2年半後の東京五輪に向けて森保一監督を新たに迎えたU-20日本代表が、その最初の活動をタイで行っている。直接的な目的は地元のタイや北朝鮮、ウズベキスタンなどのアジアの強豪が集うM-150杯への参戦だ。初陣の腕試しにして、選手テストの場。そう思ってタイまでチームを追い掛けてきたのだが、その認識は少し違っていたなと思い始めている。
誤解を恐れずに言えば、森保監督は今大会でのプライオリティーの第一を「勝利」に置いてはいない。もちろん「大会に出るからには、勝利を目指す」という指揮官の言葉に偽りはないだろう。当然、キックオフの笛が鳴れば勝ちを狙いにいく。だが、「ただ勝てば良い」と思ってないことも確かだ。単に勝ちたいだけならば、実績のある選手たちを集めれば良かったのだが、実態としては真逆。「今回のチームは前回のU-20W杯に出た選手がいないメンバー」(DF立田悠悟=清水エスパルス)である。あえて代表経験のない選手複数を含んだチーム構成を最初の遠征で選んできたのは象徴的だろう。
タイに入ってからのトレーニングも印象的だ。到着初日の7日こそ20時間の移動があったために遠慮がちな調整メニューだったが、翌8日(つまり試合前日)は午前と午後の2部練習を敢行。さらに試合当日となる9日の午前にまでトレーニングセッションを設定した。「やりたいことが、いっぱいありますから」と指揮官は笑って語っていたが、大会に勝つことだけを考えるならば、練習を詰め込む必要はあるまい。この短時間で選手たちに少しでも自分の戦術を浸透させて意識改革を図ろうという狙いが明確にあるからこそのスケジューリングだ。なるほど、これは「森保ジャパン・タイ合宿」なのだ。そういう理解ができてきた。
立田が「ここで存在感を出していかないことには生き残れない」と言葉に力を込めたように、選手側の意識は総じて高く、トレーニングでも意欲的だ。単純に「森保さんの練習が面白い」(MF神谷優太=湘南ベルマーレ)ということもあるかもしれない。明確に意識付けしているのは、後方からのビルドアップと攻守の切り替えの高速化だが、8日午後には3バックシステムにおける守備戦術にも手を着けていた。少し混乱しているように見える選手もいたが、そうした戦術理解能力も含めて森保監督は個々のパフォーマンスを観察しているようにも見える。
■決して小さくない「2歳」
まずは9日20時(日本時間22時)から始まる3カ国のグループリーグ戦で、日本は地元のタイと対戦する。この大会に出てくる相手は基本的には来年1月のAFC U-23選手権(中国)に臨む「U-22」の年代なので、「U-20」日本にとっては年上に当たる。日本が「U-22」でチームを編成するなら、井手口陽介(ガンバ大阪)や中村航輔(柏レイソル)が呼べると言えば、この年代における「2歳」の差が決して小さくないことをイメージしてもらえるだろう。
そういう舞台に代表経験の浅い選手が多い急造チームで臨むのだから、確実に簡単な試合にはなるまい。そしてだからこそ、東京五輪に向けて「使えそう」な選手をテストする場として貴重なものにもなるはずだ。
森保ジャパンのタイ合宿。指揮官の狙いは年上相手のM-150杯という機会を利用しながら、選手を鍛えて見極め、世代としての可能性を広げていくこと。そして選手にとっては東京五輪に向けて長く激しいサバイバルレースへの第一歩である。短期間ながら密度のあったトレーニングで叩き込まれたことを試合でどこまで表現できるのか。そして個人としての特長を未熟な組織の中で年上の地元チーム相手にどこまで出し切れるか。何とも興味の尽きない試合になりそうだ。
文=川端暁彦
▶サッカーを観るならDAZNで!1ヶ月間無料のトライアルを今すぐ始めよう。
【オリンピック特集】ファン必見!注目記事・動画まとめ
※記事はIOC公式サイト『Olympic Channel』
【動画】サッカー リオ五輪ベストゴール集
【動画】サッカー リオ五輪決勝ブラジル対ドイツ フルマッチ
【動画】サッカー 北京五輪決勝ナイジェリア対アルゼンチン フルマッチ
【動画】サッカー バルセロナ五輪決勝ポーランド対スペイン フルマッチ

