日本が誇る屈指のプレイメーカー、香川真司がセグンダ・ディビシオン(リーガ2部)での挑戦を始めて、2カ月近くが経った。
レアル・サラゴサへ加入して以降、9試合のうち8試合でスタートからピッチに立ち、2ゴールを記録。その華麗なタッチやパス、巧みなポジショニングで、すでに絶対的な主軸となり、サポーターの過剰なまでの期待にピッチ上で応えている。他クラブに比べて2試合消化が少ないながらも5位と好調なチームだが、間違いなくこの30歳MFの働きが大きいだろう。憧れのスペインで、好調なスタートを切っている。
では、その香川はサラゴサにおいてなぜ絶対的な存在となっているのだろうか? 今回、スペイン大手紙『as』で試合分析官を務めるハビ・シジェス氏に、香川のプレーについて分析を依頼。日本代表MFがサラゴサというクラブにもたらした効果、チームにおいての役割、そして生じた課題について、紐解いてもらった。
文=ハビ・シジェス(Javi Silles)/スペイン紙『as』試合分析担当
翻訳=江間慎一郎
■香川が見せる「格」

レアル・サラゴサが悲劇的な状況に陥ってから、もう長い年月が経った。リーガ・エスパニョーラ1部での戦いを常としてきた彼らは、たとえ2部に落ちてもすぐに這い上がってきたが、今回はもう7年も地獄で這いずり回っている。前会長アガピト・イグレシアスの痛ましいことこの上なかったクラブ経営は、財政とスポーツの両面に大きな打撃を与えることになり、スペインのフットボールでも名門とされるクラブは消滅の危機まで陥ったのだった。
しかしながら今季に入って、この錆びついた名門クラブに新鮮な風が吹き込み始めた。昨季途中からチームを率いるビクトール・フェルナンデスの存在と、彼が主導する一環したチームづくりは良いニュースを必要とする献身的なサポーターたちの期待を高まらせる。そして、これは日本向けにおだてているわけでもなんでもないが、最も大きな希望を生じさせているのは、香川真司のプレーにほかならない。
香川の獲得は驚異的な反響を生み出したが、彼がピッチ上で見せるプレーはその反響に一切違わない。ここまでに戦った9試合で、香川はリーガ2部という舞台では「格」が違う選手であることをすでに証明している。ただし、V・フェルナンデスが言う通りにフィジカル的にはまだ完璧な状態ではなく、チームに完璧にフィットしているわけでもない。リーガ2部という見た目よりも生温くはなく、トップリーグとはまた別の性質を持つ舞台にも、もっと慣れる必要があるだろう。しかし、それでも彼の見せるプレーは、サラゴサにとって間違いなくポジティブなものだ。
■理想のポジションと決定的な役割
サラゴサの基本システムは1-4-3-1-2で、香川は中盤ダイヤモンドの頂点に位置する。彼にとって間違いなく理想的なポジションだ。V・フェルナンデスはキャリアを通じてこのシステムを嗜好してきたが、そのトップ下に入る香川はチームの攻撃を先導し、2トップ(ルイス・スアレス&ドゥワメナ )とともにペナルティーエリア内へと近づいていく。ただドゥワメナが心臓病を患っていたことが発覚し、それが今後のシステムに影響を与える可能性もあるが……。
トップ下の香川の役割は、相手のDFとMFラインの間でプレーを行うことにほかならない。彼こそが中盤までの攻撃の組み立てと、ゴール前最後の数メートルでの決定的なプレーをつなげる役割を担う存在なのだ。サラゴサのプレーは両サイドバックを抜かせば中央にかなり偏っており、香川の役割は決定的なものとなる。相手のMFの背後でボールを受ける動きを見せ、さらにはセンターバックとサイドバックの間を突く動きで相手の最終ラインの均衡を崩す……。両足を遜色なく使えることも、そうした役割をこなす上で大きな助力となっている。もちろん、サラゴサと対戦するチームの監督は、香川への警戒を怠ることなくマークをつけるようになっているが、それでも香川のスルーパス、前線とのワン・ツーや個人技での突破は驚異的だ。彼が何かしらのアクションを成功させれば、サラゴサは高く、高く跳躍する。
■極上の輝きと機能不全
(C)Mutsu KAWAMORIだが、香川自身もさらなる改善が必要であることを繰り返し強調しているように、サラゴサと彼の化学反応は完全なものとはなっていない。(第8節)レアル・オビエド戦では、香川の後方にいる中盤3枚(ロス、エグアラス、グティ)が何度もボールを失い、これを受けた香川はサイドに流れながら攻撃の組み立てに参加したが、プレーの精度を欠き続けて後半に交代となった。同様の事象は、現在リーガ2部の首位に立つカディスとの試合(第10節)でも見受けられた。オビエド戦が2-2ドロー、カディス戦が0-2での敗北となったが、香川の輝きはチームの結果に直結する。
その一方で、香川が最も輝きを放ったのは(第4節)アルコルコン戦だった。あの試合ではドゥワメナが開始早々に先制点を奪い、アルコルコンが前に出なくならなければなかったことが大きい。香川と最も素晴らしい連携を見せるのはアンカーのエグアラスだが、彼から香川に対して見事なタイミングと精度のパスが出ていたし、そしてライン間でボールを受ける日本人MFのボールタッチは、やはり2部にはふさわしくないほどに際立っていた。アルコルコン戦では、その巧みなボールの受け方からすぐに前を向いてチャンスメイクをする香川の恩恵をドゥワメナ 、ルイス・スアレスの2トップが受け、サラゴサの前線3枚がリーガ2部でも驚異的な破壊力を有していると示したのだった。
またアルコルコン戦同様に、(第5節)エストレマドゥーラ戦でも、香川の活躍は際立っていた。彼が起こしたアクション88回の内、成功したのは「68%」と当たり外れこそあったが、ゴールを決めるなど決定的な役割をこなしていた。あのゴールの場面には、チームとしてのメカニズムがしっかりと存在していた。ルイス・スアレスとドゥワメナがサイドに流れてサイドバックと連携を取ることでペナルティーエリア内にスペースを生じさせ、そこに入り込んだ香川がフィニッシュまで持ち込む。この形は、今後も見られることができるはずだ。
サラゴサと香川の最たる問題は、自陣に引きこもる相手の攻略法にある。特にカディス戦が顕著だったが、香川は行き詰まったチームの攻撃に流動性を与えることができていない。ときにはルイス・スアレス、ドゥワメナ と同じ高さまで上がることもあるが、その場合にチームは前線と中盤をつなぐパスの中継点をそのまま失っている。香川がマークする選手を引きつける動きが新たにスペースを生み出すことになれば良いのだが、現状においてチームメートたちはそうしたスペースの生かし方を理解できていない。
そうした機能不全の改善は、おそらく時間の問題なのだろう。いずれにしても香川が、サラゴサの命運を左右する存在であることは間違いない。彼が継続的に活躍できるようになるならば、サラゴサは歴史的にいるべき場所に、その熱狂的なサポーターにふさわしい場所にたどり着くことができるはずだ。
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「※」は提携サイト『 Sporting News』の提供記事です



