2017-12-13-urawa(C)Getty Images

「春夏秋冬」激動の時期を過ごした浦和、CWC第5位の矜持を持って来季へ進む

2017FIFAクラブワールドカップ。準々決勝で開催国枠出場のアル・ジャジーラSCに敗れたアジア代表の浦和レッズは、アラブ首長国連邦・アブダビ首長国の東端にあるアル・アインのハッザ・ビン・ザイードスタジアムで、アフリカ代表のウィダード・カサブランカと5位決定戦を戦った。

準々決勝からは中2日。アブダビから約160キロ離れたアル・アインへと陸路移動して臨んだゲームで、浦和の堀孝史監督は前戦から3人の選手を代えて臨んだ。チームに求められたのは志半ばで準決勝進出への道が途絶えた状況からの反発力、そして2017シーズン最後の公式戦で有終の美を飾って来季へ繋げるモチベーションの維持だった。

■見せた意地と取り戻した積極性

試合は序盤から浦和がボールポゼッションを高めて攻め込む展開となった。ただしアル・ジャジーラ戦とは異なり、今回の浦和は中央、サイドに多くの人数を掛けた分厚い攻撃が抜群に機能した。1トップの興梠慎三を孤立させることなくインサイドハーフの柏木陽介と長澤和輝が近接し、サイドMFのラファエル・シルバと武藤雄樹も中央エリアへ入り込んで相手ゴールへ迫る。また、両サイドMFが空けたサイドスペースにはサイドバックの槙野智章と森脇良太が果敢にオーバーラップを図って入り込み、ほぼワンサイドで相手を自陣に釘付けにさせる素地を生んだ。また、攻撃過多になれば守備の意識が希薄になるリスクはアンカーの青木拓矢とセンターバックの阿部勇樹&マウリシオ・アントニオが適切に対処する。この日の浦和は、今季途中までチームの指揮を執ったミハイロ・ペトロヴィッチ前監督が標榜したアグレッシブなスタイルを取り戻したかのような躍動感を見せ、アフリカチャンピオンであるカサブランカを圧倒することに成功した。

17分、相手ゴール中央約25メートルの位置からマウリシオが豪快に右足を振り抜く。相手GKバドルッディン・ベナシュールが必死に身体を伸ばすも届かず、カサブランカゴール右上に強烈なシュートが突き刺さる。まるで号砲を鳴らすようなマウリシオの一撃は浦和の攻撃を活性化させ、チームの勢いを促進させた。

20分、MFイスマイール・エルハダッドがFKから直接浦和ゴールへボールを入れ込んですぐさま同点に追いつくが、浦和の意欲は削がれない。より手数と人数を掛けた攻撃で相手を押し返すと、25分に流麗なコンビネーションアタックが火を噴く。相手陣内ペナルティエリアラインの横軸を右から左へなぞるように長澤、興梠、武藤、ラファエルとボールが繋がり、左から送られたラファエルのクロスに反応した柏木がファーサイドへ飛び込んで左足スライディングシュートを決めた。AFCアジア・チャンピオンズリーグ決勝でアル・ヒラルを下して10年ぶりにアジア王者へ返り咲いて以来影を潜めていたアタッキング能力が蘇り、浦和がアフリカの雄を再び突き放す。

カサブランカは3日前のパチューカ(メキシコ)戦で延長戦を含めた120分間の激闘を戦い、浦和とのゲームに際しては先発を8人代えていた。エースFWのアクラフ・ベンカルキらが控えに回る状況だったわけだが、それでも最前線で危険な動きをするFWモハメド・オウラドユセフや中盤でチームをオーガナイズするMFエルハダッドらの主力は先発に名を連ねており、彼らもまた、勝利への執念をたぎらせていた。

それでも、今回に関しては浦和の方がピッチへ思いを投影させる意欲が勝っていた。59分、柏木のFKを興梠が受けてクロス。ゴール前で相手DFがクリアしたボールをゴール中央で拾ったマウリシオが狙いすました右足シュートを打ち込んで3点目を決めると、試合の趨勢はほぼ決まった。後半アディショナルタイムにビデオアシストシステムによって阿部のファウルと判定されて相手にPKを与え、それをレダ・ハジュージに決められるも逃げ切った浦和がクラブワールドカップ5位を死守。マン・オブ・ザ・マッチには柏木が選ばれ、これをもって浦和の2017シーズンが終了した。

■浦和の今季はどのようなものに?

柏木がクラブワールドカップ、そして浦和の今シーズン全体を独特な表現で振り返った。

「春夏秋冬だったなと。最初は無敵状態。でも、まったく勝てない時期があって、監督が堀さんになって、新しい守備からのサッカーでフォーメーションも変わった。そして、最後はつなぐサッカーになった。いろいろな季節を過ごしたなと思っています。しんどかったけど、良いこともたくさんあった。欲を言えば、ミシャがいる時にもっと何とかできたんじゃないかなと思う。ただ、それも自分が人として、サッカー選手として成長するために必要なことだったのかもしれない。監督の解任があって、強くなったと思います。これからまた、良い成長をしたいです」

浦和は来季も堀監督の続投が決まっている。今季制したACLは、Jリーグで7位に低迷したことで来季は出場が叶わない。正真正銘の転換期に差し掛かかる今、それでも自らのプライドを賭して死守したCWC5位の成績を胸に、浦和は再生への道を歩み始める。

取材・文=島崎英純

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