武藤嘉紀が秘める「最高の一年」への決意/独占インタビュー

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(C)新井賢一
FC東京からマインツへ移籍して3シーズン目。好スタートを切った序盤戦から故障に苦しんだ時期を経て、武藤嘉紀は今何を思うのか?飛躍の後半戦へ、その先に待ち受けるワールドカップへ。その胸中に迫る。

「本当に悔しい」

前半戦を戦い終えた武藤嘉紀の口から漏れた、率直な気持ちだ。

スタートは順調だった。今季初の公式戦となったDFBポカール1回戦、LSKハンザ戦で2ゴール1アシストを記録。ブンデスリーガでは開幕7試合で3ゴールを決め、一時はエースの地位を築いた。

しかし、以降はゴールから遠ざかる日々が続いた。11月の後半からは背中のケガもあって欠場が続き、不本意な形でウインターブレイクを迎えた。飛躍を期待して臨んだ一年。半分が過ぎてリーグ戦で3得点という結果は、決して満足できる数字ではない。

だからこそ、後半戦へ懸ける思いは誰よりも強い。

「シーズン後半戦、大爆発しないと」

「人生はきっとプラスマイナスでイコールになる」

マイナスの多かった苦しい前半戦を乗り越え、プラスの後半戦を迎えるために、武藤は何を考え、どんな思いで新たな戦いに挑んでいくのか。

2017年末、『Goal』は独占インタビューの機会を得た。武藤が考える今季前半戦と後半戦への抱負、そして半年後に迫るロシア・ワールドカップへ向けた日本代表への思いを聞いた。

インタビュアー=ミムラユウスケ(フリーライター)  写真=新井賢一、Getty Images 協力=アディダス ジャパン

構成=河又シュート(Goal編集部)

■不満が残った前半戦…シーズン後半の大爆発へ向け

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――ドイツに渡って3シーズン目となりました。活躍の舞台を移したことで、ゴールへのこだわりは増しましたか?

増していますね。チームが勝っても、自分が点を取らなかったら寝つきが悪いです(笑)。眠れないとまではいかないですけど、その1週間ずっとモヤモヤしますから。

――それがゴールへの執着心を高めてくれると?

フォワードである以上は、こぼれ球に詰めて決めるゴールも大切で。昨年はそういう形が少なかったです。そういう場面で得点を重ねていかないといけないし、最後にパスがズレたり、最後のパスが来なかったりすることが多いので。フォワードである以上、パスを引き出していかないといけない。チームメイトとコミュニケーションを取って改善していかないといけないと思います。

――所属するマインツでは、歴代ストライカーの中でも得点率が高いと言われていますよね?

いや、いや、ゴールの率なんて。岡崎選手(元マインツ・現在レスターの岡崎慎司)があれだけ取っているので、やっぱりプレッシャーはあります(編集部注:岡崎はマインツで公式戦70試合で29ゴール)。だからこそ、今シーズンは本当に準備ができていたし、良い入りができていたので、リーグ前半戦で3ゴールに終わってしまったのは本当に悔しいです。

だからこそ、シーズン後半戦に大爆発しないと。1試合に2点、3点と取れるようにしていかないといけない。一点で納得せずに、2点目を取りに行く。どんなゴールでもいい、その貪欲さで。そのために、まずはコンディションを上げていきたいと思います。

■ロシアW杯の「メンバーに入ること」が目標ではない

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——今年は4年に一度のワールドカップが開催される年です。そのことも頭に入れながらシーズンを送っていますか?

もちろん! 代表に選ばれるためには、ゴールが一番簡単な解決策というか、評価材料だと思います。誰よりも点を取っていたら、呼ばざるを得ないと思う。フォワードの場合、それが大事ですよね。ゴールを取るのは一番難しいかもしれないですけど、自分の力を示す方法は最もシンプル。

だからこそ、どんなゴールでも一点は一点なので、こぼれ球に詰めたり、そういうゴールを増やしていかないといけないですね。

――ただ、ゴールを取っていても、代表に呼ばれないタイミングもあります。そういうときにはどのようにモチベーションを保ってプレーしていますか?

もちろん、代表は本当に大事ですけど、それがすべてじゃないと最近は思っていて。昔、大迫(勇也)選手も言っていました。『代表がないときには休めるし、家族と一緒に過ごして、ゆっくりできる』。そうやってプラスに考えていくのだと。

仮に代表に呼ばれなくても、自分の調子を高められますし、チームとして信頼を得るということが可能になってくると思うので。ポジティブに捉えていくしかないなと。

――「代表に呼ばれるためにはどうしたらいいのか」とあれこれ悩みながらプレーするよりも、「代表に選ばれるしかないと誰もが考えるような結果を残すこと」に集中していると?

そうです! 本当にそういう空気を作ることが一番いいんじゃないかな。監督の好みもあるし、どうやって決めるのか、基準は僕らにわかりません。だからこそ、有無を言わさない結果を出せれば、それに越したことはないなと。

――武藤選手のここまでの話を聞いていると、自分のやるべきことに集中していると感じます。仮に代表に呼ばれない時期があっても、迷うことはないのでしょうか?

