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無傷の開幕6連勝、なぜインテルは強くなったのか? 戦術家コンテの下で生まれ変わったネラッズーロを解剖

名将アントニオ・コンテを招へいし、今夏に積極補強を進めたインテルは、開幕前の前評判通りの強さを発揮。チャンピオンズリーグ(CL)のバルセロナ戦こそ敵地で1-2と敗れたものの、セリエAではここまで無傷の開幕6連勝を記録している。そして6日には、セリエAで8連覇中の“絶対王者”ユヴェントスとの対戦を控える。伝統のイタリア・ダービーを前に、新生インテルの戦術的特徴を現地ジャーナリストが解説する。

■伝統の一戦

2019_10_6_ronaldo(C)Getty Images

ユヴェントスとインテルの対戦は、「イタリア・ダービー Derby d’Italia」と呼ばれる伝統の一戦であり、セリエAで最も大きな注目を集めるカードのひとつだ。

その背景にあるのは、セリエAの草創期から続く歴史的なライバル関係。その対立の激しさは時代によって強弱があるが、ここ5~6年はユヴェントスが黄金時代を謳歌する一方で、インテルが度重なるオーナー交代による停滞期を迎えていたこともあり、一時ほどの盛り上がりに欠けるきらいがあった。

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しかし今シーズンは事情が違う。アントニオ・コンテを新監督に迎えたインテルが、予想以上に早い仕上がりを見せて開幕6連勝で単独首位に立ち、過去8シーズンにわたって圧倒的な強さを誇ってきたユヴェントスの牙城を崩そうという勢いを見せているからだ。

もしインテルが、ホームのサン・シーロで行われるこの「イタリア。ダービー」で勝利を挙げれば、ユヴェントスとの勝ち点差を5に拡げて首位の座を固め、独走への足がかりを築くことになる。その意味でもこの試合は、セリエA序盤戦最大のビッグマッチと位置づけることができるだろう。

とりわけインテリスタの期待は大きく高まっており、サン・シーロのチケットはすでにソールドアウト。8万人近い観衆がピッチを熱狂の渦に巻き込むことになるだろう。

■インテルを変えたコンテ

2019_10_6_conte2(C)Getty Images

そのインテル躍進のキーパーソンを1人挙げるとしたら、やはりコンテ監督ということになるだろう。同じように新監督を迎えたユヴェントス、ミラン、ローマが、新たなチームとしてのスタイルとアイデンティティを確立するのに手間取る中で、インテルには開幕から1ヶ月半、公式戦8試合を戦った現時点ですでに、「コンテのチーム」らしさがはっきりと刻印されている。

基本システムは3-5-2。ユヴェントスを率いていた2011-12シーズンに初めて導入され、その後イタリア代表、チェルシーを経る中でバージョンアップを続けてきた可変3バックのメカニズムは、このインテルでさらに洗練度を増している。

その戦術的な鍵を握るのは、両サイドに位置するウイングバック。守備の局面では最終ラインに加わることで、中央の密度を高く保ちながらピッチの幅もカバーできる5バックを形成し、攻撃の局面では早いタイミングで敵陣に進出、相手のサイドバックを「ピン留め」すると同時に、組み立てに幅と奥行きを与える重要な役割を担っている。

右のアントニオ・カンドレーヴァとダニーロ・ダンブロージオはイタリア代表で、左のクワドォー・アサモアはユヴェントスで、それぞれコンテのサッカーを経験済みということもあり、戦術理解度は十分だ。

このウイングバックの位置取りによって、インテルは守備の局面では5-3-2、攻撃の局面では3-3-4となる「可変システム」を操り、緻密に設計された攻守のメカニズムを機能させている。

■パターン化された動きを多用、前線の核はルカク

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さる水曜日に行われたCLバルセロナ戦では、3バックにGKを加えた4人による低い位置でのパス交換でバルセロナ3トップのハイプレスを誘導し、ワンタッチ、ツータッチの正確なパスでその背後にボールを通して、一気にスピードに乗ってバルセロナゴールに迫る場面が再三見られた。

