ジャック・ウィルシャーがアーセナルでの公式戦に最後に出場したのは2015年5月15日のことだった。 この数年間は度重なる負傷に悩まされ、かつてイングランドサッカー界の中心選手として名を馳せた彼にとっては長く険しいものであった。
だが、先日ウィルシャーはホームのエミレーツスタジアムで行われたカラバオカップ3回戦、ドンカスター・ローヴァーズ戦でついに先発出場を果たした。彼にとっては493日ぶりのピッチであり、2014年に行われたサウサンプトン戦以来のフル出場である。
プロのサッカー選手には、いかなる状況であれピッチ上ではサポーターの心をつかむことができる。ハードワークはウィルシャーの大きな特徴のひとつであり、ドンカスターのフリーキックに対してウィルシャーが飛び込み、身を挺してブロックしたシーンでは、この日スタジアムに詰めかけた44,000人のファンたちを大いに沸かせた。

試合はセオ・ウォルコットのゴールを守り切りアーセナルが勝利。ウィルシャーも90分間精力的な動きを見せ、国内カップ戦で次のラウンドへの進出を決めた。
今夏、アーセン・ヴェンゲルは25歳のウィルシャーに対して移籍の許可を出したが、彼はヨーロッパ中の多くのクラブからのオファーを蹴り、アーセナルに残ることを決めた。ポジション争いに挑むことを決意したのだ。
出場機会が保証されるような他のクラブに移籍することは簡単なことだっただろう。アーセナルに残っても、今シーズンの出場機会はFAカップやカラバオ・カップのみに限られる可能性が高かった。しかしウィルシャーは自身が9歳の頃からプレーをしているアーセナルで、中盤のポジションをつかむことができると信じている。
プレミアリーグでの復活を目指して臨んだ今回の最初のステップが、自身が16歳の時にデビューを飾ったのと同じカップ戦であったのはいささか皮肉なことである。この時の試合はアーセナルが6-0でシェフィールド・ユナイテッドに勝利したが、出場した多くの若手選手の中でもウィルシャーのプレーは一際目を引くものであり、アーセナルファンを興奮させた。
そして493日ぶりに出場した今回の試合だ。彼のファイナルサードへの飛び出しや試合序盤にオリヴィエ・ジルーに送った浮き球のパスは、スタジアムに集まったファンに、自らがまだ当時のようにやれる選手であることを披露し、どれほどの器の選手であるかを思い出させるものでもあった。
Getty Imagesカラバオ・カップはリーグ戦でなかなか出番の与えられない選手にとっては絶好の機会である。その機会をウィルシャーはまさしくものにしたようで、試合後ヴェンゲルはウィルシャーに期待を寄せるようなコメントを残している。
「今日の試合はジャック(ウィルシャー)のコンディションだけではなく自信を取り戻すには理想的な試合だったね。それに彼はもう90分プレー可能な状態であることが分かったよ」
試合中にはアウェースタンドに陣取ったドンカスターサポーターが発煙筒を焚いたり、ピッチに2人の乱入者が現れるなどのハプニングもあったが、この日のウィルシャーの復活はそれ以上にファンを沸かせていた。ウィルシャーがついに戻ってきた。誰よりも彼自身が信じて待ち望んだ復活だ。
長い間ただ眺めるだけだったピッチに立っていることを、ウィルシャーは誰よりも幸せに感じているだろう。約3年ぶりとなるフル出場がまるで“計算済み”であったかのような活躍であることを見ると、今後も期待が持てそうだ。
文=クリス・ホイットリー/Chris Wheatley
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