2019-09-25-sakai_gotoku

日本人選手がイニエスタやビジャから学ぶべきこと。酒井高徳、ドイツでの経験を経てJリーグを語る/インタビュー

 ドイツで7年半を過ごし、Jリーグに戻ってきた元日本代表DF酒井高徳。ヴィッセル神戸では、復帰後初戦から迫力あるプレーを見せている。

 スポーツライター飯尾篤史氏が酒井に切り込むインタビュー。 Jリーグと海外との違いに触れた前編 に続く後編では神戸にフォーカス。アンドレス・イニエスタ、ダヴィド・ビジャなど世界最高峰でプレーした名手たちはチームに何を与えており、そして日本人選手は何を学ぶべきなのか? 海外を経験した自身が果たす役割も含めて、広く示唆に富む言葉を発している。

■自分ひとりで変えられるとは思っていない

2019-09-25-sakai_gotoku©J.LEAGUE

――ヴィッセル神戸に加入する際、「クラブが掲げるビジョンに共感を覚えた」と話していました。改めて、クラブからどういうビジョンを提示され、その中で、どういう自分を想像し、このクラブをどうしていきたい、と思ったから、ここを選んだのでしょう?

「クラブから聞いたのは、トッププレーヤーを連れて来て、Jリーグの中で強いチームになりたい、ACLを狙えるチームになりたい、その準備を今進めていると。それには、海外での経験が豊富で、そうした経験を伝えられる日本人選手が必要だから、来てくれないか、と言われて。自分ならできるんじゃないか、と思ったのが決断の理由ですね。僕のメンタリティやパーソナリティもすごく評価していただいて。

 僕自身、自分ひとりで何か変えられるとは思ってなくて。チームあっての自分。求められたら、120%の力を出せる自信もある。そういう意味では、自分がどうなっていきたいとか、チームをどうしていきたい、というより、神戸というチームが良くなっていくために、自分に何ができるか、ということを考えていきたいと思っていて」

――具体的に、どんなことを考えていますか?

「細かいことで言うと、練習中のコミュニケーションの部分。自分の経験を伝えていきたいし、言い合える状況を作っていきたい。もう少し大きな話をすると、1試合、1試合、どうしていこう、どうなっていこう、ということを選手同士で共有する。そうして少しずつチームの質を上げていく。なおかつ、外国人と日本人がうまく融合できれば、神戸はすごく強いチームになれると思います。それにはスタメンの11人が、ベンチメンバーの18人が、いや、チーム全体がしっかりまとまらなければならない。そのために力を貸せる自信があるから、今回、神戸への加入に至ったというところがあります」

■「退く」ところでいろいろ考えた

2019-09-25-sakai_gotoku©J.LEAGUE

――振り返れば、ロシア・ワールドカップ後に日本代表と、そして今夏にはハンブルクと、酒井選手にとって悔しい想いや忸怩たる想いを抱えながら別れることになったけれど、そうした経験、そうした想いは、今回の選択に影響を与えていますか?

「そうですね、うーん、移籍も、代表引退も……引退というか、『退く』というところで、いろいろと考えたうえでの結論なので。去るにせよ、残るにせよ、どちらも簡単にできる選択ではなかったので。逆に、居続けたり、残ってやり続けることも自分にとって非常に大きな経験になったと思うんですけど、日本に戻ることが自分にとって何かひとつ、大きな変化になるんじゃないかな、と思ったところもあって。

 代表に関しても、退くからこそクラブに100%集中できるわけで。だから今、神戸を強くするために自分は何をしなきゃいけないのか、ということがすごくクリアになっている。そういう意味では、自分にとって良い選択ができたんじゃないかなって。

