11日、マンチェスター・ユナイテッドはオールド・トラッフォードでノリッジ・シティ相手に4-0と快勝を収めた。だが、ファンの抗議を目の当たりにしたエド・ウッドワードCEOは、自身とグレーザー家(オーナー)が敵視されている現状を改めて実感することになった。
分裂したマンチェスター・Uは、ノリッジ、マンチェスター・シティ、ウォルバーハンプトンの3連戦でまったく変わっていない。それが問題だったのだろう。おそらく、ウッドワードが責任者となった最初のシーズンにデイヴィッド・モイーズを解雇して以来、ほとんど何も変わっていないことが原因だ。サポーターは、我慢の限界であることをCEOの眼前で示したのだ。
文=アレックス・ネザートン
■度重なる失敗
Getty/Goalモイーズは2013年、伝説の指揮官サー・アレックス・ファーガソンの後を継いで監督となり、セスク・ファブレガス、ギャレス・ベイル、レイトン・ベインズのうち少なくとも1人、可能ならば全員をチームに加えることを希望した。ところが、加入したのはマルアン・フェライニだった。結果だけを見れば、モイーズは6年契約を10カ月で首になり、マンチェスター・Uはプレミアリーグ7位で終了。早々にチャンピオンズリーグ(CL)出場レースから脱落した。
モイーズがマンチェスター・Uで失敗したことは紛れもない事実だが、移籍市場に関して適切なサポートが受けられなかったことは間違いない。それはファーガソン以降すべての監督に当てはまる。ルイ・ファン・ハールやジョゼ・モウリーニョも初めの内はある程度の予算を与えられていたが、結局2人ともウッドワードのもたつきのせいで不調に終わった。
ファン・ハールはクラブをCLに復帰させ、FAカップのタイトルももたらした。が、ウッドワード自らが提案したレアル・マドリー主将セルヒオ・ラモスの獲得は失敗。その他、彼の希望はことごとく実現していない。
モウリーニョも同じだった。2016-2017シーズを2位で終え、翌シーズンこそタイトルを狙うべくセンターバックの補強を熱望。トッテナムDFトビー・アルデルヴァイレルトら様々な候補を要求した。だが、ここでもウッドワードは失敗。指揮官の願いはまたも叶わなかった。
そして今、またも同じことが起きようとしている。オーレ・グンナー・スールシャールはあらゆるトラブルを背負いつつも、トップ4にしがみついている。チェルシーのフランク・ランパード監督が5位以下との差を広げられないでいるおかげでもあるが、現スカッドでやりくりを強いられる難しいタスクを何とかこなしている。
戦術や渉外の限界はさておき、熱心なファンの大半と中立的な立場の人々は、CL出場にはもう2、3人賢い選手が加わる必要があると実感している。ブルーノ・フェルナンデスの他にあと1人クオリティを持った選手を加えることができれば、今年の夏にはベースが出来あがり、その上にチームを築いていくことができるはずだ。だが、合意間近と見られたB・フェルナンデスの交渉は暗礁に乗り上げ、スポルティング・リスボンの要求する6800万ポンド(約97億円)の支払いを拒絶。移籍は破断する可能性も高まっている。
人材の足りない中盤をやりくりすることは、スールシャールにとって頭の痛い問題だろう。とりあえずシーズン終わりまで監督の座にいることにはなるだろうが、クラブの抱える諸問題をどうすることもできないことは明らかだ。マウリシオ・ポチェッティーノと契約するのではないかという噂は、スールシャールが自身の将来について何の力ももちえていないことを明確にするものである。
■怠惰な運営が生んだ現状
Getty Images移籍に関する責任者はマット・ジャッジであるが、今年は何の成果もあげていない。アーリング・ホーランドという19歳の怪物を取り逃し、マリオ・マンジュキッチの絶対的な「貪欲さ」は見逃され、ジェイドン・サンチョは機能不全のチームへの加入に懐疑的だ。B・フェルナンデスも失敗に終われば、今冬は誰も加入しないかもしれない。
移籍市場での失敗があまりにも多い。ポール・ポグバの復帰やズラタン・イブラヒモヴィッチの加入も今や昔。失敗は枯れ葉のように積みあがっている。
そしてその間、不変なのはウッドワードとグレーザーの2人だけ。CEOとオーナーを火だるまにするチャントをサポーターが歌っているのは礼儀正しいとは言えない行為だが、何年もフラストレーションを与えたゆえに当然の結果ではある。
ピッチ外では、ウッドワードの下で営業収入は天井知らず。企業とのスポンサー契約、チケット販売、放映権の収入は、毎年のように過去最高を記録している。ピッチの中でも、チームが破綻しない程度の才能はつねに揃っている。
だが、イングランド最強の2チームに対抗するには充分ではない。
2008年にUAEの投資グループ買収されたマンチェスター・シティは、瞬く間にマンチェスター・Uの牙城を揺るがす本物の脅威となった。彼らの巨額な資金に対抗できるチームはないと見られていた。そして、それは証明された。
さらにウッドワードの能力に疑問を抱かせるのは、リヴァプールが他の方法があることを示したことにある。確かに、何億ポンドものカネはかかる。それでも、エキスパートを集めて長期的戦略を実行させるべく多額の投資をすれば、世界最高のチームを作れるのだ。リヴァプールはそれを証明した。
これは、ウッドワードのやり方と対極にある方法だ。目先の利益に対して無差別にカネを振りまき、次の瞬間には財政緊縮を是認する。2000年代~2010年代前半を支配し、今でもプレミアリーグ最高収入を記録するマンチェスター・Uだが、怠惰な運営を繰り返すうちに、最大のライバル2つにあっと言う間に追い抜かれた。その背中は見えないほど遠くに行ってしまった。
■限界
mirror多くのファンはもう気づいている。だからこそ、彼らの退任を望むのだ。
報道によれば、「ツーリスト」と呼ばれる一生に一度オールド・トラッフォードで試合を見るために海外からくるファンが減っているという。“シアター・オブ・ドリーム”での一戦はもはや単なる試合ではなく、ブランド化した製品だというのに。
さまざまな問題について無関係な立場から見ている人々は、「疲れ」という言葉を口にすることがある。EU離脱問題疲れ、地球温暖化疲れなど、さまざまな危機に対する一般的な疲れ、そうしたものが存在するならば、マンチェスター・Uのファンが経営陣を冷ややかに見つめ、いまやただ“無能”と考えていることも、新たな「疲れ」として共感できるかもしれない。
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「※」は提携サイト『 Sporting News 』の提供記事です




