2017-06-06-kashiwa(C)Getty Images

柏レイソルがJの先に見据える「世界」の舞台…満員の日立台が示した“決意”とは?

「柏から世界へ」

柏レイソルが掲げるスローガンだ。4日に行われた浦和レッズとの一戦で、柏は世界に挑む準備ができていることを明確に見せた。ホームスタンドからのチャントに足でリズムを取りながら、ピッチを眺めていた外国人サポーターがいたように、“黄色い太陽”のまだ見ぬ挑戦を世界は好意的に受け入れてくれるだろう。

日立柏サッカー場には収容人数の9割を超える観客が詰めかけ、試合前から声を枯らす。それもそのはず。柏は7連勝中で首位を走り、4位をキープする浦和をホームに迎える大一番だったからだ。しかも日曜日唯一のナイトゲームということもあり、ゴール裏だけでなく、記者席までもまさに満員。立ち見でメモを強いられる記者もいたほどだった。

■柏ファンが見せたサポートの形

14096人――。Jリーグで最も情熱的な浦和サポーターと柏サポーターが見せた応援のコントラストは美しく、興味深かった。アウェースタンドを真っ赤に染め上げた浦和サポーターは荒々しくも力強い声援で選手たちの背中を押す。相手のコーナーキック時にはすぐそばで手を振り、集中力をそらそうという動きをしたかと思えば、まるでホームであるかのように我が物顔で大きな旗を掲げ、チームを鼓舞した。

一方、“柏熱地帯”から感じ取れたのは熱さと温かさだった。サポーターはおそらく選手一人ひとりの心に突き刺さるチャントでチームの勝利を願った。

クリスティアーノが単独のドリブル突破からコーナーキックを獲得し、ファンを煽れば、すぐさまチャントで“返答”。伊東純也が得意のクイックネスを発揮し、ファウルをもらえば、サポーターは倒れたままのスピードスターに手を差し伸べるように名前を呼んだ。極めつけは日本代表に招集されるまでになった中村航輔に対するチャントだ。

「コ・ウ・ス・ケ!!」

残念なことに、この熱量だけは文字で伝えることが難しい。スタジアムへ足を運んだ者だけが感じられる“熱さ”だからだ。

ここで文字にして伝えられることがあるとすれば、サポーターの声援が中村を後押しした、ということだろう。彼はこの日、何度もビッグセーブを見せた。決められれば同点となるPKの場面でも、焦りは見られなかった。「何とか止めようと最善を尽くした」という試合後の言葉からも、平常心を保っていたことが窺える。

向かい合ったのは今季11ゴールを上げてJ1得点ランキングで首位を走る興梠慎三だった。リーグ屈指の点取り屋を相手に、中村はどっしりと待ち構える。結果として2度に渡るフェイントにも動じず、失敗を誘発させた。間違いなく“中村のセーブ”と呼べるシーンだった。ボールがゴール右に外れた直後、柏の選手たちが駆け寄った姿が守護神の功績であることをより印象づけた。

そして、直後にスタジアムを包んだのは歓声と地響きのような「コウスケ」コール。まさにスタジアムが一体になった瞬間だった。

中村に限らず、柏の選手たちは90分を通じてハードワークを惜しまなかった。下平隆宏監督は試合後、勝因について「全員が足を止めずプレスをかけ続けたこと」を挙げたが、選手たちの足を動かした要因の一つに「最高の雰囲気」を日立台で作り上げたサポーターの存在があったことは書き記しておくべきだろう。

■示した「世界へ」の道筋

熱気を生み出していた要因は、サポーターだけではない。ピッチ上で繰り広げられる攻防が、スタジアムの温度を上げていく。

中川寛斗の無尽蔵のスタミナによる前線からのプレス、李忠成の見事なプルアウェイからのフィニッシュ、中村の幾度にも渡るビッグセーブ。とりわけスタジアムを揺らしたのはクリスティアーノと槙野智章のマッチアップだ。J屈指の屈強な助っ人外国人と、この日も気迫溢れるプレーを見せた日本代表DFの肉弾戦は歓声の域を越え、どよめきすら生んでいた。

結果的に、前半のアディショナルタイムに決勝点が生まれたというのも、好ゲームの印象を色濃くした。両チーム体力は余しながらも、一瞬の隙ができる瞬間に強者が突く。ワールドカップなどの世界最高峰の舞台でもしばしば見られる展開だが、7連勝中の柏はそれを成し遂げた。

試合後、柏の選手たちはサポーターとともに喜びを分かち合った。いつものようにスタンドからは、凱歌の「ヤマト」が聞こえてくる。

「Yes! Yes! Yes! Yes!」

それはまるで、自分たちが優勝を狙えるクオリティを持つチームであり、その先にある世界へ旅立っていく準備があると宣言しているかのようだった。

主将の大谷秀和は以前、2011年に参戦したクラブワールドカップを振り返り「あれほど自分たちの成長を感じられたことはなかった」と口にしていた。同時に、再び世界の舞台に立つことに強い意欲を示している。

柏は世界へ行けるのか?

この夜、日立台で何度も叫ばれた「Yes」には、その問いへの“決意”が込められているようだった。

取材・文=平松凌(Goal編集部)

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