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【徹底分析】バルサにあってレアルにないもの――。スペイン紙分析担当が指摘する欧州王者が失った存在

バルセロナとレアル・マドリーがによるコパ・デル・レイ“クラシコ”第2戦は、3-0でバルセロナが快勝。敵地サンティアゴ・ベルナベウを征服した。この勝利で2戦合計スコアは4-1、4連覇中の王者が決勝へと駒を進めた。

前半にはゴールが生まれなかったが、50分にルイス・スアレスが口火を切る先制弾を奪うと、その後69分にラファエル・ヴァランがオウンゴール。背番号9は73分には相手をあざ笑うかのようにパネンカでPKを沈め、チームを勝利に導いた。敵地まで詰めかけた200人のクレ(バルセロナサポーターの愛称)は、お気に入りである「クリスティアーノはどこにいる?」と高らかに歌い上げ、自チームの勝利を祝った。一方の欧州王者レアルは、これで今季のバルセロナ戦は1分2敗という結果になっている。

では今季三度目の“クラシコ”で何が起きていたのだろうか。今回は、スペイン大手紙『as』で試合分析担当を務めるハビ・シジェスに、試合の分析を依頼。世界中が注目した一戦を紐解いてもらった。

以下に続く

分析・文=ハビ・シジェス(Javi Silles)/スペイン紙『as』試合分析担当
翻訳=江間慎一郎

■スコアは試合内容をありのまま表してはいない

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バルセロナはバルセロナらしくなかった。しかし3−0という十分な結果でもって、再びレアル・マドリーの本拠地サンティアゴ・ベルナベウを征服している。

このスコアは試合内容をありのままに表しているわけではない。勝利を奪取するために精を出していたのはマドリーだったし、バルセロナは前半を主として、それを制止する側に回っていた。しかしながら後半、ウスマン・デンベレがエルネスト・バルベルデ率いるチームをはばたかせた。そのアナーキーぶりが嫌でも目につくフランス人FWだが、現在のバルセロナにとっては根本的な選手であり、その姿は大きくなるばかりである。彼は風さえ巻き起こしていそうな力強い加速力でスペースを突いていき、マドリーのDF陣を混乱に陥れた。そしてデンベレのお膳立てからL・スアレスがゴールを陥れて、マドリーはたたきのめされたのだった。

■前半、ゲームを支配していたのはマドリー

Vinicius Junior Real MadridGetty

(レアル指揮官)サンティアゴ・ソラーリはチームを上昇気流に乗せ、クラブ首脳陣やサポーターの信頼を勝ち取った方法論を継続。チームの重鎮を切り離しながら起用してきた選手たちでコンパクトな布陣を敷き、バルセロナをケイロル・ナバスが守るゴールから遠ざけていた。マドリーの最終ラインは、自陣ゴールから30メートル離れたところに設定されている。

ソラーリは自分の選手たちに対して、バルセロナのどの選手を止めるべきかを明確に指示していた。ルカ・モドリッチとトニ・クロースは、それぞれイヴァン・ラキティッチとセルヒオ・ブスケツに付いてビルドアップのパスを妨害。カセミロはリオネル・メッシに付きまとい、ルーカス・バスケスはジョルディ・アルバの動き制限するために何度もアップダウンを繰り返し、ダニ・カルバハルはデンベレに張り付いていた。マドリーはこの方策によって、前半のほぼすべての時間帯に手堅さを感じさせている。守備組織が崩れるような印象は与えていなかったし、現にバルセロナはたった1本しかシュートを放っていない。

ただしバルセロナも、おそらく必要以上に用心深かった。バルベルデが何より気を使っていたのは、いかにしてマドリーのトランジションを防ぐかであり、そのためにバルセロナがバルセロナらしさを失うことを度外視していた。マドリーがボールを保持する際には、ハイプレッシングを仕掛けることなく自陣まで後退……。しかしながら、それが功を奏していたとも言い難い。ジェラール・ピケ、ブスケツ、ラキティッチは攻撃を組み立てるパスの精度を欠き、マドリーのカウンターを許した。マドリーがカウンターを仕掛けた回数は「15回」を数え、ボールを奪取したエリアは平均して自ゴールから42.5メートル離れていた。カウンターの中心となっていたのは、もちろんヴィニシウス・ジュニオールである。18歳のブラジル人FWは、ドリブル突破でまたもその怪物ぶりを誇示し、そして、またもフィニッシュフェーズでの効果性のなさを露呈してしまった。

