Ernesto Valverde farewellGetty Images

新監督バルベルデはバルセロナで通用するか?初のビッグクラブ就任で試される真の力量

先日ついにバルサはルイス・エンリケ政権の終幕を迎えた。元スペイン代表MFでもあるエンリケは、決勝でアラベスを破りコパ・デル・レイ優勝という置き土産を残してバルセロナの地を去っていった。

そして今、バルサに新たな風が吹こうとしている。今夏よりエルネスト・バルベルデが新監督に就任することが発表されたのだ。アスレティック・ビルバオで4年間の任期を終えたバルベルデ監督(53)はバルサに何をもたらすことができるのだろうか。彼のこれまでのサッカー人生を振り返りながら考察していこうと思う。

バルベルデは選手としてはアラベスでキャリアをスタートさせ、その後スペインのチームを転々としたのち、ヨハン・クライフ時代のバルサで2年間プレーしている。バルサの経営陣はこれまでヨハン・クライフをはじめとする歴代の監督たちが築いた哲学を理解する監督を求めており、たとえ短い間であってもバルサで現役時代を過ごした経験のあるバルベルデは監督の位にまさにうってつけだったのだろう。

そしてバルベルデは監督としてはアスレティック・ビルバオとギリシャのオリンピアコスをそれぞれ2度、エスパニョール、ビジャレアル、バレンシアを1度ずつ率いた経験がある。多くの戦術を持つ監督として知られ、4-3-3、3-5-2、4-1-4-1、また最近では4-2-3-1など様々なフォーメーションを起用してきた。

Ernesto Valverde stats graphic

特にアスレティック・ビルバオでの2期目には、スペイン代表FWアリツ・アドゥリスをワントップに置いた4-2-3-1を多く起用し、アドゥリスはここ2、3シーズンで最も好調なパフォーマンスを見せた。バルサではどのようなフォーメーションが採用されるかまだ不確かではあるが、おそらくネイマールとルイス・スアレスをトップに配置し、メッシを中盤深い位置に置く4-4-2のシステムを起用することが考えられる。

アスレティック・ビルバオは前任のマルセロ・ビエルサ監督時代に波乱のシーズンを送っていたが、バルベルデはチームを安定的に勝てるレベルにまで引き上げた。さらに地元出身の選手のみをピッチに送るというクラブのポリシーのもとバスク出身の選手たちの最大限の力を引き出すことにも成功している。

2015年にはスーペルコパでバルサを下し、アスレティック・ビルバオに1984年以来となるタイトルをもたらした。彼は、2013年から2017年までのこの2期目の就任中に102勝を挙げ、前回就任時も合わせるとトータルで140勝を記録した。この数字はハビエル・クレメンテ監督の141勝に次ぐ記録である。

これはバルベルデがチームの強みを最大限引き出すことのできる力があるということの証だ。彼は選手をマネージメントする力に長けているのだ。

しかし、バルサはすでに多くのスター選手を抱えておりこれまでとは違うタイプの選手たちとともに戦わなければならない。特にロッカールームでは階層のトップに立つMSNに敬意を払う必要があるだろう。とりわけ重要なのはリオネル・メッシの扱いだ。ルイス・エンリケ前監督は就任初シーズン、敵地アノエタでのレアル・ソシエダ戦で彼と衝突し、そのことを思い知った。

Luis Enrique Valverde Barcelona Athletic Bilbao Supercopa 17082015Getty ImagesErnesto Valverde Athletic BilbaoGetty Images

また、思慮深く戦術に長けるバルベルデであるが、もし一つだけアスレティック・ビルバオ時代の問題点を挙げるのであれば、アウェー戦での勝利数が少なかったことだ。彼はライバルチームの弱点を見出すエキスパートであり高い位置からプレッシャーをかける戦い方を得意としているが、アウェーではそれがうまくかみ合わない。バルサでは、ホームとアウェーの両方で常に勝利が求められることを念頭に置く必要がある。

先日、ジェラール・ピケはバルベルデについてこう話していた。
「エルネスト(・バルベルデ)は、ここ数年アスレティックで素晴らしい仕事をしてきたね。選手としてバルセロナでもプレーしたことがあるし、彼がバルサの監督になったことは他の監督と同じように良い選択だったと思うよ」

またアンドレス・イニエスタもバルベルデの監督就任が公になる前にこのようなコメントを残している。
「もし次の監督がバルベルデだとしたら、彼は既に準備ができていると思うね。彼はバルサに所属していたことがあるし、何をするべきか、また、どうプレーすべきかを理解していると思うよ」

ピケらの言葉が意味するように、バルベルデのこれまでの実績に疑う余地はほとんどない。しかし彼はこれまでバルサのようなビッグクラブを率いた経験がなく、どう転ぶかはまだ分からないというのが本音であろう。アスレティック・ビルバオでの成績は良かった。さらにエスパニョール監督時代にはUEFAカップ準優勝を、オリンピアコス監督時代には3度のリーグタイトルをもたらしている。バルベルデは手堅く良い仕事をすることのできる監督だ。

だが、彼が次に指揮するのはこれまでとは違ってすでに世界のトップたちが揃っているビッグクラブなのだ。戦術だけではなく選手とのコミュニケーションにおいてバルベルデの過去の実績がどれほど通用するのか、まさに彼の手腕が本物なのか試されるであろう。

文=ベン・ヘイワード/Ben Hayward

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