2017-10-08-kawasaki-kengo-miyoshi(C)Getty Images

「待ってたぞ」周囲に愛され期待され続けた三好康児、結果で示した感謝の形

川崎フロンターレのもとに悲願の初タイトルをぐっと手繰り寄せたのは、今季ここまで思うような活躍を見せられていなかった三好康児であった。

「苦しんできたって感じです」

ミックスゾーンでそう吐き出す。はきはきと一際大きく話しながらも語られた今季の苦労ぶりからは、弱冠二十歳が歩いてきた道筋とは思えなかった。

一昨季、18歳にしてデビューを飾った三好。昨季も順調に出場機会を増やしたが、翻って今季は出番が減少。ケガやU-20ワールドカップ出場、充実した選手層など様々な要因が重なり、昨季までの輝きは過去のものとさえとなってしまっていた。本人もここまでの戦いは難しいものがあったことを認める。

「(難しかったのは)気持ちの部分で、ですね。普段練習の部分から(気持ちで)劣っているところもありましたし、出してくれたら『やれるのにな』と思いながらも、練習の部分でアピールできていなかったんだと思います。そこの気持ちの折り合いは難しかったです」

■目をかけ続けた先輩たち

しかし、そんな苦しい時期を支えたのは先輩たちのサポートだったという。

「終盤戦自分の存在が大事だっていうのは監督もそうですし、(小林)悠くん、(谷口)彰悟さん、(中村)憲剛さんにも言ってもらっていたので、それを信じて糧になったかと思います」

「(難しいシーズンになっていたことを)周りの先輩方も感じ取ってくださっていたみたいで、ご飯に連れていってくれたり。自分に何が足りなくて何を持っているのかっていうのを言ってくれたり、それが大きかったです。自分の考え方が変わったりっていうのがありましたね」

手厚いサポートを受け、苦しい時期を乗り越えた三好は、ルヴァンカップ準決勝第2戦という大舞台で躍動する。ベガルタ仙台を相手に第1戦を2-3 で落としていた川崎は、1戦目からわずか4日と時間を空けず、必勝を期してホームに戻ってきた。そんなチームに必要だったのは言わずもがな、勢いづけるための先取点。試合前からシュート練習で次々とネットを揺らしていた若きレフティーはその左足で等々力陸上競技場に歓喜の渦を生み出す。

29分、ペナルティーエリア右で川崎得意のパスワークから最後は中村のヒールパスに抜け出す。「難しく考えないで、感覚的に入れって感じで」と振り返るゴールシーンは、さも容易く決めたかのように見え、GKの脇を抜いた。

三好に生まれた今季初得点。ペナルティーエリア中央で出来た輪は印象的で、チームメイトたちが代わる代わる祝福した。三好の口から語られた言葉からは、いかに“先輩たち”から期待され、愛されているかを示すものであった。

「アキさん(家長昭博)にも『点取って欲しい』と言われていました。アキさんだけじゃないですけど、このチーム全員の人に期待してもらっているなって感じましたし、形で応えないとなって責任もあるので、よかったです」

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後半に入って49分にも三好は追加点をもたらす。ペナルティーエリア右角の崩しから森谷賢太郎のパスに抜け出したエウシーニョがシュートを放つ。一度はGKに防がれるが、こぼれ球を押し込んだ。

その後、退場者も出て仙台に押し込まれる展開となったが、ポジションを争うライバルでもある長谷川竜也が追加点を挙げる活躍を見せ、川崎が3-1で勝利。セレッソ大阪の待つ決勝進出を決め、悲願の初タイトルに大きく前進した。

■大きな意味を持つ三好の復活

試合後のヒーローインタビューでは、サポートし期待し続けたファンへ感謝の言葉を述べた三好。直後には中村に声をかけられ、そのときの会話を明かしている。

「なんすかね、『やっとだな』みたいな。『待ってたぞ』的な。嬉しかったです」

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記者会見で鬼木達監督も「彼は得点を取れる選手なので、みんなの期待に応えてくれたと思っています。しっかりとトレーニングを積みながらチャンスを待っていてくれた選手なので、これからもますます期待はあります」と評価する。

三好の成長がクラブ、ひいては日本代表にとってどのような意味をもたらすか、周囲の先輩たちはよくわかっている。だからこそ、難しい状況に置かれた若手を放っておかなかったのだろう。

期待され、それに結果という形で応える。技巧派MFは感謝の気持ちを胸に、成長への道を突き進む。

「やるしかないですし、出て点取るのももちろんですけど、この先プロでもっと大きくなるうえで気持ちは大切になってくる。一日一日を無駄にできない」

狙うのはもちろん初タイトル。3度決勝で敗れている川崎にとってルヴァンカップ(旧ナビスコカップ)は悲願でもある。アカデミーの選手として直近2回の決勝をスタジアムで観戦していた三好は「今の子たちの目標となれるように活躍したい」と力強く語る。その約束を果たしたとき、167センチの小柄なMFは、子供たちにとって誰よりも大きな存在となるに違いない。

取材・文=平松凌(Goal編集部)

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