1日に行われたリーガ・エスパニョーラ第26節、レアル・マドリー対バルセロナは、2-0でレアル・マドリーが制した。
スペイン2強による伝統の一戦は、伝統の一戦らしく激しい展開に。両チーム決定機を多く作り(枠内シュートは5:4)、両守護神も輝きを放つなど見ごたえのある攻防が続く。そして71分、ヴィニシウス・ジュニオールのゴールでレアル・マドリーが先制。後半アディショナルタイムには今季初出場のマリアーノが投入1分で追加点を奪い、サンティアゴ・ベルナベウは熱狂に包まれている。これでホームチームは宿敵をかわし、再びリーグテーブルの首位に立った。
そんな世界中が注目した一戦だが、勝敗を分けたポイントはどこにあったのだろうか? 今回は、スペイン大手紙『as』で試合分析を担当するハビ・ジジェス氏に分析を依頼。フットボール大国屈指の分析官に、クラシコを紐解いてもらった。
文=ハビ・シジェス(Javi Silles)/スペイン紙『as』試合分析担当
翻訳=江間慎一郎
■マドリーの信念
(C)Getty imagesチャンピオンズリーグで敗れたレアル・マドリーが、クラシコで立ち直った。今季、唯一機能していたものを、しっかりと機能させたことで。彼らはバルセロナをハイプレスによってはめ込み、クラシコ直前までのリーガ・エスパニョーラのつまずきを埋め合わせた。
マドリーを率いるジネディーヌ・ジダンはこの大一番の勝者となり、バルセロナの監督になったばかりのキケ・セティエン、さらには前指揮官エルネスト・バルベルデを解任した同クラブの幹部陣にまずい思いをさせている。バルセロナの何かが変わったとすれば、今のところ、それは悪い方向への変化にほかならない。
クラシコの勝敗は、マドリーのハイプレスを仕掛けるという信念が分けている。後半が開始してから間もないイスコの決定機から、彼らの試合への取り組み方は明らかに変化した。それまでのマドリーはというと、消極的な姿勢ばかりが目立って、バルセロナにまんまと主導権を握られている。セティエンのチームはセルヒオ・ブスケツが陰で糸を引き、アルトゥールがマドリーのラインを軽やかに飛び越えていき、さらにはアントワーヌ・グリーズマンが内と外を出たり入ったりしてと、効果性のある攻撃を見せていた。リオネル・メッシの効力こそ少なかったものの、彼らは確かに試合をコントロールしていたのだった。
対して、後退して守り続けたマドリーは、カリム・ベンゼマのポストプレーから誰かが走るか、ヴィニシウスの1対1におけるバイタリティ以外にゴールを奪う方法を持ち合わせていなかった。しかしながら、彼らはリアクションを見せるべきときに、そうして見せたのである。
■陰の主役
Getty Imagesジダンは前半の立ち上がりに少しだけ用い、そのときにはバルセロナを圧迫し切れなかったハイプレスを、後半にもう一度実行した。それは敵陣で守備ブロックをつくって、マンマークから相手の自由を奪うという非常にリスクを伴うプレスである。このハイプレスではベンゼマとヴィニシウスが両センターバック、トニ・クロースかイスコがブスケツに襲いかかったが、何よりも驚くべきはダニ・カルバハルとマルセロの“攻撃性”だ。マドリーの両サイドバックはバルセロナの陣地深くまで侵入して、彼らのサイドバックとの1対1に臨んでいたのだった。
こうした綱渡りの中で、四方八方に空くスペースを的確に埋めていたのが、カゼミロ。彼は後方で起こることにも気を配りながら、マーク漏れが生じる前方で巧みにボールを奪っていった(この試合のボール奪取数は10回を記録)。フェデ・バルベルデが右サイドに張ってジョルディ・アルバと相対するカルバハルを助けていたが、カゼミロはそれ以外のエリアで、戦術理解力に優れ、事前に危険を予測できるという長所をまざまざと見せつけた。こうしてマドリーはバルセロナを前からはめ込んで(敵陣で8回ものボール奪取に成功)、ヴィニシウスの驚異的な突破力を武器に試合の行方を決定づける先制点を奪うにまで至っている。
■なす術ないセティエン

ただし、マドリーの暴力的なまでの圧力の中で、バルセロナが何かしらの策を講じるべきだったのも、また事実だ。ピッチ上で苦しむバルセロナの選手たちに対して、ベンチから解決策がもたらされることはなかった。セティエンはマルセロの背後を突く意図でマルティン・ブライスウェイトを投入し、実際に一度はその意図通りゴールに近づきはしたものの、いずれにしてもマドリーのハイプレスを攻略する突破口など、どこにもつくろうとはしなかった。フレンキー・デ・ヨングにしても、段階的にボールを運ぶためにもう一人のインサイドハーフ(アルトゥール)よりも高いポジション取りをさせていたが、プレスをかいくぐれなければ意味などないわけである。
F・デ・ヨングのポジションはブスケッツやアルトゥールと比べて相当に高かったが、ただ待ちぼうけを食うのみ。代わりにボールをもらいに下がってきたのがリオネル・メッシだったが、マドリーのハイプレスを前に苦しむ後衛と前線をつなぐパスの中継地点にはなれなかった。そして、こうした苦境にあってもセティエンはなす術を持ち得なかったのだ。
セティエンの後方からのビルドアップは通常3人によって行われ、今回は両センターバックとブスケツ(orマルク=アンドレ・テア・シュテーゲン)が構成メンバーだった。が、マドリーの奔流するようなエネルギーによって、その3人の繋がりは遮断されている。ネルソン・セメドとJ・アルバは開きながらボールを待っていて、彼らのプレースタートに絡むことはなかった。セティエンはサイドバック(特にカイル・ウォーカー)を中に絞らせて、内側のレーンで優位性を生み出すジョゼップ・グアルディオラのビルドアップを参考にした方が良いかもしれない。バルセロナは何度もボールを失うことになり、そんなチームがすがろうとしたメッシも精彩を欠いていた。
メッシは試合を通じてメッシと認識できないレベルにあったが、それは彼個人を超えたところの問題でもある。もしメッシが創造的な中盤の選手にならなくてはいけないならば、バルサは決してバルサに立ち返ることができない。メッシを生かすことのできない今現在のバルセロナは、まるでアルゼンチン代表のようだ。
片やジダンとヴィニシウスをチームの顔として面目を保ったマドリーだが、水色と白に染まるバルセロナと同じように、チャンピオンズリーグで勝ち進んでいくことは難しいように思える。しかし、それでも再びリーガの首位に立った。この首位の座は、バルベルデがセティエンに残していった置き土産であり、現バルセロナ指揮官が二度にわたってマドリーに明け渡したものである。
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