伝統あるオレンジの背番号10を受け継ぐ男――。清水エスパルスMF白崎凌兵が10月14日に控えるジュビロ磐田との静岡ダービー、そしてJ1残留へ懸ける思いを語った。
J2降格圏までわずか勝ち点2差。J1復帰1年目の清水エスパルスが苦しんでいる。厳しい状況が続く中、次節に迎えるのはジュビロ磐田との静岡ダービー。絶対的に勝利が求められるプレッシャーの大きな試合にプライドを懸けて臨むことになる。すでにチケットは完売しており、スタジアムが盛り上がることは必至。最高の雰囲気の中、サポーターとともに追い求めるのは、勝利という結果のみ。明治安田生命J1リーグは残り6試合。是が非でも静岡ダービーで白星を手にして、その先のJ1残留へとつなげたいところだ。
――現在、リーグ戦では3戦勝ちなしの13位です。前節はJ1残留を争う大宮アルディージャとの直接対決で守備を固め、0―0で引き分けました。まずは今のチーム状況をどう捉えていますか。
白崎 勝てていないので、良くはないですね。特に大宮戦では攻撃が形になりませんでした。攻撃に転じた際のプレーの質が低くて、すぐに相手にボールを奪われてしまい、守備をする時間が長くなってしまいました。チームとして我慢強く守備をすることは大事ですけど、ボールを保持できないので厳しい戦いになっています。これからは、もう少しボールを保持する戦い方ができればと思っています。
――J1復帰1年目。厳しい試合が続いていますが、ここまでの手応えと課題は?
白崎 チーム全体の調子が良い時は、いい試合ができています。勢いがあってポンと勝つ試合もありますが、その勢いが持続できていない。厳しい試合になった時に力が発揮できていないのが現状です。強いチームは、調子が良くない試合でも崩れないので、そこに課題があると感じます。
――個人としては今シーズンからクラブの顔となる背番号10を背負い、開幕から先発出場が続きました。しかし、6月に右脛腓靭帯結合部損傷のケガ。全治約3カ月の見込みでしたが、8月にスピード復帰を果たしました。
白崎 大宮戦では思うように攻撃に絡めませんでしたが、ミスなく安定したプレーという意味では、継続してできている手応えはあります。ただ、復帰して以降の5試合はまだ無得点ですし、ゴールやアシストといった決定的な仕事がまだまだ足りないですね。
――次節、リーグ戦では今シーズン2度目、YBCルヴァンカップを含めると3度目の静岡ダービーです。4月1日にエコパスタジアムで行われた前回対戦では1-3で敗れています。
白崎 早い時間帯に先制されて苦しい展開になりましたが、それほど圧力は感じませんでした。チャンスは清水にも多くあったので、そこで決め切れていれば違った展開になっていたはず。自分に決定機が2本あったので、そこで決めていればという悔しさが大きいです。
――前回対戦時と現在を比べて、磐田の印象は変わりましたか。
白崎 今の磐田は当時よりも確実に強いです。中村俊輔選手が起点になっていて、川又堅碁選手の得点力もあります。中盤の川辺駿選手とムサエフ選手が前線に飛び出すことも多く、攻撃に厚みが生まれています。途中出場の松浦拓弥選手も能力が高くて、守備もまとまっています。チームとして継続してやってきていることが形になってきているんだと思います。セットプレーやクロス、2列目からの飛び出しと複数の得点パターンがあるので、しっかり警戒しなければなりません。
――やはり注意すべき選手は、背番号10の中村俊輔選手でしょうか。
白崎 試合の流れを読める選手で、とても大きい存在です。カウンター攻撃をさせないようにしたり、あえて遅攻にしたり、時間を作るところもうまいと思います。試合中、いつも捕まえづらい位置、嫌らしいポジションにいますからね。セットプレーのキッカーとしては威圧感がありますし、やっぱりFKもCKも怖い。前回は好き放題やられてしまったので、今回はしっかりと抑えたいです。

――白崎選手にとって実は前回が初めての静岡ダービー出場でした。実際に経験してみて、ダービーへの思いは強くなりましたか?
