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得点も存在感も激減…レアル・マドリーはベンゼマと別れを告げるのか

今シーズンのレアル・マドリーは、チームを苦境から救ってくれる英雄を欲している。だがその働きが求められているFWカリム・ベンゼマの姿が、今シーズンどこにも見当たらない。

いつもチームを救うその役目はFWクリスティアーノ・ロナウドが果たしてきた。4月18日に本拠地サンティアゴ・ベルナベウで行われたUEFAチャンピオンズリーグ(CL)のバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)戦は延長戦にもつれ込んだが、この男が持ち前の決定力を遺憾なく発揮。ハットトリックで勝負を決した彼は、準々決勝2試合合計で5得点という大会タイ記録も記録している。

そして同29日、ロナウドはまたしても重要な役割を果たす。ラ・リーガの第35節、マドリーはバレンシアを首都に迎え入れた。先週のクラシコでバルセロナに敗れてしまった彼らは、優勝に向けて、絶対に勝たなければならない使命を背負っていた。

序盤は攻め込まれるシーンが目立ち、バレンシアFWサンティ・ミナが開始1分でポストを叩いた。それでも、ロナウドがベルナベウに安どと落ち着きをもたらした。DFダニ・カルバハルが右サイドで鋭く弧を描くクロスを放つ。するとロナウドはエリア左側から中央へ、DFエセキエル・ガライの前に一気に駆け込むと、トレードマークである高い打点のヘディングで先制点を奪い取った。そして「落ち着け、俺がいるぞ」と言わんばかりのお決まりのゴールパフォーマンスを披露し、いつものように観衆の視線を集めた。

これがロナウドのリーガ今季20点目となった。そして同時にこのポルトガル人ストライカーは8年連続で20得点という信じがたい記録を打ち立て、まさにフットボールの伝説となりつつある。

2月で32歳になった彼は、今シーズンはいささかスローな出だしだった。だが、ロナウドはロナウドだ。一度ゴールを決めだすと、信じられないペースでゴールを量産する。

57分にはMFルカ・モドリッチがペナルティーエリア内で倒されPKを獲得。キッカーはロナウド。これで今季21ゴール目かと思われたが、PKストップの名手GKジエゴ・アウベスに止められてしまう。アウベスはバレンシアのゴールマウスを守る間、53回のPKのうち実に26回を止めており、こちらも偉大なクラブ記録を更新中だ。

Cristiano Ronaldo Real Madrid Valencia LaLiga 29042017GettyMarcelo Real Madrid Valencia LaLiga 29042017

現在のロナウドはより効果的な動きだけを選択的に行っている。20代の頃のようにピッチ上を駆けまわることはせず、より多くの時間をペナルティーボックスの中で過ごすようになっている。実際に前半に決めたゴールはフィニッシャーとして満点の動きをしていた。

これで来シーズンの彼の役割が明確になった。そして同時に、ベンゼマのセンターフォワードとしての存在意義がさらに小さくなってしまった。フランス人FWは後半、左サイドから右足で巻くようなシュートを放つがこれは惜しくもポストを叩いた。だが、これだけでは彼に託された役目を十分に果たしたとは言えない。

ベンゼマは、今シーズンまだラ・リーガで9得点にとどまっている。これは彼がベルナベウにやってきた2009-10シーズン以来となるワーストの数字だ。

最近のベンゼマの出来では、マドリーのスタメンにふさわしいとは言えない。先月はわずか1ゴール、そして過去3か月で見てもたったの5ゴールしか決めていないのだ。MFトニ・クロースやモドリッチ、FWガレス・ベイルやMFマルコ・アセンシオといった選手がラストパスをくれる環境にあって、これはあまりにもお粗末な数字と言わざるを得ない。

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ジネディーヌ・ジダン監督は、MFイスコやFWアルバロ・モラタといった才能を擁しながら、過保護なまでに同郷であるベンゼマを重用してきた。モラタはバレンシア戦でベンゼマと交代し、18分ほどプレーしたが、彼はラ・リーガと欧州大会を合わせても、リヨン出身FWの半分程度の時間しかピッチに立てていない。

にもかかわらず、モラタはベンゼマ以上の結果を示してきた。ユヴェントスから買い戻されたこの選手は、今季ここまで出場した全試合で18得点を記録しており、マドリーで最高の得点率を誇る。そして彼の得点はどの選手よりもマドリーに勝ち点をもたらしてきた、つまり、誰よりも決勝点を決めているのだ。

出場機会に恵まれないモラタが、今夏ベルナベウを去ろうと考えても全く驚きはない。だがクラブとしては、彼の代わりにベンゼマを放出することが賢明な判断と言えるだろう。29歳のフランス人FWはピークを過ぎつつあり、クラブは今夏を逃すと適正な価格で彼を売却することは困難になるはずだからだ。

バレンシアMFダニ・パレホが82分に沈めた、弧を描く同点FK弾によって、マドリーはまたしてもクリーンシートを逃してしまった。8試合連続で失点を続けている。

タイトル獲得のためには勝利のみが求められるマドリー。窮地に陥ったチームを救ったのはDFマルセロだった。86分、攻めあがったマルセロにボールが渡ると、左サイドから鋭くカットイン。エリアぎりぎりのところで、逆足の右足から放ったシュートがネットを揺らした。ベンチに下がっていたベンゼマはシートを叩いて喜びをあらわにしたが、内心安どしていたことだろう。

マドリーがラ・リーガのタイトルを獲得できるかは彼ら自身の手にゆだねられており、実際に優勝の最右翼でもある。だが土曜日に見せた危機一髪の勝利は、追加点を決められないセンターフォワード、ベンゼマ抜きでクラブの将来を考えるべきということを物語っている。

文=カルロ・ガルガネーゼ/Carlo Garganese

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