 結局、大事なのは、自分の出した結論が正しかったかどうかではなく、それとどう向き合うか。結論を出した以上、そこに向かってしっかり進んで行くだけだし、ここで少しでもレベルを落としたり、目標を見失ったりしたら下にいくのは早い。自分がやってきたことを、いかに高いレベルで表現し続けるかが、今後のサッカー人生にとって非常に大事。そこを一番、意識してやっていかなきゃいけないと思っています」

――今回の移籍に関して、同い年の山口蛍選手には相談したんですか? リーグの前半戦の話も聞いたなら、決して良い話ばかりではなかったと思いますが。

「蛍とは、決まりそうだというタイミングで、いろいろと聞きました。チームのことはもちろん聞いたし、うまく回っていないということも(苦笑)。ちょうど連絡を取り合っていた頃、良い結果が出てなくて、こんなに良いメンバーがいるのに、チームとしてうまく歯車が合っていないというか、バラバラな印象があって。

 そこの手助けになれると思ったんですけど、自分はちょっとうるさいタイプなので、浮かないかなって(笑)。その心配のほうが強くて。『迷惑がられないかな?』『熱すぎて、引かれないかな?』って蛍に聞いたら、『大丈夫、大丈夫』って。『むしろ、そういうタイプが必要なんだ』と言ってもらって。加入してからも助けられているし、蛍にはすごく感謝しています」

――実際、酒井選手が浮くほど、チームは静かなんですか?

「静かというか、みんな、オープンで、よく喋るんですけど、練習中の要求は少ないと感じました。声は出ているんですよ、『ヘイ、ヘイ』って呼んだり。でも、『こういうボールをくれ』とか、『今、行け』『もっと来いよ』『シュート、打てよ』といったプレーに関する要求がもっとあっていい。それはエゴではなくて要求。それをすることで、連動も深まっていくし、意思の疎通も深まっていく。

 外国人選手がこれだけ多くて、日本人選手も世代がバラバラなので、良く言えばバランスが良い、悪く言えばギャップが大きい。たしかに、バルサやドイツ代表でプレーしていた選手に対して、若い選手が要求するのは簡単じゃないかもしれない。そういう意味では、うまく間に入る選手も少なかったのかなって」

■アンドレスとの練習は学ぶことばかり

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――トルステン・フィンク監督とはドイツでコミュニケーションを取っているわけですよね?

「そうですね、ドイツ語で話しています」

――どんな話をしているんですか?

「合流したときには、『一緒に仕事ができることを嬉しく思っている』と言ってもらって。『ハンブルクでのプレーも見ていたし、きみの人間性も、向こうの人たちから聞いている』と。僕も、監督がハンブルクを率いていたときにスタッフだった方がクラブにまだいたので、その人たちから話を聞いていて。そういう繋がりもあって、監督とは最初からスムーズに関係を作れたというか。

 プレーに関しては『左サイドを強化したいと思っていて、獲得できる中で最高の選手に来てもらったと思っている』と。『アグレッシブさや力強さ、守備の部分など、ドイツで学んだものを普通に出してくれたら問題ない』と言ってもらいました。僕のプレーを知ってくれているのは大きいですね」

――アンドレス・イニエスタ選手は左サイドに流れることが多いので、復帰戦となった浦和レッズ戦や2戦目のサガン鳥栖戦ではパス交換をする機会が多かったですね。イニエスタ選手には何を求め、彼は酒井選手に何を求めてきますか?

「アンドレスはそんなに要求するタイプじゃなくて、淡々とやるところがあって。実際、合流して2日目くらいの練習で、アンドレスのパスに僕が反応できないときがあったんです。このタイミングで出てくるんだって、異次元すぎて(笑)。アンドレスは『ごめん、悪い』っていう感じだったんですけど、間違いなく僕のミス。それで『いや、次は絶対に走っているから、これからも続けて出してくれ」って通訳を介して伝えたんです。

