両者合わせて約5億5000万ユーロ(約650億円)もの大金を投じ、夏に大型補強を敢行したアトレティコ・マドリーとレアル・マドリー。しかし、ここまではその成果が十分に発揮されたとは言い難いシーズンを送っている。互いにリーガでも取りこぼしが目立ち、バルセロナも含めて例年通りの3強の支配を感じさせることができているとは言い難い。
そんな不安定さを見せる両雄は、現地時間28日(日本時間29日4時)に今季公式戦初の“マドリード・ダービー”に挑むことになる。会場は昨季チャンピオンズリーグ(CL)決勝が行われたワンダ・メトロポリターノだ。第7節で迎えた大一番は、両チームの今後を大きく左右する一戦となる。
今回は試合に先立ち、スペイン大手紙『as』で試合分析を担当するハビ・シジェス氏に、両チームのこれまでの戦いや狙い、そして試合のポイントを解説してもらった。
文=ハビ・シジェス(Javi Silles)/スペイン紙『as』試合分析担当
翻訳=江間慎一郎
■未来への一戦
(C)Getty Images生まれる結果を越えて、今後の未来を占うような試合が存在する。自分たちの立っている場所が明らかとなり、考えを固める、または改めるような一戦が。今回のアトレティコとレアル・マドリーのダービーは、そうしたターニングポイントになることが期待される。
もう過ぎた夏が始まったあたりには、レボリューションがあるとあれだけ吹聴された両チームではあるが、蓋を開けてみればそうはならなかった。マドリーは“いつもの”面子で“いつもの”プレーをして、アトレティコは新加入選手たちを“いつもの”プレースタイルに当てはめようとしている。リーガが開幕した直後にはアトレティコが好調のように見えたが、最近は攻守の安定が取れないことを浮き彫りとなって、その幸福感が薄れつつある。その一方で、彼らの永遠のライバルも、あまり輝くしくはない途切れ途切れのクオリティーでもって首位に立った。ワンダ・メトロポリターノで行われるダービーは、彼らがそれぞれの道を見つけ出すために理想的な舞台となるだろう。
マドリーが今回のダービーで目指そうとするプレーは、間違いなくセビージャ戦(第5節、1-0)と同様のものとなる。セビージャ戦の勝利は、パリ・サンジェルマン(PSG)戦での惨敗の反動によって手にした結果だが、PSG戦のようにコレクティブなミスを連発し、個々人もまったく注意を払わない最悪なパフォーマンスはもう二度と繰り返すことができない。マドリーの今季の成否はボール保持時ではなく、被ボール保持時のプレーにかかっている。ジダンは、今後もセビージャ戦のように全選手に守備の責任を負わせ、各ラインの間隔をできるだけ狭めることを求めていくはずだ。
セビージャ戦のマドリーは規律立ち、全員が考えを共有しながらプレーし、セビージャにはたった一回しか決定機を許さなかった。もし高い位置からプレッシングを仕掛ければ、ヴァラン、そしてS・ラモスが統率する最終ラインがスペースを狭めていった。センターバック2枚がヴァランとミリトンで、最終ラインと中盤のラインの間にスペースが広がったPSG戦のような悲劇は繰り返されなかった。そのスペースでサラビア、ディ・マリア、イカルディに前を向かせて攻撃させるというのは、自殺行為に等しかったというのに……。アトレティコ戦でマドリーは、PSGではなくセビージャを相手取ったときのようなプレーを繰り返さなければならない。ベイル、アザールも含めて全員に守備意識を植え付ける必要がある。もし、またPSG戦のように守備面での連動がちはぐになるようなことがあれば、シメオネのチームを自ゴールに招待するも同然となるだろう。
■カギを握る攻防
Getty Imagesタッチライン際の両レーンは、今季アトレティコのトランジションの鍵を握っている。トリッピアーとロディは敵陣深くまで入り込み、攻撃面で大きな効果性を発揮する両サイドバックで、彼らのクロスからフィニッシュを狙う場面はもう何度も目にしてきた(2選手は1試合平均で6本のクロス送っている)。彼らの能力を生かすことは、アトレティコ全体の機能性にすでに組み込まれている。
シメオネはピッチの中央にコケ、J・フェリックス、ビトロ、さらには2トップと選手を集中させることでトリッピアー&ロディの前進を促し、そしてトーマスやサウールのフィード、サイドチェンジによって彼らに一気にボールを届ける。マドリーから見れば、アザールはトリッピアーの動きを抑えなくてはならないし、またマルセロはJ・フェリックス、ジエゴ・コスタの自分とセンターバックの間を突くような飛び出しに気を払う必要がある。アザールに関しては、セビージャ戦で対面するヘスス・ナバスの動きやラインを通すパスに気を配り続け、じつに「8回」ものボール奪取を成功させていた。おそらく心配することはないだろう。もちろん逆サイドでは、ベイルがロディの動き出しに注意し続けなければならない。
