらに追放までされてきた選手たちが、どのようにしてリヴァプールをここ数年のレベルへと到達させる方法を見つけることができたのか?

それは指導のおかげなのだろうか?

クロップは「もちろんメンタリティについて学ぶことはできるね」と話す。「生まれたときは“メンタルの巨人”ではないよ。誰ひとりとしてね。人生が今の自分を作り上げるのさ」

「今回の場合は、フットボールと散々な経験によって大いに助けられているね。試合に負けるのはいいことではないけど、もし活用できれば意味を持つ。活用しなければただの無駄に終わってしまう」

「人生における少しの敗北、外の世界やフットボールでの少しの敗北が、自分を強くしてくれるんだ。メンタリティを創るのさ。そして、異なるパーツを1つひとつまとめられれば、異なるストーリーを持つ多様な人々をまとめることができれば、たったひとつのメンタリティを創ることができる。この場所でその一部になれるのは素晴らしいことだよ」

ここで、クロップはアンフィールドへやってきた2015年10月について話をしてくれた。入団したクラブ、引き継いだチーム、内部の雰囲気をよく覚えている。それは今とは違うリヴァプールだったという。

ジョーダン・ヘンダーソン、デヤン・ロヴレン、ジョー・ゴメス、ロベルト・フィルミーノ、ジェームズ・ミルナーといった選手は初日から顔を揃えていた。それ以外の多くの選手は、その後に加入してパフォーマンスと姿勢でチームのレベルを引き上げてきた。過去18カ月に見られるチームの劇的な加速までのプロセスは、ゆっくりとしたものだった。

クロップは、「私が加入したとき、誰もチームのことを好きではないと言ったことがある。自分のチームすらね!」と言って微笑む。「それが事実だったよ。今とはまったく違う状況さ」

「成長、時間、そして忍耐を選手に与えるんだ」

一瞬の間を置いて、クロップは決定的な警告を付け加える。

「すると、同時にクオリティがもたらされるのさ」

■「人が好きなんだ」

JÜRGEN KLOPP LIVERPOOL CHAMPIONS LEAGUE 07052019

そのクオリティは周知のとおりだ。リヴァプールは近年、ときに批判にさらされ、正当化を必要とするような補強を継続してきた。補強のたびに少しずつチームと編成を組み立てていき、ヨーロッパの羨望を集めるようになっていった。

リヴァプールは必要に応じてビッグマネーを投じてきたが(アリソン・ベッカーとフィルジル・ファン・ダイクは当時の移籍金最高額を記録したし、ナビ・ケイタやファビーニョも安価からは程遠かった)、クロップはこの夏に同様の支出を積極的に行っていないことに満足感を示す。そして、小切手帳の管理以上の問題だと主張する。

「『よし、これはものすごく派手なものになるぞ』と思って補強したのは過去2回だけ。アリ(アリソン)とフィルグ(ファン・ダイク)のときだけだよ」

「それ以外の選手は入団後に成長する必要があった。彼らはまだプロジェクトのほんの一部に過ぎなかったし、プレミアリーグでやっていけるのか、着実にこなしていけるかどうかを見なければいけなかった。たとえばジョルジニオ・ワイナルドゥムとアンドリュー・ロバートソンは、それぞれクラブを放出された後にリヴァプールへやってきた。我々にとっては獲得しやすい選手だったけど、確証はなかったね。こういった選手とはしっかりと仕事を共にする必要があったよ」

その仕事は確証からは程遠いものだった。激しく、何度も繰り返し行われるトレーニングセッションを通じて、選手はテクニックと戦術の準備を進めることができた。それは、クロップがビジネスをする上で最高の信頼を寄せるフィットネスコーチやメディカルスタッフにまで及ぶ話である。

そして、クロップとスタッフが創る環境が、心理的な影響をもたらす。プロフェッショナルとしての生活についてリヴァプールのどの選手に尋ねても、皆が仕事に来ること、そしてメルウッド(トレーニング施設)にいることを愛していると答える。

その環境は監督によってもたらされている。クロップは、ヘンダーソンやミルナーといったベテラン選手たちに、リヴァプールのカルチャーをドレッシングルームへ根付かせることを信頼して任せているようだ。だが、それもすべてはクロップから始まっている。

バックグラウンドや心構え、ユーモアのセンスといった個々の特徴に関わらず、選手をつなぎ合わせることができるのがクロップの能力である。気軽な雰囲気を作り出し、関係を維持できる点が、クロップと他の多くの監督との違いである。ヘンダーソンが言うように、クロップは「選手自体のマネジャー」なのである。

それを指摘すると、クロップは「人が好きなんだ」と話す。「人生は関係によって成り立つ。選手同士ではなく、一般的な人間同士としての話だよ。選手との関係も同じさ。私がクラブにやってきたときに使った『私は選手の友達だが、親友ではない』というフレーズにすべてが集約されているね」

クロップいわく、親友にならないことは「何年にもわたって下していかなければならない厳しい決断のため」の明確な区別であるという。もしリヴァプールの選手がいつも完璧に監督と共に仕事をしているように思うならば、騙されてはならない。クロップはクラブで常に最も人気のある人物ではない。

「常にアップ・ダウンがあるのが普通のことだよ」と話す。「一般的なリスペクトに関する話さ。選手は私をひとりの人間として、監督としてリスペクトしなくてはいけないし、私も選手をリスペクトしなくてはいけない」

「物事をどう捉えるかによるね。私の決断はいつも困難で、同時に簡単でもある。チームはクオリティを備えているわけだから、選手がフィットしているときに私がミスを犯すわけにはいかない。決断はいつも正しく下されているから、皆はそれをリスペクトし、受け入れなくてはならないんだ」

「選手はもちろんもっとプレーしたがるが、スタメンに11人の選手がいて、シーズンを戦い抜くには20人以上の選手がいる必要があることもわかっている。いいコンディションにいれば多くの試合で非常に素晴らしいプレーチャンスを手に入れることになるだろう。でも、たとえもがくような状況にいたとしても、プレーする機会は巡ってくる」

「選手は今のシチュエーションを楽しんでいるよ。左を見ても右を見てもワールドクラスの選手がいるし、所属するには最高の環境じゃないか!」

■「当たり前だろ?」

2019-06-01-klopp

クロップに関していえば、自身の選手が過去数年にわたって辿ってきた冒険をじっくりと検討する能力も持っている。彼はチームの進化を見てきた。選手が苦しみ、それを乗り越えて団結し、成長する姿も見てきた。そこには心から抱く愛情がある。

「どんな関係においても、たとえば友情や仕事の同僚においても、確かなことは『物事がうまくいっていないときにどう作用するか』だよ。そのときこそ我々がより団結するときなのさ」

「私は決勝で敗れたよ。過去3回もね。それでも選手たちはお互いの目を見つめることができた」

「選手はお互いに近くにいることを好んでいるし、私選手の近くにいるのが好きさ」

思考を見失ったクロップは少しの間考え込むと、再び微笑んだ。

そして誰から促されることなく、「そうだね、私は自分のしていることが好きなんだ」と付け加えた。「当たり前だろ?」

取材・文=ニール・ジョーンズ/Neil Jones(『Goal』リヴァプール番記者)

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