フェルナンド・バスケス率いるデポルティボ・ラ・コルーニャにとって、柴崎岳こそが素晴らしい“補強選手”になるかもしれない。負傷から復帰し、すでに全体練習に参加している日本人MFは、ここから今季終了までのカギを握る存在になることを目指している。前監督のルイス・セサル率いるチームで出場機会がなく、さらに負傷に苛まれた彼には欧州、アジア、さらにはアメリカから問い合わせがあったと聞く。しかしながら選手本人には、現在のところデポルから去る考えはなく、ここで成功をつかむ意欲があるようだ。
柴崎の今季ここまでの道程は、決して簡単なものではなかった。今季初め、アントニオ・アンケラ率いるチームではアレックス・ベルガンティーニョスとともに2ボランチとしてプレーしたが、足りない技術を肉弾戦で補う激しく、泥臭いリーガ2部において、少し頼りないフィジカルが仇となっていた。ただ、そうした欠点は、その足元の技術とインテリジェンスで補えてもいた。あとは彼自身のデポルへの適応、そして彼をどう生かしていくか、という問題にも思えたものの、チームは低調を極めたためにそうしたことにこだわれず。次にチームを指揮したルイス・セサルは3ボランチを駆使し、同システムならば柴崎はもっと輝けると考えたサポーターは少なくなかったが、出場機会は与えられなかった。
文/フアン・ジョルディ(Juan Yordi)、スペイン『マルカ』デポルティボ番
翻訳/江間慎一郎.
■現状打破のチャンス
(C)MutsuFOTOGRAFIAリーガ2部から見れば煌びやかに映る、成長著しい日本代表では不動の選手が、デポルでベンチ要員とはちょっとした皮肉にも思える。ではプレー面以外に問題があるのかと言えば、そういうことでもない。彼はデポルティボのチームの一員としてしっかりと振舞っている。次の試合でどうプレーすべきか、どうすれば低迷するデポルが上昇気流に乗ることができるのか、積極的に意見を口にしている。柴崎はロッカールーム内でしっかりと愛されているのだ。チームメートは「礼儀正しい」「楽しい」といった言葉で彼を形容する。
そして、柴崎がフラストレーションが溜まる現状を打開する可能性がここに来て生まれている。デポルは12月29日、かつてクラブを1部昇格に導いたF・バスケスを招へい。デポルサポーターから愛され、各選手の長所を引き出すことを得意とする指揮官が期待を込める選手には、柴崎も含まれている。
F・バスケスはその初陣であり、チームが今季3勝目を果たした先のヌマンシア戦(第22節)で3-4-3を採用したが、同システムの中盤4枚におけるサイドのポジションや、同様に彼が好むシステムである4-2-3-1のトップ下で柴崎を起用する可能性は十分にある。21試合で35失点とあられもないほどゴールを許してきたデポルにとって、現在の最重要課題は失点を減らすことにあるものの、攻撃においてイニシアチブを取れる選手が必要だ。
そこで、柴崎である。そのフットボーラーとしての才能に疑いの余地はなく、クラブもこれから結果を出すことを信じている。彼は周辺状況をしっかり把握することに努め、得た情報から最適解となるプレーを確かな足元の技術でもって実現する。この日本人は間違いなくフットボールを“プレー”できる選手であり、たとえスペインであっても彼のような“プレー”を見せる選手は数少ない。だからこそデポルティボは前回の冬、その次の夏の移籍市場と、困難なミッションでありながらも柴崎の獲得を目指し、実現にこぎつけたのだ。
■移籍の可能性は消えず
(C)Mutsu KAWAMORIただし1月は、デポルにとって、柴崎含めた全選手にとって勝負の月である。なぜなら、順位表の最下位にいれば、移籍市場はさらに気まぐれなものとなるからだ。現状では、チームに所属する25選手全員に移籍の可能性があり、実際にここから去るのかどうかは監督、選手、さらには移籍先のクラブ次第となる。
柴崎にとっても、これからの3週間が勝負だ。実戦でデポル首脳陣とF・バスケスが見込んだ通りの活躍を見せられるならば、リーガ2部残留を目指す上で大切な存在となれる。しかし、もし彼の長所が生かされない場合には、テーブルの上に置かれているクラブにレンタルで移籍する可能性もあるだろう。
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