ゴールキックからの組み立てで5人のハイプレスをかわし、左サイドをドリブルで持ち上がったセンシがそのままフィニッシュに持ち込んだ前半40分のビルドアップは、SNSで動画が世界中に拡散されて大きな話題となった。

セリエAでは、バルセロナのように思い切ったハイプレスを仕掛けてくる相手は少ない。しかし自陣に守備ブロックを築いた相手に対しては、少ないタッチ数でスペースにパスをつないでチーム全体を押し上げ、ウイングバックがピッチの幅を、2トップの連携した動きで裏のスペースを積極的に使うことで、相手の守備陣形を動かしてフィニッシュへの道筋を作り出す。

ビルドアップ時にインサイドハーフが外に開いてパスコースを作り出す動き、サイドから前線に入ってくる斜めのパスに対し、ボールに近い方のFWがスルーして裏へスタートを切り、遠い方のFWがワンタッチでそこにパスを送り込む動きなど、予めパターン化された動きを多用するのも、コンテのチームの特徴だ。

左右のインサイドハーフはいずれも今夏獲得された新戦力のステーファノ・センシとニコロ・バレッラ。イタリア代表でも存在感を発揮し始めている2人の若手MFは、ピッチの広いエリアをカバーするダイナミズムと10-15mのダイレクトパスを正確に操るテクニックで、ビルドアップの中継役として、さらにはフィニッシュの局面に意外性をもたらすプラスアルファとして、きわめて重要な役割を担っている。

攻撃の最終局面を担う前線の中核となっているのは、コンテが獲得を熱望したロメル・ルカク。DFを背負ってのポストプレーからタイミングのいい裏への飛び出し、サイドからのクロスに合わせるヘディング、さらには爆発的なロングスプリント力を活かしてのカウンターまで、幅広いフィニッシュのパターンに対応し、圧倒的な存在感を示す。

筋肉系の軽いトラブル〔大腿四頭筋の筋疲労)で、ミッドウィークのCLバルセロナ戦を欠場したが、これはこのユヴェントス戦に向けて大事を取ったため。パートナー候補のアレクシス・サンチェスが前節のレッドカードで出場停止ということもあり、ラウタロ・マルティネスと2トップを組んでピッチに立つはずだ。

■インテルのユヴェントス戦予想布陣

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2トップの一角にルカクが入る以外は、基本的にバルセロナ戦と同じ顔ぶれ。右のウイングバックにダニーロ・ダンブロージオとアントニオ・カンドレーヴァのどちらを起用するかが、コンテ監督唯一の「迷い」だろうというのが試合前日時点での観測だ。

インテルのコンテとユヴェントスのサッリ、どちらの監督も自分たちが主導権を握って戦おうとするタイプであり、引き分けを狙うよりもリスクを冒してでも勝ちに行こうとする傾向が強いだけに、どちらに転ぶにしてもオープンでスペクタクルな戦いが十分期待できる。

コンテ監督は前日会見でバルセロナ戦を振り返り、「前半は守る時にも前に出ていたが、後半は下がってしまった。可能ならばすぐに前に出てラインを押し上げてボールにプレッシャーをかけていく。それを90分間続けること、とりわけ困難に陥った時にそう振る舞う勇気を持たなければならない」と語っている。

このユヴェントス戦でも、前線からアグレッシブなハイプレスを仕掛け、自由なビルドアップを許さずに自分たちのペースで試合を進めようとするはず。その組織的なハイプレスでレオナルド・ボヌッチ、マタイス・デ・リフト、ミラレム・ピャニッチという組み立ての起点をどれだけ困難に陥れることができるか、そして逆に自陣からのビルドアップで相手のプレスをかわして一気に敵陣にボールを持ち出す場面をどれだけ作り出せるかが、試合の流れを決める攻防の鍵になりそうだ。

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「※」は提携サイト『 Sporting News』の提供記事です

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