Marcus Rashford Ole Gunnar Solskjaer Avram GlazerGetty/Goal

悪いのは選手か、監督か、オーナーか――。マンチェスター・U大不振の原因を検証する

プレミアリーグ第8節を終えて12位。首位のリヴァプールとの勝ち点差は「15」。すでにトップ4フィニッシュなど100万マイル彼方のことのようだ。

マンチェスター・ユナイテッドは危機に瀕していると言って間違いないだろう。

では、実際のところ責められるべきは誰なのか。エド・ウッドワードCEOによる荒涼たる移籍取引で加入した選手たちなのか、クラブの現在と未来を作るべくトップに君臨する男、グレーザー(オーナー)なのか。マンチェスター・U失敗のすべてを検証しよう。

以下に続く

(文=ピーター・スタウントン/Peter Staunton)

■選手たち

Marcus Rashford Manchester United 2019-20Getty Images

7日のプレミアリーグ第8節ニューカッスル戦、タッチライン際でアンドレアス・ペレイラからパスを受けたフレッジがコントロールミスでボールをファンブルし、外に出してしまったシーン。これを見たマンチェスター・Uのコーチング・スタッフはベンチに戻り、何やらひそひそ話を始めた。

選手たちが時折、ここ数シーズンでは見られなかった酷いプレーをしているのはまぎれもない事実だ。GKデビド・デ・ヘアは失点に直結するミスを犯し、ヴィクトル・リンデロフは簡単なヘディングシュートを外し、マーカス・ラッシュフォードはチャンスを生かすよりも逃すことの方が多い。マンチェスター・Uのプレーを見ると、選手たちのクオリティの低さばかりが目立つ。昨季まで在籍したアレクシス・サンチェスやロメル・ルカクが安定性に欠け、散々なパフォーマンスだったことはあるが、今はそれ以上に悲惨なことになっている。

新加入選手、とくにアーロン・ワン=ビサカとダニエル・ジェームズは、オールド・トラッフォードに生気をもたらしている。だがチーム全体に、長きにわたって慢性的なアンダー・パフォーマンスがはびこっているのだ。

現在ローマにローン移籍中のクリス・スモーリング、そしてフィル・ジョーンズは、おそらく生気を失いつつあるクラブの状態を最もよく示す例だろう。選手たちの間にレベル低下を容認するムードがあるように思われる。

今の彼らには、立ちはだかる壁を打ち破ろうというメンタリティがない。選手たちは支払われた報酬を数えあげることに熱中して、困難な状況に立ち向かい、何とかしてやろうという気がないのだ。

■オーレ・グンナー・スールシャール監督

Ole Gunnar Solskjaer Manchester United 2019-20

すべての責任を選手たちに押しつけるのは間違いだろう。選手たちはただ、監督が選んだシステムで全力を尽くすしかないのだから。

スールシャールが正式に指揮したプレミアリーグの16試合に、チームが機能不全に陥った数多くの証拠を見つけることができる。この16試合で、マンチェスター・Uは4勝しかしておらず、アウェイでは一度も勝てていない。この間、チーム最多得点はラッシュフォードの4ゴール。その半分はPKだ。

今夏ワン=ビサカやジェームズ、ハリー・マグワイアを加入させてチームの底上げを図ったことまではよかった。だがスールシャールは、チームを成功に導く戦術を実行するうえで信頼できる選手がいないと感じている。

中盤に余分な守備的選手を配置することが多々あり、司令塔となるべき選手がサポートに奔走しているのだ。そのポジションでリーグ一仕事のできるフアン・マタを擁してはいるが、彼には試合をコントロールする能力がない。3月28日にスールシャールが正式にクラブと契約を交わした日以降、マタのアシストは「0」だ。

今の彼らには、対戦相手にイニシアティブをとられると、前へ向かう推進力がない。チャンスを作りだすはっきりとした形を持たず、ジェームズがドリブル突破するしか勝機を作れないのだ。

各チームは万全の対策を施し、カウンターアタックを仕掛けてくる。スールシャールがさらに長く監督でいたいのであれば、解決策があることを示さなければならない。

その一方、多くの選手たちがケガで試合に出られず、チームに大きなプレッシャーがかかっているのも事実である。指揮官は、何人もの選手をあきらめて代わりの選手を使わざるをえない。マンチェスター・Uは最も重要なエリアで深刻な人手不足に陥っているのだ。

■エド・ウッドワードCEO

Ed Woodward Manchester United 2018-19Getty Images

選手たちや監督に問題があるのは間違いない。だが、マンチェスター・Uのバランスを崩壊させたのは、エド・ウッドワードCEOだ。

ウッドワードは、サー・アレックス・ファーガソン、デイヴィッド・モイーズ、ルイ・ファン・ハール、ジョゼ・モウリーニョときて、現在はスールシャールとともに仕事をしているわけだが、チームは絶望的でお手上げ状態のように見える。チームのために誰を選択するのか、きちんとした長期的ビジョンがなく、各監督が蹴り散らかした残骸がまだチームに残っているのだ。

