青と白のチャンピオンズリーグのバナーでアンフィールドは装飾され、スピーカーからは有名なアンセムが鳴り響き、そしてリヴァプールはチャンピオンズリーグ本戦への進出を決めた。
知性と自分たちのスタイルが素晴らしく噛み合った3点目が決まったあと、ユルゲン・クロップはメインスタンドに向かって、“これがフットボールってもんだ!”と叫んだ。
ヨーロッパ最高の大会で5回の優勝を誇る彼らが居るべき場所に戻っただけでなく、このスタジアムで起こったいくつもの素晴らしい激闘に肩を並べるような出来で、自分たちが戦うべき場所へ駒を進めることとなったのだった。
Getty前半からロベルト・フィルミーノとサディオ・マネのコンビネーションは相手を幻惑し、破壊するようなプレーを見せ、ホッフェンハイムの野望を打ち砕く。開始から21 分間でそのペアは、エムレ・カンの2ゴールとモハメド・サラーの1ゴールという3つのゴールを生み出した。
ホッフェンハイムのユリアン・ナーゲルスマン監督は、アウェーのアンフィールドにおいても自分たちが引いて守ることを望まず主導権を握ろうと試みたが、その結果リヴァプール最大の長所である爆発的な前線のユニットを活性化させることになってしまった。
非常にオープンに始まった試合で、リヴァプールはカウンターから攻撃の威力を遺憾なく発揮した。開始から2分でサラーとマネに決定機が訪れ、そのうち後者はフィルミーノの最高のパスがホッフェンハイムGKオリバー・バウマンとの一対一の場面を演出し、惜しくもシュートはキーパーの足に弾かれたのであった。
Gettyその正確で、相手守備陣を切り刻むようなフィルミーノからマネへのパスはリヴァプールの先制点の場面でも繰り出された。
浮き球を胸でコントロールしたフィルミーノはスペースに走りこむマネにスルーパスを送る。そのパスを受けたマネはドリブルでペナルティーエリアに侵入。ハーヴァード・ノルトヴァイトとパヴェル・カデラベクが行く手を阻んだが、マネは後ろを回り込み駆け上がってきたカンにヒールパスを送った。
そのパスを受けたジャンはケヴィン・フォークトのプレスを物ともせず、シュートを放つとボールはゴールに吸い込まれて、リヴァプールが先制に成功する。この時点で2試合合計でのスコアを3-1とした。
フィルミーノは、アルベルト・モレーノとポジションを入れ替わったプレーでも創造性溢れるプレーを見せた。ドリブルでペナルティーエリアに侵入し、中の様子を見極めた上でジニ・ワイナルドゥムにマイナスのボールを送る。ワイナルドゥムはダイレクトのインサイドキックでゴール右隅にコントロールシュートを放ったものの、ポストに阻まれた。しかし、スピードを武器とするエジプト代表ウィンガーがこの好機を見逃さない。サラーが素早く反応し、そこまでの一連の素晴らしいプレーを無駄にすることなくゴールに冷静に流し込んだ。
さらにその143秒後には、ナーゲルスマンの夜は美しいチームワークによって打ち砕かれた。
Getty自陣まで引いた位置でボールを受けたフィルミーノは、左サイドタッチライン際のワイナルドゥムへパス。そのまま左サイドを持ち上がったところ、ベンジャミン・ヒュブナーとノルドヴァイトからのプレッシャーに遭いながらも、ワイナルドゥムはヒールキックで長い距離を走ってきたフィルミーノへ。そしてフィルミーノはファーサイドでフリーになっていたカンへクロスを送った。カンがジャンプしながらインサイドボレーでとらえたボールはゴールへ吸い込まれる。そしてアンフィールドはさながらお祭りモードへと変わっていったのだった。
しかしその7分後、リヴァプールはまだゴールに浮かれていたのか、完全に集中力を欠き、デヤン・ロブレンのクリアミスからマルク・ウートに一点を返された。ロブレンだけが悪かったのではなく、中盤も他のディフェンダーたちもただ受け身に回っていたのが原因であったことを付け加える必要もある。
ホッフェンハイムはその後も何度かチャンスをつかんだ。しかし、バイエルン・ミュンヘンから武者修行でやってきているセルジュ・ニャブリが大きなブレーキとなってしまい、リヴァプールの序盤の猛攻から生まれた点差は縮められることはなかった。