ヴィニシウスはDFとMFのライン間、ネルソン・セメドとピケの間、セメドとセルジ・ロベルトの間で見事な動きを見せ、マドリーのゴール奪取の希望を一身に背負った。だがしかし、彼は全能まであと一歩という選手であり、そのプレーの終わりは、プレーの始まりほど輝かしくはない。

■ボールを持っても怖さがないバルセロナ。活路を見出したデンベレ

Dani Carvajal Real Madrid Dembele BarcelonaGetty

バルセロナはたとえボールを保持しても、味のあるパフォーマンスを披露できていなかった。メッシはカセミロの背後を取った場面が一回あったが、それ以外ではペナルティーエリア内に姿を現さず。加えてデンベレはいつも足元でボールを受けたがり、1−4−2−3−1システムの右サイドハーフ、セルジ・ロベルトは攻撃面での存在感を示せなかった。言葉通り一枚岩の守備を見せて、個々のデュエルで60%の勝率を記録するマドリーが、彼らの攻撃に脅かされることはなかった――。だからこそ、完全に優勢に立ち、快適でさえあった前半にスコアを動かすべきだったのだ。

後半、バルセロナはデンベレの存在があれば十分だった。フランス人FWは足元でボールを受けるのではなくスペースを突くことで、自チームの退屈なパフォーマンスに味を、深みを加えた。前へ出るカルバハルを追うことで、彼の後ろに空いたスペースを生かせると理解したのだ。そうして生まれたのが、バルセロナの先制点である。それは至極簡単な駆け引きであると同時に、ジグソーパズルを解くものでもあった。マドリーの背番号2を引き寄せて、空いたスペースへと走り込む……。そしてL・スアレスがゴールゲッターとしての嗅覚を忘れていないことを示すように、然るべき場所にいてゴールネットを揺らした。

いわれもなく冷水を浴びせられた格好のマドリーは、再びヴィニシウスを起点としてバルセロナゴールに迫った。が、迎えた決定機はバルセロナのもう一つの柱、GKマルク=アンドレ・テア・シュテーゲンに阻まれている。その逆のゴール前では相も変わらずデンベレが躍動を見せ、ラファエル・ヴァランのオウンゴールも誘発した。バルセロナは最後に、L・スアレスが自ら奪取したPKをパネンカ(チップキック)で決めてみせ、ベルナベウを失意のどん底に突き落としている。

■バルセロナにあって、マドリーにないもの

2018_7_11_realmadrid_ronaldo(C)Getty Images

どちらも手堅い戦術を見せた今回のクラシコで、優勢にあったレアル・マドリーを罰したのはフィニッシュフェーズにおける効果的なプレーの欠如にほかならなかった。彼らのゴールチャンス「7回」のうち「6回」がまだ幼いヴィニシウスやカセミロ、セルヒオ・レギロンによって生み出されたのに対し、メッシもチーム全体も輝いていなかったバルセロナが、L・スアレス、そしてデンベレとワールドクラスの2選手によって試合を決めたというのは示唆に富んでいる。

この試合からは、今季残りにも適用可能な2つの結論を導き出せるはずだ。一つはマドリーがC・ロナウドから享受していたものが、そう簡単に手に入るものではなかったということ。また一つは、バルセロナがベルナベウから勝利を持ち帰るのに、チーム全体の良質なパフォーマンスを必要としなくなったということだ。ベルナベウのアウェー席に陣取った200人のバルセロニスタスは「クリスティアーノはどこにいる?」とマドリーを皮肉り、このチャントに色をなしたそのほかのスタンドは指笛や罵声で応戦していた。つまりは、そういうことなのである。

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