2013年、デイヴィッド・ギルの辞任を受けて着任したウッドワードは、選手の移籍に関する自由裁量も受け継いだ。だがそれ以降、マンチェスター・Uは移籍市場において成功よりも失敗の方が多い。

ウッドワードは10億ポンド(約1380億円)近い経費を使って采配を振るっている。しかし、その中にはアンヘル・ディ・マリア、モルガン・シュナイデルラン、メンフィス・デパイ、バスティアン・シュヴァインシュタイガー、ヘンリク・ムヒタリアン、アレクシス・サンチェス、フレッジといった高額な不発弾も多い。

さらに、この間にはアンデル・エレーラという最高の契約が満了することを許し、後には何も残らなかった。サンチェスとの契約はイングランド史上最高額となり、これはラッシュフォード等、他の選手との契約更新に大きな不利益をもたらした。

選手だけではない。ウッドワードは、ファン・ハールがFAカップを制したその日に彼を解雇した。また、モウリーニョは長期契約を結んだ数カ月後に追いやっている。これだけでクラブに2000万ポンド(約28億円)の損失をもたらした。

このCEOは、スールシャールにパリでの幸運な勝利を元手に仕事を与えたが(※昨季のチャンピオンズリーグ・決勝トーナメント1回戦。セカンドレグを3-1で制し、アウェイゴール差でベスト8進出)、今やノルウェー人指揮官はもがくばかりで、ウッドワードに振り返る場所はない。

今夏の移籍市場では、マグワイアの契約を最後の最後まで長引かせた。とっくに済んでいたはずの契約だったが、結局移籍市場最終盤で言い値を支払うこととなった。

ウッドワードには一貫性あるチームを構築するという能力が欠落している。その結果、スールシャールはメイソン・グリーンウッドの可能性に賭けなければならなくなった。だが18歳のストライカーは、クラブのすべてを背負うにはあまりにも若すぎる。

ここまでの6年間で失態ばかりが目立つ47歳のCEOではあるが、その地位に居続けている。なぜなら、彼はオーナーたちのお気に入りだからだ。2005年の買収に大きく貢献しており、営業面での成績は彼らにとって申し分ない。最新の収入は6億2700ポンド(約830億円)で、クラブ史上最高額を更新した。マンチェスター・Uはウッドワードのおかげでかつてないほどの金満クラブとなり、市場価値は上昇した。だが、彼が得意なのはそれだけだ。

現在マンチェスター・Uはスポーツ・ディレクターかテクニカル・ディレクターを置こうとしているが、今のところ失敗が続いている。その間、ウッドワードはディレクターの“ふり”をした会計士であり続けている。それではうまくいくはずがない。

■グレーザー(オーナー)

Ole Gunnar Solskjaer Manchester United Joel Glazer Avram GlazerGetty

しかしながら、グレーザーがオーナーであるかぎり、ウッドワードが退任する可能性は限りなく低い。マンチェスター・Uが“レッド・デビルズ”から“法人化された落伍者”へと落ちぶれたのは、サー・アレックス・ファーガソンが株主のジョン・マグナーやJ・P・マクメイナスらと名馬ロックオブジブラルタルの所有権をめぐって対立した時に始まる。

アイルランド人のマグナーが株を現金化することに決めた時(8000万ポンドもの巨額の利益だ)、グレーザーが運転席に座ったのである。その日以来、マルコム・グレーザーと6人の子どもたちは、他の個々の株主たちとともに、高率配当を繰り返している。

グレーザーがマンチェスター・Uを多額の借り入れを伴う形で購入して以来、10億ポンド(約1380億円)以上の金が世界最大のフットボールチームから配当、報酬、コスト、利子として拠出されているのだ。

その間、マンチェスター・シティ、チェルシー、リヴァプールが急成長を遂げ、マンチェスター・Uはもはや過去のクラブとなった。ヨーロッパの最前線では、レアル・マドリー、アトレティコ・マドリー、バルセロナ、パリ・サンジェルマン、ユヴェントス、バイエルン・ミュンヘン、ボルシア・ドルトムントが完全に別次元に立っている。

ましてや、どのクラブよりも金を持つマンチェスター・Uが、合計5億ポンド(約690億円)もの負債を抱えているのである。最新のファイナンシャル・レポートには、以下のように記されている。

「(負債のため)我々は、キャッシュフローの大部分を経営ではなく負債の支払いに充てる必要があり、それによって、選手やコーチングスタッフの雇用や維持に供給するためのキャッシュフローの有効性が減少している。我々のビジネスや、フットボール界の変化に対応して対処するためのプランニングにおけるフレキシビリティには制限がかけられているのだ。選手やコーチングスタッフに関する我々の競争力に影響が出ている」

マンチェスター・Uは史上最高の収益をあげているというのに、世界最強のクラブではない。理解に苦しむ。

デ・ヘアがファンブルしようと、スールシャールの選手起用が間違っていようと、ウッドワードが移籍契約に関して再びヘマをしようと、マンチェスター・ユナイテッド全体の健康状態に、それほど大きな影響を与えるものではない。

問題はクラブのトップ、グレーザーにあるのだ。

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