もちろん、(代表に呼ばれない理由は)考えますよ。でも、そんなことを言っていても、監督が誰を選ぶのかを決めるわけで、そこに対して文句を言っているヒマはないです。
だからこそ、腹をくくって、今はとにかく成長しようと思っています。

――では、6月から始まるロシアW杯のグループリーグの組み合わせについて、どう感じていますか?

もちろん、どのチームも強いです。予選を勝ち抜いて、W杯に出てくるチームですからね。でも、絶対にチャンスがある組み合わせだと思います。嫌なグループに入ったという意見は正直、違うと思いますね。ドイツやブラジルのような、試合で勝つのが本当に難しいチームと予選グループから当たるわけじゃないですから。

勝負にどれだけ集中して臨めるか。(勝つことは)「決して不可能ではないな」と思いますね。まぁそもそも、サッカーに不可能はないですけどね。

■得点を左右する「0コンマ何秒の差」へのこだわり

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――少し話は変わりますが、武藤選手の活躍を支えるアディダスから、1月25日にニューカラーの『ネメシス コールドブラッデッドパック』が登場しました。武藤選手は派手な色のスパイクが好きだそうですが、こだわりはありますか?

やはり、派手な方がモチベーションが上がるというか、明るい気持ちになりますよね。試合前に履くと、気持ちが引き締まります。(試合だけでなく)練習からずっと履くものですから、スパイクの色でモチベーションが上がるのなら、それほど良いことはないですよね。

(こだわりは)色とフィット感、そして軽さ。それを今回、両方とも再現してくれたのがこのスパイクなんです。バンテージ素材で、足を包み込んでくれる感じ。どんなに良いスパイクでも、自分の足に合わずに靴の中で足の位置がズレることがあるんです。

このスパイクはアジリティーを重視してくれているだけあってズレないですし、軽い。自分のプレースタイルに完璧にマッチしているんじゃないかなと思います。

――2015年の夏にドイツに来て自身2試合目となる練習試合の際、慣れ親しんだ足の裏のスタッツが固定式のものではなく、取り替え式のスパイクを履いていましたよね?

夏は固定式でも問題ないのですが、秋以降は地面がぬかるんでしまうので、今は練習でも滑らないように取り替え式のものを履いていますね。

――すぐに取り替え式に変えた理由は?

足を滑らせてチャンスを逃したら、絶対に後悔するからです。

――武藤選手はクロスに点で合わせる能力が、海外でプレーする日本人選手の中でもトップクラスですよね。ゴール前で相手ディフェンダーより先にボールに触る秘訣はどこにありますか?

踏ん張って、一歩前に出るスピードですね。0コンマ何秒の差で、ゴールが決まるか決まらないかが変わって来るので。ほんの少しでも相手より頭が前に出ているだけで、ボールに触れたりする。仮に、靴の中で足の位置がズレてタイミングが遅れてしまったら、フォワードにとって大問題です。

このスパイクは本当に自分にフィットしているし、誰が履いても合うスパイクなんじゃないかなと感じますね。

■「サッカー人生で一番キツかったこの2年」からの飛躍

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――ここまで話をうかがってきて、武藤選手は「今に集中する」という点を強調されてきたように感じます。ご自身が集中するために大事にしていることはどんなことなのでしょう?

自分がヒーローになるイメージというのを、ずっと頭の中で練っていますね。

――試合前にイメージするのですか?

試合前も含めてずっと、自分がゴールを決めるイメージ、チームが勝つイメージ、良いプレーをするイメージを頭に浮かべています。ただ、どうにかして考えようとしているというよりも、勝手にそういうことを考えていますね。自分にとって重要だと身体で感じるというか、野性的な勘みたいな感じですね。

――では、2018年はどういう年にしたいですか?

もう、最高の年にしたいですね! 最近「最高の年だった」と思うのはFC東京の1年目、2年目くらい。その後は厄年もあって、後厄もあって(笑)。やっと、それも終ったので。この2年は自分のサッカー人生で一番キツかったかな。でも、人生は絶対にプラスマイナスがイコールになると思います。

ずっと良い人なんて絶対にいない。今年は良い流れが来るなという気持ちで、頑張っていきます。

■「最高」へのスタートは切られた

ウインターブレイクを日本で過ごした武藤は2018年の元日、戦いの地、ドイツへ再び飛び立っていった。飛行機に乗り込む前、彼はこんな話をしていた。

「昨年の11月からは腰のケガもあって少し休まざるを得ない時期がありましたけど、ウインターブレイクでは日本でしっかりトレーニングをしつつ、ゆっくり過ごせました。
腰の痛みも今はないですし、今年はベストコンディションで臨めるんじゃないかなと思っています」

その言葉通り、武藤にとって2018年の初戦となったブンデスリーガ第18節のハノーファー戦で、いきなりゴールを決めてみせた。さらに、続くシュトゥットガルト戦ではドッペルバック(1試合2ゴール)を達成し、リーグ公式のマン・オブ・ザ・マッチに選ばれた。

「有無を言わさない結果を残す」

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活躍を誓う固い決心を胸に秘め、最高の形でスタートを決めた。

仮に彼が「最高の一年」を実現させることができたなら、その未来はおそらく、彼にとっても日本代表にとっても、明るい未来であるはずだ。

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