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平日金曜開催は将来への“投資”…失敗を恐れず突き進むJリーグのチャレンジ

産声をあげてから25周年を迎えるJリーグの歴史上で初めてとなる、平日金曜日のナイトゲームで開幕する2018シーズンを前にして、Jリーグではサガン鳥栖とヴィッセル神戸が対峙するベストアメニティスタジアムへの来場者数をシミュレートしている。

過去のさまざまなデータなどがコンピューターに入力された結果、約1万6000人という数字が弾き出されたという。ホームの鳥栖による予測でも、ほぼ同じ観客数になっていた。そして『明治安田生命Jリーグ フライデーナイトJリーグ』と名付けられた、23日の一戦に駆けつけたファンやサポーターの数は1万9633人を数えた。

■成功に終わったベアスタでの開幕戦

昨シーズンの鳥栖の平均観客数を5400人以上も上回り、なおかつホーム開幕戦に限れば、2016シーズンの1万9762人に次ぐクラブ歴代2位にランクされた。もっとも、この時はアビスパ福岡が相手で、同じ九州ということでアウェイチームのサポーターも多かった。

以下に続く

そうした状況を差し引けば、実質的には「一番と言ってもいいかもしれません」と笑顔を浮かべたJリーグの村井満チェアマンはこんな言葉を紡いでいる。

「多くのお客様に来ていただけるのか、不安もある中のチャレンジでした。Jリーグとしてのチャレンジでしたが、クラブの協力があってこそであり、サガン鳥栖には大変感謝しています」

そもそも、なぜ『フライデーナイトJリーグ』をスタートさせたのか。ヨーロッパに目を向ければ、例えばブンデスリーガでは残り2節までは全節で金曜日開催が義務づけられている。プレミアリーグやセリエA、ラ・リーガを含めて、月曜日開催も珍しくない。

ただ、日本にはヨーロッパほどサッカー文化が根づいていない。それでも開幕戦以外で19試合が金曜日開催として指定された理由を、村井チェアマンが説明する。

「週末のJリーグに行きたくても行けない方がいるのではないか、というデータがありました。もっとライトな感じで言えば、週末は家族や恋人、友人たちとすごしたい。でも、サッカーが好きなので、平日の金曜日ならば自分の時間を自分で使えるという層がいることを、いろいろな統計やデータで分かっていました。過去の顧客層から言えば、平日開催だと入場者数が減ってしまう。かなり葛藤や悩みはありましたが、全クラブと議論を交わしているうちに、将来の新たな顧客を作るには、投資という概念でチャレンジしていく必要あるのではないか、やろうとなったわけです」

■クラブの協力なくして、実現しなかった金曜開催

そこで開幕戦である。2月20日と21日に、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)のグループリーグ第2節が行われた関係で、ACLを戦う川崎フロンターレ、鹿島アントラーズ、セレッソ大阪、柏レイソル絡みのカードを指定することはできない。

残る5カードの中から、実質的にJリーグが主導する形で指定されたのが鳥栖vs神戸だった。ベストアメニティスタジアムはJR鳥栖駅から徒歩で約5分と間近にあり、博多駅から快速に乗れば30分ほどで到着する。群を抜く利便性の良さは、20時のキックオフを可能にした。

「成功体験を積み上げたいという意味でも、私たちのほうから鳥栖さんにやってもらいたいという思いはありました。社長の竹原(稔)さんも『やります』と言っていただいた。そういう覚悟を持っている社長の方々がいることが、やはり大事な要素ですよね」

そこへ鳥栖の集客努力が加わった。気温の冷え込みに備えて、来場者全員に特製の防寒用マントを配布し、JR九州と協議して試合終了後の電車も増発させた。そして、1週間前の16日にはハーフタイムショートの概要を発表。元東方神起のメンバーで、日本でも根強い人気をもつ韓流スター、ジェジュンさんによるミニライブ開催は反響を呼び、大きなPRの一環になった。

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立ち見も出るほどのスタンドの盛況ぶりは、選手たちのモチベーションをも刺激する。サッカー専用スタジアムであるベストアメニティスタジアムは、一種独特の雰囲気を漂わせることで知られているが、それでも2018年2月23日は特別だった。

「今夜はいつもより4割増しくらいのプレーができるよね」

新加入のMF高橋秀人はキックオフを前にして、キャプテンのDF吉田豊にこう話しかけたという。鳥栖で4年目を迎えた吉田も、試合後にこんな言葉を残している。

「日本中が注目するゲーム、しかも今シーズンの1試合目ということで、僕らも神戸さんも全身全霊をかけて熱く入ってきた。土日とはちょっと違う感じがしましたよね。お互いが全力を出してぶつかり合った結果として、いいゲームができたと思います」

鳥栖のFW田川亨介は、この試合で歴史に残る2018シーズンの第1号ゴールを決めてみせた。先発したサガン鳥栖U-18から昇格して2年目の19歳は金曜日開催が決まった時から「ずっと気にしていた」と打ち明ける。

そして、開始早々に縦パスに抜け出し、ペナルティーエリア内でDF那須大亮のファウルで倒された。ボールは誰にも譲らない、とばかりに自らセットして左足を一閃。ゴール右隅に突き刺した。

「最初は(原川)力君が蹴る予定だったんですけど、蹴らしてくださいと言いました」

試合は後半に入ってFWウェリントン、MF小川慶治朗、DFティーラトンを投入した神戸が波状攻撃を仕掛け、87分にFWハーフナー・マイクが豪快な同点ゴールを叩き込んだ。下がり目の位置から攻撃を組み立て、フィニッシュにも加わった新キャプテンの元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキは、ヨーロッパではお馴染みとなっている平日開催のリーグ戦にこう言及した。

「素晴らしい試合になって、Jリーグにとってもいい宣伝になったのではないか」

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■失敗を恐れないJリーグのチャレンジ

ジェジュンさんが目当てだった女性ファンも、確かに少なくはなかった。昨今のJリーグではあまり聞かれなくなった黄色い声援も響いたが、新たな層がスタジアムへ足を運んだことが何よりも大きいと村井チェアマンは言う。

「お客様の層を見ていましたら、子どもたちも多かったんですね。ジェジュンさんを呼んだこともあって、いつものJリーグとはちょっと雰囲気が違う感じもしましたが、最後はそういう方々も興奮されていた。そういう方々に関心をもっていただけたらいいかな、と思いました。チャレンジすることが今のJリーグには必要なので、失敗を恐れることなく、いろいろなことをやってみようと。そういう機運が各クラブの中に起こり始めていることが、何よりも嬉しいですよね」

3月2日の第2節では川崎フロンターレvs湘南ベルマーレ(等々力陸上競技場)、セレッソ大阪vs北海道コンサドーレ札幌(キンチョウスタジアム)、柏レイソルvs横浜F・マリノス(三協フロンテア柏スタジアム)と、3つの『フライデーナイトJリーグ』が組まれている。

スタジアムまでの交通事情から、キックオフはそれぞれ19時、19時、19時半となっている。ゆえに各ホームチームの集客力などがより問われてくる。

「これで満足しては、また元に戻ってしまう。『フライデーナイトJリーグ』を定着させていくためには、相当頑張っていかなければいけないと思っています」

力を込めてそう語った村井チェアマン。新たなライフスタイルの提案も込めたJリーグによるチャレンジは、開幕戦の成功の余韻に浸ることも、また立ち止まることもなく続いていく。

文=藤江直人

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