◆明らかに高まった川崎Fの守備意識
開幕前の優勝予想では昨季王者の鹿島アントラーズと年間勝ち点1位の浦和レッズが最有力視されており、昨季両ステージで2位となり、年間勝点でも2位に入った川崎フロンターレを推す声は少なかった。得点源である大久保嘉人が移籍したこと。そして何よりも、独特のパス・サッカーを築き上げてきた風間八宏監督の退任(名古屋グランパスの監督に就任)が、不安視されていたのだろう。
その川崎Fは開幕から4試合を消化して勝ち点7で8位とやや出遅れている印象はあるが、しかし、そのパス・サッカーは健在だ。また、今季の川崎Fは守備意識の向上も顕著だ。特に、最終ラインの軸となった谷口彰悟の最終ラインから飛び出して相手アタッカーを消しに行く積極的な姿勢が印象的だ。
「ボールを持っていれば攻められることはない」として守備練習に時間を割かなかった風間監督から鬼木達監督に代わり、守備意識は明らかに高まっている。現役時代に守備的MFとして活躍した鬼木監督だけに、勝負へのこだわりが強いのは当然だろう。
◆ターニングポイントとなった広州恒大戦
筆者は3月に中国を訪れ、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)グループステージ第3節の広州恒大戦を観戦してきた。立ち上がりに受けに回った川崎Fは広州恒大に圧倒され、26分にアランに先制ゴールを決められてしまった。すると、鬼木監督はすぐに交代カードを使い、ピッチ上の5人の選手のポジションを入れ替えて立て直しに成功する。そして、後半は川崎Fのパス・サッカーが広州を圧倒。追加タイムの小林悠のPKで追い付いたのだ。
川崎Fのパス・サッカーのレベルの高さを再確認できたし、また鬼木監督の手腕も証明された。単に広州から勝点1を奪っただけではなく、シーズンを通じてのターニングポイントとなる試合だったのではないだろうか。
かつてミハイロ・ペトロヴィッチ監督が作り上げたサンフレッチェ広島の攻撃サッカーに、後任の森保一監督が守備意識を植え付けて常勝チームを作ったことがある。今季の川崎Fで同じような現象が起こっても不思議ではない。
優勝候補の呼び声が高かった鹿島と浦和。そして、昨季以来の攻撃力を維持し、そこに守備意識も強化された川崎F。これら昨季の3強を中心にJ1の優勝争いは展開されるのだろう。そこに、開幕4連勝とスタートダッシュを決め、さらにポドルスキの加入も決まったヴィッセル神戸がどこまで絡んでくるのか? 開幕から1カ月が経過し、J1リーグはこれからが佳境である。
文=後藤健生
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