2017-12-23-cerezo-Kakitani_Yoichiro(C) Getty Images

水沼、柿谷、ソウザ弾で2冠に王手…杉本ら不在の中で総合力を示したセレッソ大阪

2017年J1で3位に入り、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)出場権を確保しているセレッソ大阪。しかし、天皇杯で優勝するか否かで、本戦出場かプレーオフ参戦のいずれかが決まる。仮にプレーオフ参戦となると大一番が1月30日に行われるため、オフも準備期間もほとんど取れなくなる。本戦からであれば2月13・14日の初戦に向けてじっくり調整期間を取れるだけに、セレッソにしてみれば、何としても天皇杯タイトルを手にしたい状況だった。

とはいえ、右ふくらはぎ負傷の山口蛍、左足首手術に踏み切った杉本健勇の2人が23日の準決勝・ヴィッセル神戸戦を欠場。キャプテン・柿谷曜一朗も左足甲を痛めてベンチスタートを余儀なくされた。2017年東アジアカップ(E−1選手権)に向けた日本代表合宿中に脳震盪を起こし、離脱を余儀なくされた清武弘嗣は戦線復帰したものの、戦力的にはやや不安も付きまとう。尹晶煥監督は山村和也を1トップ、その背後に福満隆貴を配置。ボランチに秋山大地を据え、その秋山にキャプテンマークを託す形で神戸に挑んだ。

今季3戦未勝利のセレッソ相手、しかもエースFWのルーカス・ポドルスキ不在ということで、神戸の吉田孝行監督は4−3−2−1の守備的布陣を採用。手堅い守りからのカウンターで一矢報いようとした。セレッソの方は前半から主導権を握り、両サイドも積極果敢な攻め上がりを見せるが、相手ゴール前をこじ開けられない。後半突入後も清武やソウザが得点機を迎えるが均衡を破れない。そこで尹監督は後半32分に福満に代えて柿谷を投入。エースに勝負を託した。

だが、終盤に相手も捨て身の猛攻を仕掛けてきて、残り1分というところで小川慶次朗が一瞬のスキをついてゴールを奪う。セレッソはまさに崖っぷちに追い込まれたが、右サイドのダイナモ・水沼宏太がチームを絶体絶命の危機から救う。ソウザ→山村とボールがつながり、相手守護神のキム・スンギュが跳ね返したところに飛び込み、ジャンピングボレーをお見舞いしたのが背番号16。「ジャンプしてるように見せかけただけ」と彼は苦笑いしていたが、値千金の同点弾で試合は延長へともつれこんだ。

延長に入ってからは完全にセレッソが押し込み、延長前半6分に相手のハンドでPKを得る。もちろんキッカーは背番号8。彼のキックはややコースが甘く、GKに弾かれたが、鋭い反応でダイビングヘッド。決めるべき男・柿谷がついに勝ち越し点を奪った。そして終了間際には目の覚めるようなカウンターが決まり、柿谷のラストパスをソウザが押し込んで3点目。終わってみれば3−1で圧勝したセレッソが今季2冠に王手をかけることに成功した。

今季の彼らはすでに手にしているJリーグ・ルヴァンカップとこの天皇杯を控え組中心の陣容で戦ってきた。J1出場機会の少なかった福満や秋山がこの日も奮闘し、カップ戦での活躍もあってシーズン終盤には山下達也からセンターバックのポジションを勝ち得た木本恭生らの台頭も大きかった。そうやって尹監督が取り組んできた選手層拡大がこの重要な一戦で生かされた。福満は山村とともに再三ゴール前に迫る動きを見せていたし、秋山も体を張ってタフな守備を見せていた。木本は小川の失点シーンに絡んだものの、それ以外はマテイ・ヨニッチと息の合った連携を見せていた。これは特筆すべき点だ。

主力組でも柿谷や杉本に比べて陰が薄くなりがちな水沼、山村も貢献度が高かった。とりわけ、水沼の120分間通しての無尽蔵の走りがチームを力強く支えていたのは間違いない。サガン鳥栖時代から尹監督の秘蔵っ子である水沼は誰よりも献身的に走り回れる選手。移籍してきた当初も「セレッソはうまい選手が沢山いるけど、ゼロか100かじゃないけど、ACLまで行ったり降格したりと浮き沈みのあるチーム。そこに勝負強さを加えるようにしたい」と彼は語気を強めたが、尹監督イズムを身を持って体現した水沼の存在があったからこそ、今季のセレッソはここまで躍進できたのではないだろうか。

ルヴァンカップ優勝の時もそうだったが、川崎フロンターレとのファイナルではピッチに立った主力組が「ルヴァン組」と言われたメンバーの貢献に感謝し、彼らのために戦った。そういう一体感と団結力は今回も色濃く感じられる。PKをミスした柿谷が頭から突っ込んで2点目を奪ったシーンはその象徴とも言えるだろう。スタンドで仲間の奮闘を見守った山口蛍も闘争心を燃やしているに違いない。杉本だけは2018年元日に埼玉スタジアムで行われる横浜F・マリノスとの決勝に間に合わないが、今の総合力があれば、堅守の横浜相手でも何とか攻略できるのではないだろうか。

準決勝ではやや影を潜めた清武弘嗣も次こそは圧倒的なパフォーマンスを示してほしいところ。E−1選手権を棒に振った今、彼が半年後の2018年ロシアワールドカップの舞台に立とうと思うなら、セレッソで異彩を放つことしかない。記念すべきワールドカップイヤーの幕開けとなる天皇杯決勝はそのための最高の舞台。彼とのコンビを常日頃から熱望する山口もより一層、輝きを放つだろう。そこに柿谷や水沼、山村らがうまく絡み合い、多彩な攻撃を仕掛け、一方で守備陣が確実にゴールを守り抜く。そんな理想的なゲームをぜひとも彼らには見せてほしいものだ。

文=元川悦子

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