「クレイジーな試合だった」
「9-7で終わってもおかしくない試合だった。それでも、我々はグループステージ進出を決めていたことだろう」
試合後にクロップはそう振り返った。
Getty後半に入り、フィルミーノはそれまでの素晴らしいパフォーマンスが報われるゴールを奪った。63分、ジョーダン・ヘンダーソンが相手のボール回しをインターセプトしたボールをそのまま持ち上がり、ゴール前でフリーとなっていたフィルミーノへ渡し、ダイレクトで難なくゴールへ流し込んだのだった。
「彼は素晴らしかった! 信じられないパフォーマンスだった!」
この試合、知的で効果的なパフォーマンスを見せ、見るものを喜ばせた背番号9についてクロップは賛辞を贈った。
終盤、アンドレイ・クラマリッチの左サイドからのクロスをサンドロ・ヴァーグナーがヘディングで決めたが、それまでの長い時間点差が動くことはなかった。
この試合はリヴァプールにとって、CLにおける通算183試合目であり、今シーズンのラストにならずに済んだ。そして彼らにとって10度目のグループステージに向けた準備を進めることができる。

フィリペ・コウチーニョのバルセロナへの移籍問題がなかなか解決しない中、リヴァプールは焦点がヨーロッパのトップクラブの一員に舞い戻ることであると証明してみせた。
クロップがリヴァプールを率いて以来、現在はこの日のような”特別な夜”が彼らにとって当たり前のことになるかどうかの分岐点にある。
クロップとリヴァプールには、ヨーロッパ最高の舞台で戦うために十分な準備期間が設けられたが、もう一方でコウチーニョに対するバルサからのアプローチを払いのける作業は引き続きやらなければならない。
「移籍市場においては大きな影響がある。特に頻繁にチャンピオンズリーグ出場権を手に入れていれば」
クロップはそのように認めた。
Getty「試合前に話をしたのだが、我々の選手よりも良い選手を見つけるのは難しいし、選手獲得に動いていようとも20人のトップクラスの選手を各ポジションに揃えるのは簡単ではない。そして、選手たちは、”チャンピオンズリーグに出るということは、良いクラブということで、監督もそれほど悪くないだろう”、なんてことを言うものなのだ」
「選手との契約延長を望む時、選手は『チャンピオンズリーグでプレーしたい』と言う。その時私はいつも『何を言っているんだ』と思うよ。チャンピオンズリーグに出るためには、お前がやらなきゃだめだろうとね。こちら側にそれを求めるなと」
「我々はこのチームみんなでそれを成し遂げた。そのことが私はとても嬉しいんだ。14カ月のハードワークを積み重ねて、成し遂げた。素晴らしいね!」
リヴァプールのヨーロッパでの戦いはまだ始まったばかりであるが、彼らとの対戦を避けたいと思っているチームはいくつもあり、とりわけ彼らの爆発的な攻撃力は脅威である。
「グループステージ進出を決めた今、次の目標はベスト16に進むことだ」
「常に次のラウンドという目標を目指していく。多くのことを成し遂げることが我々には可能だろうが、それは私がそう思っているからではなくて、我々がそれを成し遂げるための準備が整っているからこそだ。そんな状況に居られることはとてもエキサイティングなことだね」
クロップは来るチャンピオンズリーグでの戦いを前に、そう語っている。
迎えた24日のドローでリヴァプールと対戦することが決まった“不運な”チームはスパルタク・モスクワ、セビージャ、マリボルだ。リヴァプールからすれば、比較的組み合わせには恵まれただろうか。同時にリベンジの機会も設けられた。
1年前のヨーロッパリーグ決勝で、リヴァプールはセビージャに1-3と完敗を喫した。欧州のトップクラブという地位を取り戻すため、リベンジを果たすことは最低限の目標と言えるだろう。
文=メリッサ・レディ/Melissa Reddy
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