 試合中も僕から、守備のときには『大丈夫? しんどくない?』『ここは俺が行ったほうがいい?』とか、攻撃のときには『最初にアンドレスを見るから』とか、『どこにポジションを取ってほしい?』って声を掛けている。アンドレスも『問題ない。きみが考えていることを共有してやっていこう』と言ってくれていて。それで、鳥栖戦のときぐらいから、アンドレスならここにいるだろうな、ここに出してくれるだろうな、というのが分かってきて、すごくやりやすくなってきました」

――2試合目で? 早いですね。

「アンドレスが僕に合わせてくれるんです(笑)。やっぱり凄いなと思うのは、自分が簡単にやって、周りも簡単にさせるところ。ボールを持ったり、ドリブルしたりする場面が多いなかで、アンドレスがワンタッチでボールをさばくから、チームにリズムが生まれて、サポートした僕もワンタッチではたける。周りを巻き込むようなプレースタイルというか。必然的に彼のリズムになるんですよ。リズムを作るって、こういうことなんだって。練習中は、学べることばかり。本当に楽しくやらせてもらっています」

■特に若手に言いたいのは

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――イニエスタ選手だけでなく、ルーカス・ポドルスキ選手やダビド・ビジャ選手など、世界のトップ・オブ・トップの選手がこのクラブにいます。ドイツで7年半プレーした酒井選手から見て、日本人は、Jリーグは、彼らから何を学ばなければならない?

「全部ですね、はい。特に若手に言いたいのは、人間性、トレーニングへの姿勢、技術はもちろん、じゃあ、なんで技術が高いのか。それにはもちろん理由がある。僕からすると、聞きたいことばかりなんですよね。『小さい頃、何してたの?』とか、『今からできることはありますか?』とか。僕が19、20歳だったら毎日、アンドレスにくっついて、質問攻めにしていると思う。実際、新潟時代、僕はそうやって先輩にくっついて話を聞いていたので」

――そうやって毎日一緒にいて、盗めるものはすべて盗む。

「そういうサッカー選手と一緒にいられる神戸の選手は特に学ばなければいけない。超一流選手は、すべての面で超一流だと思っているので。実際、これまで対戦してきた超一流選手もそうでした。人間性もサッカーとの向き合い方も。練習前後のケアや準備の意識も高いし、プロサッカー選手に必要な要素はすべて高いレベルにある。僕自身も、多くを彼らから学びたい。今からでもバルサでプレーしたいとか、そういうことじゃないですけど、自分が今いるところより少しでも高みに昇れるなら、なんでも聞いて、なんでも学びたいと思っていますね」

――若い選手たちは、遠慮しないでどんどん、聞きに行けばいいのにと。

「本当にそう思いますね。彼らにだけでなく、僕に対してもそうですし、蛍に対してもそう。蛍も日本代表で長くプレーして、ワールドカップも経験している。そんな経験を持つ選手と同じチームでプレーできる機会って、そんなにないと思うので。特に同じポジションの選手は、何でも聞きに行くことが大事なんじゃないかな、と思います」

――これからリーグは終盤戦に入っていきます。どんなシーズンにしたいですか?

「今、順位としては、思い描いた位置にいるわけではないので、残り試合でしっかり自分たちのサッカーをして、少しでも高い位置に順位を上げて、来シーズンに繋げたいです。残留争いは混戦なので、そこを意識しながらも、より高みを目指していければ、と思っています」

■DF 24 酒井 高徳 Gotoku SAKAI

1991年3月14日生まれ、28歳。176cm/74kg。新潟県出身。三条サッカースポーツ少年団→レザーFCJrユース→アルビレックス新潟ユース→アルビレックス新潟→シュツゥットガルト→ハンブルガーSV→神戸。J1通算78試合出場1得点、ブンデスリーガ通算170試合出場2得点、ブンデス2部通算31試合出場、欧州EL通算11試合出場1得点、日本代表国際Aマッチ42試合出場。

■Jリーグとドイツとの違いを語った前編は こちら

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「※」は提携サイト『 Sporting News』の提供記事です

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