間近に迫ったワールドカップに向けて近代的なスタジアムの建設や改装が行われているロシアでは、フットボールインフラが大規模な変容を遂げた。
CSKAモスクワのVEBアリーナ(2016年)やディナモ・モスクワのVTBアリーナ(2018年)のようにロシアのビッグクラブは近年新たな本拠を擁しているが、それ以外にも多くの新スタジアムが建設された。
決勝戦に向けて改修が行われたモスクワのルジニキ・スタジアムを筆頭に、12のスタジアムを紹介する。
ルジニキ・スタジアム
Getty Images都市:モスクワ
収容人数: 81,000人
状態: 完成
ワールドカップで使用されるスタジアムの中でロシア最大であり、決勝の舞台となる。2008年のチャンピオンズリーグの決勝戦が行われた会場であるため、マンチェスター・ユナイテッドとチェルシーのファンにとっては耳馴染みのある名前だろう。
ルジニキ・スタジアムの内部は2013年に取り壊された後、改修されたが、1996年に設置されたルーフ、そして象徴的な正面のファサードは維持されたまま新構造に組み込まれた。
収容人数は81,000人にまで増加。陸上トラックが取り除かれたため雰囲気は増すはずだ。
グループステージ:ロシア対サウジアラビア、ドイツ対メキシコ、ポルトガル対モロッコ、デンマーク対フランス
ノックアウトステージ:ラウンド16、準決勝、決勝
スパルタク・スタジアム

都市:モスクワ
収容人数:45,360人
状態:完成
オクトリティ・アリーナとして知られる同会場は、スパルタク・モスクワの本拠として2014年にオープンした。すでに完成済であるのは、2017年コンフェデレーションズカップで使用された4会場のひとつだったためだ。
ロシアフットボール界で最も成功を収めたチームであるにも関わらず、スパルタクはこのスタジアムが完成するまで自身のスタジアムを所有したことがなく、それまではモスクワにある様々なフィールドでプレーしていた。1992年から2001年にかけて10のうち9つのタイトルを勝ち取ったものの、その後優勝から遠ざかっていたが、このスタジアムの完成のおかげか、2016-17シーズンに15年ぶりにリーグタイトルを勝ち取った。
同会場の特徴といえば、クラブ創設者であるスタロスティン兄弟の実物大の銅像がひとつのゴール裏に設置されていることである。
グループステージ:アルゼンチン対アイスランド、ポーランド対セネガル、ベルギー対チュニジア、セルビア対ブラジル
ノックアウトステージ:ラウンド16
カザン・アリーナ
Getty Images都市:カザン
収容人数:45,379人
状態:完成
ルビン・カザンは老朽化した多目的競技場、セントラル・スタジアムから2013年にカザン・アリーナに移転した。スタジアムの外壁には一面を覆うヨーロッパ最大のスクリーンが設置されているのは特筆すべき点である。
こちらもコンフェデレーションズカップの会場のひとつに選ばれていたためかなり前に完成済みであり、同大会の準決勝の舞台となった。
グループステージ:フランス対オーストラリア、イラン対スペイン、ポーランド対コロンビア、韓国対ドイツ
ノックアウトステージ:ラウンド16、準々決勝
サマーラ・アリーナ
Getty Images都市:サマーラ
収容人数:45,568人
状態:2018年竣工
サマーラ・アリーナはワールドカップ以外ではコスモス・アリーナとしてよく知られている。2018年に完成し、現在はメタルルグ・スタディオンを本拠としているクリリヤ・ソヴェトフが新本拠として使用する予定だ。
ソヴィエト連邦の宇宙探索プログラムと、その後の卓越した航空宇宙ビジネスとリサーチの分野で果たしてきたサマーラの役割に敬意を表し、最新式のガラス製ドームが設置されている。
グループステージ:コスタリカ対セルビア、デンマーク対オーストラリア、ウルグアイ対ロシア、セネガル対コロンビア
ノックアウトステージ:ラウンド16、準々決勝
モルドヴィア・アリーナ

都市:サランスク
収容人数:44,442人
状態:2017年竣工
モルドヴィアはモスクワの南東500kmに位置する人口約80万人の共和国で、ロシア連邦のひとつを構成する。この新スタジアムは、2005年に2つの地元チームが合併して生まれたFCモルドヴィア・サランスクの本拠となる予定だ。
収容人数はワールドカップでは45,000人だが、大会後はテナントのニーズに合わせて28,000人にまで減少されることになっている。とはいえ、3部に所属するチームとしては異例の規模である。2010年に建設を開始されたスタジアムは、4月21日のテストマッチがこけら落としとなった。
グループステージ:ペルー対デンマーク、コロンビア対日本、イラン対ポルトガル、パナマ対チュニジア
ノックアウトステージ:なし
ロストフ・アリーナ