「注意が一方にあれば、不注意はもう片一方にある」。これはシメオネが自伝『信念』で語っていたことだが、マドリーは選手たちが集中するボールサイドではなく、その逆サイドの警戒も怠ることはできない。中央、または一方のサイドに選手たちを集中させるアトレティコの意識の一つには、常に逆サイドがあるのだから。
■中央を崩せるか
アトレティコ側の課題としては、ピッチ中央での崩しが挙げられる。例えばユヴェントス戦(CLグループリーグ第1節、2-2)では、中央からの攻撃を「14回」しか仕掛けなかった。今季はとにかくサイド攻撃に偏っている。マジョルカ戦(第6節、2-0)ではトーマス、コケをボール回しの起点として、サウールのサポート、J・フェリックス、ビトロの動き出しによって幾度か相手の包囲網を突破することができ、少しずつ改善されているように見受けられる。ダービーではカセミロ、クロース、ハメスの裏を取ることができれば、勝利の確率を引き上げられるはずだ。トーマス、コケ、サウール、J・フェリックスの段差をつくるような位置取りで彼らを前に引き出し(特に対人戦66%の勝率を誇るカセミロを)、マドリーをPSG戦のような混沌に陥れることができれば、それは決定機の創出とイコールとなる。
そしてアトレティコの最後の武器に挙げられるのは、リーガ優勝シーズン以降、埃をかぶって錆び付いていたセットプレーだ。彼らの直近の4ゴールは、トリッピアーとコケをプレースキッカーとするセットプレーから決まっており、ダービーでも火を吹く可能性は十分ある。
■マドリー3つの武器
Getty対してマドリーの攻撃も、アトレティコのものと同じく研ぎ澄まされてはいない。それはここまで8ゴールに絡むベンゼマの洞察眼や、サイド攻撃、トランジションを主としており、ほとんどが選手たちのクオリティーに依存する。ただ、その三つの攻撃法がアトレティコの守備プランを狂わせる可能性があることも事実だ。アトレティコはトリッピアーとロディがかなり前まで上がることを常とし、ヒメネスやサヴィッチがどうにかカバーしようと試みているものの、その後方のスペースを埋めることに苦慮している。マドリーは1試合平均で右サイドから「31回」、左サイドから「30回」攻撃を仕掛けているが、アトレティコが適切な後退守備を見せられない場合、ベンゼマがスペースのあるサイドに流れたり、ベイルやアザールがそのスペースを突いたりすることで彼らの懐に入り込めるはずだ。
ジダンはまた、セビージャ戦同様に統率の取れたハイプレッシングも活用してくるはず。ベンゼマが両センターバックを追い回し、ベイル&アザールがカルバハルとマルセロを後方に残しながら両サイドバックにつき、そして中央ではハメスとクロースがアトレティコの中盤の選手たちに前を向かせないように圧迫する。マドリーはセビージャ戦でこのプレッシングから、ベンゼマのゴール含め3回の決定機を手にした。ハメス、カルバハル、ヴァランが相手陣地でボールを奪い、素早い攻撃で一気にゴール前まで迫ったのだった。
そしてマドリー3つ目の武器が、クロス攻撃だ。彼らの1試合におけるクロスの平均本数は「18本」にのぼり、カルバハル、マルセロが深い位置まで入り込んでから送るクロスは、4-4-2を使用するシメオネのチームのどんなミスをも罰することになる。というのも、これまでのアトレティコからは考えられないことだが、今季の彼らは自陣ペナルティーエリア近くでの守備がおぼつかない。これまでの断固たる意志のもとで行われる猛獣ような守備は失われている。トリッピアーであれば逆サイドからのクロスへの対処はうまいが、対人戦に極端に弱い。今季のマドリーはベンゼマがそのフットボールIQの高い頭をがんがん振り回してゴールを量産しているが、ワンダでもゴールを決めれば、昨季から公然となりつつあるアンタッチャブルというステータスをさらに強固なものにできるだろう。
そう、今日ワンダのピッチで起こることは、シーズンの最後まで意味を持ち得る。アトレティコとマドリーの今季の見通しは、このダービーである程度の視界が確保されるはずだ。
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