Virgil van Dijk, Sadio Mane, LiverpoolGetty

【徹底分析】データが示す“矛盾”…ペップが仕掛けた2つの策と止まらないリヴァプール

世界が注目した大一番。プレミアリーグ第12節、リヴァプール対マンチェスター・シティの首位決戦は、3-1でホームのリヴァプールが制した。

本拠地アンフィールドの大声援を背に、リヴァプールは6分にファビーニョの矢のようなミドルシュートで先制。その7分後にはアンドリュー・ロバートソンの正確無比なクロスをモハメド・サラーが頭で押し込み、リードは2点に。さらに後半開始早々、サディオ・マネが豪快なダイビングヘッドを叩き込み、勝負あり。シティは最後まであきらめず、78分にはベルナルド・シウバが1点を返したが、守備的な選手を投入して試合を終わらせにかかったリヴァプールには及ばなかった。

試合経過を見ればリヴァプールが51分までに3点をリード、結果は3-1と、両者には差があったと言える。だが、スペイン大手紙『as』で試合分析を担当するハビ・シジェス氏は、スコアは“矛盾”を孕んでいると断言する。

以下に続く

では、一体なぜシジェス氏はそう断言するのだろうか。今回は、ジョゼップ・グアルディオラがシティに授けた策、そしてリヴァプールが上回った理由を紐解いてもらった。

文=ハビ・シジェス(Javi Silles)/スペイン紙『as』試合分析担当
翻訳=江間慎一郎

■世界最高の一戦

Liverpool - Manchester CityGetty

レアル・マドリー対バルセロナというスペインのクラシックマッチ含め、注目度と戦術レベルの高さにおいて、現在のリヴァプール対マンチェスター・シティに並ぶ試合は存在しない。この試合は、まさに異なった形でプレーを解釈する2チームの衝突だ。どちらの解釈法も価値を有しており、また濃淡こそあれど共通するアイデアも存在している。

なだれのようなダイナミズムあふれるフットボールを駆使するクロップと、攻撃を練り上げることにおいて異常なまでの完璧主義者ぶりを見せつけるグアルディオラ。勝利したのはリヴァプールの方であり、結果的には首位にいる力を見せつける格好となったが、試合内容に関してはそこまで明白に、「これは強い」というパフォーマンスを披露したわけでもなかった。

四つのゲームフェーズ――攻撃の組織化、守備の組織化、守備から攻撃のトランジション、攻撃から守備のトランジション――において、両チームはそれぞれのスタイルをしっかり示していた。双方とも守備の組織化はそこまで手堅いものではなかったが、そうした中でリヴァプールがトランジションで違いを生み出している。欧州中を見渡しても、クロップ率いるリヴァプールのように“走る”チームは存在しない。一方のシティは、ポジショナルな攻撃によってGKアリソンに近付いていた。勝利がリヴァプールに傾いたのは、ゴールを奪う上での効果性と、可能な限りミスを抑えることができたためだった。

■ペップが仕掛けた2つの策

Pep Guardiola Manchester City 2019-20Getty Images

戦術的構造において相手を揺り動かそうとしたのは、クロップよりもグアルディオラだった。リヴァプールの圧迫するようなプレッシングをかわすともに、彼らのカウンターに対して保険をかける方法は注目に値する。ビルドアップの取っ掛かりでは、GKブラーボをまるで第三のセンターバックのように扱い、本物のセンターバックであるストーンズとフェルナンジーニョが横に開き、ウォーカーとアンヘリーノの両サイドバックが前へと出て行く。そしてフィルミーノの背後でボールを受けようとしたロドリとギュンドアンは、ヘンダーソンとファビーニョにチェックされることになった。これが、グアルディオラがリヴァプールのハイプレスの急先鋒となる3トップをかわす方法だった。

大きな驚きであったのは、デ・ブライネのポジショニングだ。ベルギー人MFはいつものように右インサイドハーフのレーンで後退しながらボールを受けることなく、シティがポゼッションの有効領域を前へと押し広げるためにトップ下としてプレー。このグアルディオラのやり方は功を奏し、試合を通して何度もリヴァプールの守備に綻びを生じさせている。デ・ブライネは自分をチェックするはずだったワイナルドゥムを混乱させ、さらにファビーニョが前に出るときにはすかさずそのスペースを突いていた。同様にシティは、外側のレーンも自在に扱うことができ、マネだけが奮闘していたリヴァプールを困難に陥れていた。

クロップはこうした状況を受け、ハーフタイムに守備面で修正を施す。1-4-3-3から、ヘンダーソンとマネをサイドハーフ、フィルミーノとサラーを前線の中央に据える1-4-4-1-1にシステムを変更。ギュンドアンとロドリがボールを受けることを阻害するために、前線の中央からかけるプレスに段差をつくると同時に、サイドからの攻撃の組み立ても封じようとした。だが、いずれにしてもシティがリヴァプールのハイプレスを巧みにかわし続けていたことは変わらない。ただしロドリは動きが遅く、ギュンドアンは動きが安定せず。前に残るデ・ブルイネの創造性が足りていなかったことも紛れもない事実だが……。

