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【徹底分析】「ウエスカにとって岡崎慎司以上の9番はいない」西紙分析官が“老獪”で“多彩”な男の重要性を紐解く

岡崎慎司。

長らく日本代表でも活躍したおなじみのストライカーは、レスターでの難しいシーズンを終え、新天地に初挑戦となるスペインのセグンダ・ディビシオン(リーガ2部)を選択した。

最初に契約したマラガでは財政難の影響を受けて出場ゼロで去ることとなったが、移籍期限ギリギリで加入したウエスカでは、すでに11試合出場3得点。第6節からは9試合連続フル出場を果たし、自身1年以上ぶりのゴールも記録した。もはやミシェル・サンチェス監督のチームで欠かせぬ存在と言えるだろう。

以下に続く

そんな33歳のベテランストライカーだが、なぜ初挑戦のスペインの地で躍動しているのだろうか。今回はスペイン大手紙『as』で試合分析担当を務めるハビ・シジェスに分析を依頼。岡崎がいかに重要であるか、そのプレーの特徴を紐解いてもらった。

文=ハビ・シジェス(Javi Silles)/スペイン紙『as』試合分析担当
翻訳=江間慎一郎

■1部復帰を義務にした男

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リーガ・エスパニョーラ2部では、どのチームであっても自分たちが昇格候補だと感じている。それはより高い順位にいるチームも、低い順位に沈んでいるチームも同じだ。そうした感じ方は過剰な重圧となって襲いかかったり、フラストレーションを生み出したりもする。

今回、ここで取り上げる岡崎慎司所属のウエスカであれば、その町の規模や浅い歴史からして、1部復帰は急いで成し遂げるべき目標にはならない。が、降格救済金もあって2部で4番目に高い予算を組むことができ、それに伴い才能ある選手たちとミチェルのようなインテリジェンスあふれる監督がいるならば、スペイン最高峰の舞台に戻ることは、やはり義務として捉えられるべきだ。そして岡崎は、ウエスカの1部復帰が義務と感じさせる最たる存在として、芝生の上に立っている。この日本人がシーズン序盤に見せたプレーは、ここまでの輝かしいキャリアを受け、ウエスカサポーターの間に生じた期待に応えるものだった。

岡崎というアタッカーは、ミチェルのプレーアイデアにおいて、まさしく理想的な存在だ。ここまでに10試合を戦い、決めたゴール数は「3」だが、その貢献度はただゴールだけで測定できるわけではない。彼の貢献はチームメートとの連係、スペースを生み出す動き、加えてボール奪取まで多岐にわたる。チームがボールを失った後、岡崎はラニエリが率いたレスターでプレーでもそうしたようにプレッシングの急先鋒となるが、その役割はミチェルにとっても絶対欠かせないものだ。岡崎という“多彩”なストライカーのすべてのレパートリーが、ポゼッション主体で緻密にプレーを構築するウエスカの哲学に合致している。

■特筆すべき“老獪”な動き

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ウエスカが使用することを常とするシステムは「1-4-3-3(守備時1-4-1-4-1)」。ただし直近のエルチェ戦(2-0)、テネリフェ戦(0-0)ではクリストを差し込むために「1-4-2-3-1」も使用するなど、柔軟な変化も見せる。ピッチに立つ選手には、足元の技術に優れたモスケラやフアン・カルロス、鋭い突破を見せるラバ、長い距離を走れるミゲロン、ルイシーニョ、ハビ・ガランといったサイドバックがおり、そして岡崎は最も高い位置からチームの攻守を支えている。

連携プレーに言及すれば、岡崎は相手MFとDFのライン間を出入りすることによって、ウエスカの攻撃の展開役となっている。彼の長所の一つは、自分を監視するセンターバックたちから離れて比較的スペースがあるエリアに顔を出すことにある。ウエスカのビルドアップの鍵を握るモスケラとミケル・リコは、そんな彼に縦パスを出すことを常としており、そのパスが入ったところからチーム全体が攻撃の深みを獲得できるのだ。縦パスを受けた岡崎の選択肢は、それこそ無数にある。サイドに流れたり、足のほか頭も使って前にボールを出したり、ボールをキープして味方の上がりを待ったり……。そこでは成功率「78%」という、ストライカーとしては極めて高いパス精度が強みとなっている。

そして、岡崎のマークを外す動きは特筆ものである。彼の相手センターバックとサイドバックの間を突く動きは、ウエスカの攻撃に深みを与える最たるプレーと言えるだろう。往年のスピードこそ失われたものの、しかしそれはベテランならではのスペースを察知する力、走り込むタイミングによって十分に補われている。彼が相手選手たちを引き連れながらサイドに流れると、ウエスカはフィニッシュフェーズでペナルティエリアにより多く選手たちをなだれ込ませていく。岡崎がサイドへと走れば、両サイドと中央の選手が、彼によって守備陣形がかき乱された相手のエリア内に侵入して、フィニッシュを狙うのである。

また岡崎のペナルティーエリア内での動きは、“老獪”そのもの。彼はいつ両センターバックの間にいるべきなのか、ニアかファーのどちらのポストへ攻めるべきか、少し引いて待つか、それともゴールエリアまで進むべきかを見事に判断できる。エルチェ戦のゴールは、練習や試合をこなす毎に連係が深まるスルーパス職人フアン・カルロスのお膳立てから決められたもので、またサイドバックやフェレイロ、ラバらサイドハーフも、サイドから攻撃を仕掛ける際には岡崎にクロスを上げることを目標としている。その理由には、もちろんチームとしての意思疎通が図られていることもあるが、何よりも岡崎のセンターバックから離れていく動きが巧みで、シュートまでこぎつける可能性が高いストライカーと信頼を寄せられているからだ。岡崎のシュート技術はじつに多彩であり、ジローナ戦ではアクロバティックなボレーシュートも決めてみせた。

■理想的な9番

2019_9_29_okazaki6(C)Mutsu KAWAMORI

先にも挙げた通り、ウエスカの基本システムは岡崎を唯一のストライカーとする「1-4-3-3」だが、ここ最近は「1-4-2-3-1」を使ってクリストを彼のそばでプレーさせることもある。ミチェルが「1-4-2-3-1」にシステムを変えるのは、主としてビハインドを背負ったときだが、岡崎とクリストの相互理解を考えれば有用な手段と言える。岡崎がボールを受けるために下がってくれば、クリストは彼の動きによって生まれるスペースを突き、また片方がサイドに流れればもう片方はペナルティーエリア内に侵入する……。テネリフェ戦の前半のように手薄となる中盤に付け入れられるリスクはあるが、二人のスペースをつくる・利用する連係プレーには目を見張るものがある。

ウエスカ内では、いまだによりクラシックなストライカーを獲得するかどうかという議論が存在している。昨季まで在籍し、今季にヘタフェでプレーするエンリク・ガジェゴのような強靭なフィジカルを有するストライカーが、やはりこのチームには必要なのではないかという議論が。

確かに、試合の展開次第ではそうしたストライカーが求められる状況も確実にあり、冬の移籍市場で獲得する可能性だって現実としてあるだろう。しかしながら岡崎は、必死に汗を流す姿とプレー理解力の高さによって、そうしたストライカー獲得の必要性に冷や水を浴びせ続けている。実際的に彼はステレオタイプの9番ではない。だが、ウエスカにとって彼以上に優れた9番など存在し得ないのだ。

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「※」は提携サイト『 Sporting News 』の提供記事です

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