都市:ロストフ
収容人数:45,000人
状態:2018年竣工
ロストフ・アリーナはドン川沿いの新開発の目玉の一部である。大会後にはFCロストフの本拠となる予定だ。上の画像は2017年9月の完成に向けて座席が設置されている様子だ。
モスクワの南1,000kmに位置するロストフはリーグタイトルを勝ち取った経験はない。しかし2015-16シーズンは優勝したCSKAモスクワまでわずか2ポイント差でシーズンを終えた。
スタジアムおよび隣接する公園は2018年5月にオープンの予定で、約7kmのサイクリングロード、遊歩道、緑地エリアが設置される。
グループステージ:ブラジル対スイス、ウルグアイ対サウジアラビア、韓国対メキシコ、アイスランド対クロアチア
ノックアウトステージ:ラウンド16
フィシュト・スタジアム
Getty Images都市:ソチ
収容人数:47,659人
状態:完成
フィシュト・オリンピックスタジアムは、ロシアワールドカップの中でも最も関心を集めるプロジェクトのひとつだ。元々は2014年のオリンピック、パラリンピックのために建設された同スタジアムは、周囲を囲われた屋内アリーナだった。
その後、他の大会でも使用できるようにするためにFIFAのレギュレーションに則ってオープンエアー型のフットボールスタジアムへと改修され、実際にコンフェデレーションズカップの会場として使用された。ロシア政府の所有物であり、クラブチームの本拠とはなっていない。
グループステージ:ポルトガル対スペイン、ベルギー対パナマ、ドイツ対スウェーデン、オーストラリア対ペルー
ノックアウトステージ:ラウンド16、準々決勝
エカテリンブルク・アリーナ
Getty Images都市:エカテリンブルク
収容人数:35,696人
状態:完成
ワールドカップに向けてロシアが建設した中で最も異様なスタジアムであることに疑いの余地はない。
エカテリンブルクではセントラル・スタジアムとして知られ、以前は多目的競技場だった。近年モデルの見直しが行われたが、ワールドカップに向けては全面的な改造が必要となった。FCウラル・エカテリンブルクの本拠であり、大会中は収容人数が25,000人から35,000人に増員される。ゴール裏スタンドのひとつの最上部が高すぎるために巨大なルーフ越しに位置していることで話題を呼んだ。
グループステージ:エジプト対ウルグアイ、フランス対ペルー、日本対セネガル、メキシコ対スウェーデン
ノックアウトステージ:なし
ヴォルゴグラード・アリーナ
FIFA都市:ヴォルゴグラード
収容人数:45,568人
状態:完成
ワールドカップに特化して設計された新スタジアムであり、FCロートル・ヴォルゴグラードの本拠である。老朽化したロートルのセントラル・スタジアムが2014年に取り壊され、その跡地に建設される。
驚くべきことに、真新しく、比較的規模が大きく、見る人の目を奪う格子づくりの建築物であるにも関わらず、残念なことにノックアウトステージの試合では一度も使用されない。モスクワの南約1,000kmに位置する同スタジアムには活用の術があると思われる。
グループステージ:チュニジア対イングランド、ナイジェリア対アイスランド、サウジアラビア対エジプト、日本対ポーランド
ノックアウトステージ:なし
ニジニ・ノヴゴロド・スタジアム

都市:ニジニ・ノヴゴロド
収容人数:44,899人
状態:完成
川沿いに位置するニジニ・ノヴゴロド・スタジアムは、ヴォルガ川とオカ川の合流地点に位置する。隣接するアレクサンドル・ネフスキー大聖堂と水面越しに望むニジェゴロツキー・クレムリは、素晴らしい背景を生み出している。
大会後は、解散したFCヴォルガ・ニジニ・ノヴゴロドの後を継いで街のトップクラブとなり、2016-17シーズンにロシア2部に昇格したFKオリンピエツ・ニジニ・ノヴゴロドのスタジアムとなる。
芝生がスコットランドの試験期間を経て2017年8月に設置されたほか、街が建設した新たなトレーニング施設と練習用のフィールドは、ワールドカップ後は子どもや地元のスポーツチームが利用することになる。
グループステージ:スウェーデン対韓国、アルゼンチン対クロアチア、イングランド対パナマ、スイス対コスタリカ
ノックアウトステージ:ラウンド16、準々決勝
カリーニングラード・スタジアム

都市:カリーニングラード
収容人数:35,212人
状態:2018年竣工
カリーニングラードはポーランドとリトアニアの間、ストックホルムとワルシャワの東部に位置する飛び領土であり、今大会のホストシティの中で唯一ロシア本土にはない場所である。
収容人数は25,000人からワールドカップ用に35,000人に増員され、2部に所属し現在はアリーナ・バルチカを本拠としているFCバルチカ・カリーニングラードが本拠として使用することになる。
スタジアムのこけら落としとしてバルチカとドイツのシャルケとの親善試合が3月に予定されていたが、悪天候を表向きの理由に中止となった。
グループステージ:クロアチア対ナイジェリア、セルビア対スイス、スペイン対モロッコ、イングランド対ベルギー
ノックアウトステージ:なし
サンクトペテルブルク・スタジアム
Getty Images都市:サンクトペテルブルク
収容人数:68,134人
状態:完成
もしロシアのスタジアム建設が2014年のブラジル大会よりも順調に進んでいるように見えるのなら、ゼニトの新スタジアム、クレストフスキー・スタジアムのことを忘れてはならない。FIFA大会の期間中はサンクトペテルブルク・スタジアムと呼称される。
ご覧の通り、見た目は素晴らしい。大幅な予算オーバーで竣工が9年も遅れたことを考えればそれも当たり前である。ゼニトは数え切れないほどの延期を経て4月から本拠として使用している。コンフェデレーションズカップでは決勝の舞台となった。
グループステージ:モロッコ対イラン、ロシア対エジプト、ブラジル対コスタリカ、ナイジェリア対アルゼンチン
ノックアウトステージ:ラウンド16、準決勝、3位決定戦