グアルディオラがこの試合で仕掛けたもう1つの策は、最前線のプレッシングにおいてデ・ブライネがアグエロと連動していたこと、そしてベルナルド・シウバ&スターリングの両ウィングがリヴァプールの両サイドバックであるロバートソン&アレクサンダー=アーノルドの動きを制限して、自チームの両サイドバックと1対1にならぬよう働きかけていたことだ。グアルディオラは、中央で劣勢に陥ることを恐れはしなかった。リヴァプールの両サイドバックが深みを取ることを警戒して、リスクを冒したのである。だがしかし、その策は時間の経過ともに効果を失っていく。シティは前の方でボールを奪うことができず、リヴァプールはサイドから勝利へ向かっていたのだった。

■止められないサイドアタック

Trent Alexander Arnold Liverpool Manchester City 11/10/19

リヴァプールのサイドからの侵攻は、シティにとって悩みの種となっていった。ホームチームがサイドを起点として記録した3得点は、それぞれ異なる状況から生まれている。1点目では、ハンドを求めるシティが攻撃を完遂することなく、その騒乱の中からファビーニョがネットを揺らした。手を上げながらハンドを主張していたウォーカーは、ボールを受けたロバートソンへのケアを怠り、ロバートソンはその隙にマネにロングパスを出す。そしてサイド深くまで侵入したマネが自分のポジジョンから離れたストーンズとの1対1からグラウンダーのクロスを送ると、ギュンドアンの弱気なクリアからファビーニョが強烈なミドルを突き刺した。

シティの攻撃から守備へのトランジションは、じつにみすぼらしかった。B・シウバもデ・ブライネも、中央にある広大なスペースを埋めようとはしなかった。そうして、サラーの2点目が到着する。手薄なサイドに向けて一気に舵を切れるのはリヴァプールの長所の1つだが、アレクサンダー=アーノルドがロバートソンに出したサイドチェンジのボールが完璧な形で通ったのは、B・シウバが中央に寄り過ぎていたからである。そのまま縦に直進したロバートソンは、フェルナンジーニョとアンヘリーノの間に空いたスペースに向けてクロスを送り、抜け目のないサラーがアンヘリーノに先んじて頭でネットを揺らしている。

リヴァプールは止まらない。後半の立ち上がりには、シティ全体が注意力散漫となったところを突いて、試合を決める3点目を決めた。アレクサンダー=アーノルドのスローインで、ロドリとギュンドアンはフィルミーノがボールを受けることを許してしまった。そこからパスをつないでいったリヴァプールは、ヘンダーソンがクロスを上げ、今度はマネがダイビングヘッドでブラーボを破っている。シティはまたも、センターバックとサイドバック(今回はストーンズとウォーカーだ)の間にスペースが空いていた。リヴァプールは並外れた決定力とシティの不完全な守備によって、勝負の天秤を自分たちの方に傾けたのだった。

■データが示す“矛盾”

2019-11-10 Jurgen KloppGetty Images

ただし、この試合のスコアは“矛盾”を孕んでいる。それを明かすのはデータだ。リヴァプールがシュートを12回放ち、8回のチャンスメイクを実現したのに対して、シティのシュート数は16回、チャンスメイク数は11回だった。リヴァプールはそれほど優勢だったわけではなく、最後までシティの信念に苦しめられている。

グアルディオラのチームはどれだけ点差が開こうとも、どれだけチャンスを決め切れなくても、あきらめようとはしなかった。クロップはデ・ブライネ、スターリング、アンヘリーノに攻め込まれていた右サイドを強化するためにゴメスを投入して、そこまでに手にしていた勝利のメリットを最後まで抱え込んでいる。

現在のリヴァプールが見せる激しいプレーリズムは、どんなライバルにとっても御し難いものだ。今回のシティのように、相手が両ペナルティーエリア内で解決能力を欠くならば、なおさらである。

▶【Goal.com×鹿島アントラーズ】誰でもDAZN(ダゾーン)が2ヶ月無料に!詳細はコチラ|11月30日まで

【関連記事】
DAZNを使うなら必ず知っておきたい9つのポイント
DAZN(ダゾーン)をテレビで見る方法7つを厳選!超簡単な視聴方法を紹介
DAZNの2019年用・最新取扱説明書→こちらへ  ┃ 料金体系→こちらへ  ※
【簡単!】DAZNの解約・退会・再加入(一時停止)の方法を解説  ※
【最新】Jリーグの試合日程・放送予定一覧/2019シーズン
Jリーグの無料視聴方法|知っておくと得する4つのこと
「※」は提携サイト『 Sporting News 』の提供記事です

Goal-live-scores
広告