■“悪魔の証明”
「ない」ことを証明するのは“悪魔の証明”と呼ばれるほど難しい。もしかすると、ジョゼ・モウリーニョの任務も同じくらい難しいのかもしれない。なぜなら「壊れていないものを直す」のだから――。
昨季のチャンピオンズリーグ(CL)で決勝に進んだチームが数カ月間で崩壊するわけがないのだ。無論、主力の去就問題でチーム内にヒビが入ったのは確かだ。そしてハイライン&ハイプレスが影を潜めた。開幕から11月まで、高い位置でのボール奪取回数は下から4番目だった。
仕掛けられると守備ラインがずるずると下がり、間延びしてプレスが掛からない。些細な意識の変化だが、昨今のプレミアリーグでは僅かな緩みが致命傷となる。だから結果が出ずに自信を失い、さらにプレスの強度が落ちる。こうして負の連鎖に陥ったのだが、決してチームは壊れてはいなかった。それでもテコ入れが必要となり、マウリシオ・ポチェッティーノに見切りをつけて、11月20日にジョゼ・モウリーニョを迎えたのだ。
■“ハネムーン期間”の終了
Getty新体制の滑り出しは上々だった。公式戦3連勝を飾り、CLの試合(オリンピアコス戦:4-2)では同点ゴールの起点となったボールボーイを新監督が抱きしめて観客を沸かせた。精彩を欠いていたデレ・アリも、12月のマンチェスター・ユナイテッド戦(1-2)での反転シュートが物語るように独創的プレーを取り戻した。
しかし、あくまで“ハネムーン期間”に過ぎなかった。監督交代の反動により一時は好転したが、基本的に何も変わっていないため調子を維持できなかった。就任会見でマンチェスター・U時代に「ミスを犯した」と猛省したモウリーニョは3バックや2トップなど試行錯誤したが、明確な形を見出せないまま、今月11日には首位のリヴァプールに0-1で惜敗し、カップ戦を含めて4試合も白星から遠ざかることになった。
ソン・フンミンの3試合出場停止に加えてケガ人の続出が指揮官を悩ませた。「クラブのパジャマで寝る」と笑った就任当初の明るいムードは消え、モウリーニョは苛立ちを見せ始めた。0-1で敗れた元旦のサウサンプトン戦では、相手のGKコーチのメモを覗き込み、暴言まで吐いてイエローカードを受けた。PKを貰えなかったプレーについては「もう審判は審判じゃない。審判と呼ばれるべきはVARだ」と揶揄した。FAカップ3回戦で2部のミドルズブラに1-1で引き分けると、「ビーチボールだ」と大会公式球を非難した。そして、MFタンギ・エンドンベレについて「常にケガをしている」と指摘し、マンチェスター・U時代のように選手批判まで始めた。
それが選手に影響を及ぼさないわけがない。ミドルズブラ戦で同点ゴールをアシストしたDFセルジュ・オーリエは、ルーカス・モウラがヘディングでネットを揺らすのを確認した後、下を向いた。全くゴールセレブレーションに加わろうとしなかったのだ……。
■ジレンマ
Getty Images夏の監督交代ならばプレシーズン中に戦術を落とし込めるが、途中就任ではそれも難しく、チーム浮上の糸口を見出せていない。では、シーズン途中で「壊れていない」チームを直すのは不可能なのか?
そんなことはない。2015年10月からリヴァプールを率いるユルゲン・クロップという成功例がある。あの時は代表ウィークの“猶予”もあり、初陣でチーム走行距離が10kmも増えた。クロップは「5㎞は無駄に走った」と、あえて過剰な変化を加えてから調整すると説いた。
それに倣うのなら、壊れていなくてもメスを入れるべきだ。そういった意味で、絶対的エースのハリー・ケインがケガで4月まで離脱することは不幸中の幸いとも言える。これで否が応でも戦術変更を強いられるからだ。
事実、敗れたリヴァプール戦は分岐点になるだろう。本職がCBのジャフェット・タンガンガ(20歳)をプレミア初起用してサイドバックに置き、SBのオーリエを中盤のサイドに入れ、深く守ってカウンターに徹した。まさにモウリーニョの真骨頂である。前半は一方的に支配されて何度もピンチを招いてしまったが、それでも後半は鋭いカウンターから決定機を作り出した。エース不在のチームでソン・フンミンやルーカス・モウラと連動して攻撃の流れを生んだのは、モウリーニョがあまり信頼していなかった選手たち。ハリー・ウィンクスや、途中投入のジオバニ・ロ・チェルソ、エリック・ラメラといったボールを失う危険のある選手だ。
過去に「ミスが少ないチームが勝つ」と持論を展開させたモウリーニョだが、自身がマンチェスター・U時代のミスを認めたように選手のミスも受け入れるなら、必ずチームは変わるだろう。若手のライアン・セセニョン(19歳)がミスに怯えることもなくなるし、17歳のFWトロイ・パロットだってチャンスを得れば“第二のケイン”に化けるかもしれない。
だが、その道を選べば数年後の成功はあっても今季のトップ4入りは絶望的だ。一方で、何も変えなければ9ポイント差の4位チェルシーには追いつけるかもしれない。そんなジレンマの中で、モウリーニョがどんな答えを出すのかは注目だ。
文=田島大
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「※」は提携サイト『 Sporting News 』の提供記事です