白崎 サポーターが作り出してくれた雰囲気がとても良くて、モチベーションが自然と上がりました。静岡に限らず、ダービーは絶対に負けてはいけない試合だと思っています。これは育成年代の頃から言われていて、FC東京U-15に在籍していた時、「ヴェルディには絶対に負けてはいけない」と言われていました。今回はIAIスタジアム日本平で戦えますし、エコパスタジアムよりも観客席が近いので、そこも楽しみです。
――前回は、前半に2失点する苦しい流れでした。3点を追う後半ロスタイムに1点を返して一矢報いましたが、今回の展開をどう予想しますか?
白崎 どうなるかは分かりませんが、僕たちとしては積極的に試合に入りたいと思っています。チームがこういう状況だからこそ、構えずにチャレンジしたい。そのほうが体が動くと思いますし、「次に負けたら……」と考えて堅くなるよりも、失敗してもいいからどんどん前から行きたい。それは相手も嫌がると思いますから。ただ、もちろんリスク管理は重要ですよね。先制点を取られるとしんどくなるので、無失点で試合を進めたいです。
――特に注意する選手はいますか?
白崎 やはり、中村俊輔選手です。中村選手がボールを持つと周りの選手が一斉に前に動き出すので、そこでプレッシャーを掛けてつぶすことができれば、逆にショートカウンターが効くかなと思っています。
――清水側のキーマンは誰になりますか?
白崎 これはもう、選手みんながキーマンだと思います。ベンチの選手も、ベンチ外の選手も、全員が集中して最大限のパワーを出さなければならない総力戦です。
――浮上のきっかけをつかむ試合にするためのポイントは何でしょうか。
白崎 “積極性”ですね。攻撃だけではなく、守備でも積極的にボールに対してプレスを仕掛けに行くことが必要だと思います。離脱していた河井(陽介)くんや犬飼(智也)くんも帰ってきました。ケガをして長い期間苦しい思いをしていて、このタイミングで復帰したのはチームにとってポジティブなことですし、みんなも練習から士気が上がっています。
――リーグは残り6試合です。チームとして、個人として、今後への思いを教えてください。
白崎 自分たちは追い込まれているので、もうやるしかありません。磐田も勝ちにくるはずなので、スキは生まれると思います。立場は違いますが、お互いに勝たなければいけない試合です。しっかり体を張らなければいけないし、チャンスになった時にうまくボールを受けたい。個人としては、やっぱりゴールを取りたいですね。点を取ること、そしてアシストの精度を上げたいです。
――昨年9月、J1昇格を争う上位対決で松本山雅FCに敗れましたが、次のセレッソ大阪戦は試合終了間際に白崎選手の逆転弾で勝利しました。そこから怒涛の9連勝でJ1復帰。その経験は生きていますか。
白崎 昨シーズンは「負けたらJ1復帰が厳しくなる」と言われていた松本戦に負けましたが、次のC大阪戦で劇的な勝利を挙げて勢いに乗ることができました。今年も残り6試合に向けて、静岡ダービーがすごく大事な試合になります。磐田に勝って勢いに乗って、その後の5試合を戦いたい。ここで勝てれば、確実に前へ進んでいけるので。
――最後に、ともに戦っているサポーターの皆さんへメッセージをお願いします。
白崎 ダービーのチケット完売はとてもありがたいです。自分たちは結果で応えるだけだと思っています。内容ではなく、結果です。すごく良いプレーをしても、負けたら意味がない。ダービーではサポーターの皆さんが本当に素晴らしい雰囲気を作ってくれますし、自分たちの力を超えたものが出せます。大切な試合をホームでできるのは間違いなくプラスなので、多くのサポーターが来てくれる中で勝ち点3を狙います。
●インタビュー・文=Goal編集部
