ダービーはここまでの結果も状態も関係なく、今、この瞬間に生まれる情熱だけに依存する一戦と言われる。が、今回のレアル・マドリーとアトレティコ・デ・マドリーの対決は、彼らの現実を確かに反映していた。マドリーは豊富な手段を用いることで、数カ月前には考えらなかった安定性を手にした。今の彼らは美しきプレーを必要とすることなく、誠実かつ確かな仕事ぶりでもって生計を立てている。片や、そのお隣さんは薄い選手層、ポジショナルな攻撃の効果性のなさ、決定力不足によって立ち行かなくなり始めた。今季の彼らの肖像は、今回のダービーでしっかりと、克明に描かれたのだった。
文=ハビ・シジェス(Javi Silles)/スペイン紙『as』試合分析担当
翻訳=江間慎一郎
■マドリーの規律だった守備とキーマン
(C)Getty Images現在のマドリーは、確実な守備によって成功をつかんでいる。今の彼らにとっては守備力こそが最大の長所であり、ポジショニングが悪く、後退するときには混乱をきたす守りが脆いチームという印象はもはや毛ほどもない。ジダンは各ピースを細やかに整理することで、伝統的にチームの長所ではなく短所とされ続けた面を大きく改善した。
マドリーの守備面の改善は、ハイプレスに基礎を置いている。彼らはボールが相手にわたった際に中央のレーンを塞ぎ、コンパクトさを保ち続ける。以前はプレスを仕掛ける中盤にDFラインがついてこなかったためにモドリッチ、クロース、そしてカセミロの背後で様々な問題が生じていたが、その欠陥が解消されたのだ。ただし、今回のダービーの前半には、そうした欠陥が再び顔を出してしまった。バルベルデが右サイドに張り出させたことで、アトレティコはモラタ&ビトロがトランジションにおいてモドリッチ&クロースの後方を突くことに成功。しかしマドリーは、自陣ペナルティーエリア内での的確な守備と、決定力不足というアトレティコの望まぬ善意によって、失点せずに済んでいる。
ジダンは今季ここまで何回かそうしてきたように、ハーフタイムに修正を施した。バルベルデが中央に戻れば、やはりマドリーの顔つきは変わるのだ。DFラインからFWまでコンパクトにまとまって行われる規律立ったプレスは、アトレティコの前進を妨げるものとなった。マドリーが練ってきた戦術の鍵となっているのが、ウルグアイ人MFであることに疑いの余地はない。彼はその獰猛さ、プレーエリアの広さ、ボールの奪いどころを前もって把握できる賢さでもって、試合をこなす毎に自身の重要性を高めている。そのあふれんばかりのフィジカルは、マドリーがセカンドプレーや球際の争いで優位に立つこと、より快適にプレーできることを約束するものだ。
後半のマドリーはバルベルデ、さらにはカセミロがボール奪取の場面で活躍を見せてアトレティコ陣地で試合を進めた。もし一度プレスを突破されても、バルベルデが足の長さを生かした急追でもってボールを取り返すことができていた。対してアトレティコは1点のビハインドを負った後に、今季本格的に試みているポジショナルな攻撃が、改善どころか基準すら確立できてないことを露呈。戦線離脱者の多さがその言い訳になるのかもしれないが、しかし引いた相手をどのようにして崩すのかという指針は一向に見つかっていない。
■アトレティコの問題
Gettyアトレティコは今季、中盤の選手たちを中央に寄せて、それによって空いたサイドを両サイドバックに任せる形で相手を切り崩そうとした。が、そのやり方は道半ばで頓挫。この日のベルナベウではヴルサリコ&ロディの両サイドバックが前へ出て行くことはなく、モラタの負傷によって点を取る手段はほぼ潰え、かすかに残った可能性はトーマスの縦パスとアンヘル・コレアの一点突破のみとなった。アトレティコはポジショナルな攻撃云々はさて置いても、攻めの手段を増やさなくてはならない。今の彼らはトーマスやサウールがこれまで得意としてきたサイドチェンジを使わなくなり、高さもゴラッソもあるサウールがペナルティーエリア内に飛び込むこともない。相手の守備に動揺と亀裂を生み出す動きが、ほとんどないのだ。
もし前半のように速攻からチャンスをつくれるならば、アトレティコは相変わらず危険なチームであるものの、そうできないのならば、ただ味気ないだけである。負傷者の続出によって起用したマルコス・ジョレンテが攻撃の展開を自分自身の持ち上がりだけに頼り、それがチームとしての流動性を欠く要因になったのも確かではあるが、このダービーは選手層が薄過ぎるアトレティコが今季リーガとチャンピオンズリーグを戦い抜く可能性が低いことを指し示していた。兎にも角にも、ゴールがなければ、未来などない。
そんなアトレティコはいまだ堅守を保ち続け、攻撃では守備ほどに確固たるものがないマドリーに手を焼かせている。ジダンは中盤にバルベルデ、モドリッチ、カセミロ、クロース、イスコを配置したが、その目的は積極的に攻撃を仕掛けるのではなく、失点を防ぐことを目的にゲームをコントロールすることにあった。だがイスコのプレーへの関与が少なく攻撃が思ったよりも硬直してしまったほか、バルベルデを中央ではなくサイドに置いたことによって相手の速攻に耐え切れず、その目論見は失敗に終わっている。それでも、彼らは別の手段を講じられた。
■ジダンの修正と互いの課題
Getty Imagesジダンは自分のプランが間違いであったことに気づき、クロース&イスコを下げて代わりにルーカス・バスケス&ヴィニシウスを起用。1-4-1-4-1から1-4-3-3にシステムを変更した。L・バスケス&ヴィニシウスの両ウィングはそれぞれカルバハル&メンディの両サイドバックと24回ずつパスを交換しており、サイドの連係で攻撃の深みを取る意図が如実に表れている。サイドで2対2の状況をつくるのは創造的というよりも手堅い攻撃と形容できるものの、今季マドリーはそうした攻撃に執着することで結果を出してきたわけだ。
左ウィングのヴィニシウスは、積極的かつ大胆なプレーでチームの攻撃を牽引し、ベンゼマの決勝点の起点にもなった。中央での連係や得点も期待できるアザールが復帰するまでは、相手の守備陣に動揺を与える最たる存在であるだろう。とはいえ、たとえ彼を隠れ蓑にしたとしても、マドリーが攻撃における明確なアイデアを欠いていることは否定できず、片やアトレティコの場合は隠れ蓑さえない。
両チームの未来の行方は、堅牢さを誇る守備ではなく、どう攻撃を仕掛けていくかにかかっていると言えそうだ。
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「※」は提携サイト『 Sporting News 』の提供記事です




