2018年シーズンの幕開けとなった2月10日の富士ゼロックス・スーパーカップ、川崎フロンターレ戦。2017年Jリーグ・ルヴァンカップと天皇杯の2冠王者のセレッソ大阪は、序盤から仕上がりのよさを見せつけた。
開始20分間は相手にチャンスらしいチャンスを全くといっていいほど作らせず、一方的に押し込んだ。就任2年目の尹晶煥監督は「今季はボールを握りながら相手陣内での時間を長くする」というテーマを掲げているが、思惑通りの展開に選手たちも手ごたえをつかんだことだろう。左MFで先発した新背番号10・清武弘嗣も「相手陣内でボールを握ってる時間が多かったのでそこはすごくよかった。それに(柿谷)曜一朗と(杉本)健勇が前からあれだけ守備をしてくれたので、僕らとしてもやりやすかった」と前向きに評したが、こうした守備意識の高さは1年間の積み上げの賜物と言っていい。
(C)J.LEAGUE PHOTOS左から右へと揺さぶりをかけ、右に開いた山村和也の折り返しを杉本がキープし、ボランチから飛び込んできた山口蛍が右足で決めた前半26分の先制弾も、実に効果的だった。「あれは理想的な崩し」と清武も話したが、こういうパターンが増えれば得点力も上がる。大いに希望を感じられた前半だった。
後半に入ると、新戦力のヤン・ドンヒョンが柿谷に代わって登場。杉本と長身コンビを形成した。「ドンヒョンは足元もうまいし、競り合いでは高さもあるし、強い。新しい選択肢になると思う」と杉本も話したが、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)で屈強な中国・韓国勢と対峙することを考えるとこの組み合わせは有効だ。実際、2人が前に陣取っていたことから、後半2分の清武の2点目も生まれている。チームの新たなオプションになりそうだ。
後半33分の3点目は、同じく新加入の高木俊幸が奪ったゴールだった。山口→ヤンドンヒョン→高木というタテに速い攻めが実った形で、柿谷、杉本、清武という主軸がいなくても得点に持ち込めることを実証したのは大きい。
連戦になれば、どうしてもメンバーを入れ替えなければ戦えない。それを想定して、ゼロックスには帯同しなかった田中亜土夢や片山瑛一ら実績ある選手を補強している。こうした新戦力も今後、陣容に加わってくると見られる。最終的にPKとミスから2点を献上し、守り切れなかったことは課題だったものの、2018年初戦を白星でスタートできたことは大きな収穫と考えていいだろう。
■充実の時を過ごす主力選手
このゲームを見ても分かる通り、現時点でのセレッソは非常にコンディションがいい。彼らは元日の天皇杯決勝後、2週間のオフを経て1月15日から始動。タイ・バンコクでの1次キャンプ、宮崎での2次キャンプでじっくり調整を積んできた。タイでは好例の3部練も盛り込まれるなど、尹監督独特の厳しいアプローチは今年も健在だった。
昨季は1月末にスペイン・セビージャから移籍してきてケガを繰り返した清武や、J1開幕となったジュビロ磐田戦で負傷した水沼宏太らも、万全の状態でここまで来ている。「去年は2度もケガしてしまった。ケガがなければ全試合に絡んで、もっと点に絡めたかもしれない。今年はもっと成長できるように、チームのためになれるようにしたい」と水沼も語気を強めていたが、フィジカル面の調整はかなり順調に来ている様子だ。
ゼロックス杯で81分までプレーした杉本健勇が、完全復活したのも朗報と言える。12月に左肋骨と右足首のトラブルを訴えて手術を強いられた彼は、2017年東アジアカップ(E−1選手権)と天皇杯決勝を棒に振る形になった。一時は松葉杖をついて歩かざるを得ない状態に陥っていたが、そこからいち早い回復を見せ、宮崎キャンプでは実戦もこなした。
そして2カ月ぶりの公式戦となった川崎戦で2アシストを記録。「俺はこの試合に出たかったし、勝ちたかった。そのために準備してきた。キャンプではあまりよくなかったんで、このゲームはどうなるかと思ってたけど、1人1人が相手より強い気持ちを持っていた。俺たちが絶対に勝つんだという強い気持ちが、勝利につながった」と本人も力を込めた。柿谷、ヤン・ドンヒョン、山村和也と前線のパートナーも試合ごとに変わりそうだが、杉本が大黒柱なのは変わらない。だからこそ、彼には昨季以上の数字が求められる。差し当たって14日のACL初戦・済州ユナイテッド戦ではゴールがほしいところだ。
背番号6に戻った新キャプテン・山口蛍も、いきなりゴールというインパクトを残すことに成功した。それ以外のパフォーマンスを見ても、相手の攻撃の芽を摘み、ボールを次々と奪って攻めの起点になる仕事は際立っていた。
(C)Getty Images本人は前々から「前回ACLに出た4年前(2014年)はJ2に落ちたし、自分自身もケガで後半は何もできなかった。どうやってACLとJリーグを掛け持ちして、1年間戦い抜ける状態を維持するかが大事になってくる」と話していたが、チームも彼自身も当時とは全く状態が違う。自信を持って2018年に挑めるに違いない。「蛍がプレーで引っ張ってくれる分、自分たちが声を出して支えたい」と水沼も言うように、周囲のバックアップ体制も整いつつある。そうやって強固な集団を形成できれば、4年前と同じ轍を踏むようなことはないはずだ。
昨季J1王者・川崎を撃破した勢いをACLとJリーグにつなげられるのか。14日からスタートする過酷な戦いで、尹晶煥監督体制2年目のセレッソの真価が問われる。
文=元川悦子
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