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武藤嘉紀、内田篤人、宇佐美貴史…それぞれの一年を振り返る【海外日本人総括】

■武藤嘉紀の2016−17シーズン

今季の目標:レギュラー定着と1年目に記録した7ゴール超え
結果:最終盤に巻き返すも、長期の負傷離脱で5得点止まりに

採点:55点

ジョーカーとして起用された開幕戦、第3節にゴールを奪う好スタートを切ったマインツの武藤嘉紀。しかし、昨季の後半戦を棒に振った右膝のケガが再発。第5節からウインターブレイクまで欠場を余儀なくされた。復帰戦となった第17節のケルン戦で今季初のスタメン出場を果たしたが、得点機を逃すなど精彩を欠いたのは残念だった。

待望の瞬間は第27節のRBライプツィヒ戦で訪れる。67分からピッチに立つと、アディショナルタイムに約7ヵ月ぶりとなるゴールを挙げた。その後は今季最長となる5試合連続の先発出場を果たし、調子が上向いた状態でシーズンの幕を閉じている。

武藤のターニングポイントは第17節のケルン戦からの3試合。ドルトムント、ホッフェンハイムと続いた強敵相手の3連戦で一つでもゴールを奪っていれば、冬に加入したボージャン・クルキッチにあっさりと定位置を奪われることはなかったはずだ。約7か月ぶりのゴールで再浮上のきっかけを掴んだRBライプツィヒ戦も一つの転換点だった。

シーズン終盤の活躍で来季への期待を膨らませた武藤は、コンディション次第で結果を残せる自信をつかんだようだ。あとはボールを押し込むだけというワンタッチゴールが多かったとはいえ、限られた出番の中でチーム2位タイの5ゴール(トップは今年1月に退団したユヌス・マリの6ゴール)を挙げた事実は称賛に値する。マルティン・シュミット監督の解任が決まり、来季は新監督の下でリスタートを切ることになった。

■内田篤人の2016−17シーズン

今季の目標:右膝の怪我からの復帰とレギュラー返り咲き
結果:約1年9ヵ月ぶりの公式戦出場が唯一の明るい話題に

採点:20点

武藤と同じく、ケガに泣かされたのはシャルケの内田篤人も同様だった。約1年9ヵ月ピッチを離れることになった右膝の重傷を乗り越え、ヨーロッパリーグ第6節のレッドブル・ザルツブルク戦で公式戦出場を果たす。自身もファンも待ち望んだ瞬間を迎えたが、ウインターブレイク中に内転筋を痛めるなど、コンディションが整うまでに時間を要した。

シャルケのチーム状態は決して芳しくなかったが、同ポジションのアレッサンドロ・シェプフやコケ、ティロ・ケーラーの充実もあり、最後までマルクス・ヴァインツィアル監督の信頼を勝ち取れなかった。結局、2シーズン連続で国内リーグ出場がゼロに終わっている。

トレーニングでのアピールが実らず、復帰後のリーグ戦でのメンバー入りが第33節ダルムシュタット戦のみだった内田は、ヴァインツィアル監督の構想に入らなかった。ザルツブルク戦がハイライトになったのは確かだが、大きな転機は一度も訪れなかった。

内田の収穫は右膝の回復を置いてほかにない。往年の輝きを取り戻せるかは未知数ながら、ピッチに戻る時期の目途さえ立たなかった1~2年前と比べれば、現在の状況ははるかにポジティブ。指揮官からの信頼を掴み、試合勘を取り戻すことが課題に挙がる。

■宇佐美貴史の2016−17シーズン

今季の目標:レギュラーに定着し、コンスタントに結果を残す
結果:チーム戦術にフィットせず、ゴールもアシストもなし

採点:30点

宇佐美貴史はチーム戦術に合わなかったのが停滞の要因となった。加入直後はディルク・シュスター監督(当時)からフィジカル不足を指摘され、ほとんど出番に恵まれなかった。初先発のチャンスが訪れたのはマヌエル・バウム新監督の初陣となった第15節。ただ、まるでインパクトを残せず、再びバックアッパーに降格した。

細かい連携による崩しが得意ではないアウクスブルクの中で、良い形でボールを受けられず、持ち味のドリブル突破といった攻撃力は影を潜めた。献身的に守備のタスクをこなしていたとはいえ、失点に繋がるボールロストを犯した場面も。4シーズンぶりに参戦したブンデスリーガで、ゴールとアシストを一つも記録できなかった。

最後まで残留を争ったアウグスブルクで居場所をつかめなかった宇佐美にとっては、不本意なシーズンになった。守備で体力を消耗しても、攻撃時に爆発できるようなフィジカル的な強さを身に付けなければ、このクラブでの明るい展望を描くのは難しいか。

■各選手移籍の可能性は?

武藤 30%

新監督の構想から外れないかぎり、マインツとの契約を2019年6月まで残す武藤の退団は考えにくい。ステップアップするには実績不足だろう。まずは監督人事に注目が集まる。有力視されるのはマインツのセカンドチームを率いる指揮官シュバルツの昇格だ。

内田 50%

シャルケと結ぶ契約は来シーズンまで。クラブが発表した今季の退団者には含まれなかった。しかし、現在の序列はコケやケーラーに次ぐ右サイドバックの3番手で、3バック採用時はウイングバックとして頭角を現したシェプフも壁として立ちはだかる。出番を求める本人が移籍を望んでもおかしくない。

宇佐美 50%

バウム監督の去就が定かではなく、アウグスブルクのスタイル自体が変わる可能性はある。指揮官の交代がなければ、残留が懸かった大一番の最終節にメンバーから外れた宇佐美にとっては厳しい状況だ。昨夏に4年契約を結んだばかりだが、チームを離れる可能性は否定できない。

文=遠藤孝輔

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