2017-03-28-japan-kawashima©Getty Images

川島永嗣が2連戦で示した実力…苦難を乗り越え、クラブでも正守護神争いへ

「チャンスをもらったら、プレーで示していくしかない」

2試合連続で日本のゴールマウスを守った川島永嗣は、その言葉通りに自らの実力を両腕で示した。

2018 FIFAワールドカップ ロシア アジア最終予選・第7戦が28日に行われ、日本代表はホームでタイ代表と対戦した。試合は日本が4-0でタイを下し、W杯出場に向けて重要な勝ち点3を積み上げた。

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「4-0」というスコアだけを見れば完勝と表現することもできるが、実際の試合内容は決して満足いくものではなかった。「前半で2点を取った後、自分たちが少しバタバタしてしまったので、ゲームの内容自体もすごく難しくなってしまった」と川島が振り返るように、選手間の距離がはっきりせずにパスミスが散見され、タイに流れを渡しかけていた。久保裕也のミドルシュートで1点を追加した後も、川島、吉田麻也らを中心とした守備陣の踏ん張りと相手の決定力不足によって、危険な場面をしのぐ時間が続く。

83分に吉田がCKからチームの4点目を沈め、ようやく試合を締めくくったかに思われたが、直後の85分に長友佑都がPKを献上してしまう。第6戦終了時点で、日本は首位・サウジアラビアと同勝ち点ながら、得失点差で2位に甘んじていた。少しでも得失点差を稼ぎたい日本にとって、“終盤の失点”という後味の悪い結末が容易に想像できたが、日本の守護神はそれを許さなかった。

「PKになった時、スタジアム中が止めることを期待してくれたと思うし、それが自分のパワーにもなった」

対峙するキッカーは、マンチェスター・シティ(イングランド)やアルメリア(スペイン)にも在籍した、経験豊富な“タイの至宝”ティーラシン・デーンダー。川島はふっと深く息を吸ってから大きく手を広げると、甘いコースに飛んだシュートを読み切って弾き出す。スタジアムは大歓声に包まれ、川島は2度のガッツポーズとともに雄叫びを上げた。

アラブ首長国連邦(UAE)戦に続き、見事に完封勝利を引き寄せた川島は、「大きな勝ち点3だと思う。結果的にも無失点で終えたということが、自分たちが上に立っていく意味でも大切なこと」とゼロで抑えられたことに安堵する。

■正守護神争いへ

2015年6月末でスタンダール・リエージュ(ベルギー)を退団した後、同年11月にダンディー・ユナイテッド(スコットランド)へ加入するまで無所属の期間もあった。今シーズンからは新天地にメス(フランス)を選んだが、入団当初から“第3GK”という立場で迎え入れられ、この試合がクラブと代表を通じてシーズン3試合目だった。

「まだ3試合目なんで、1試合にかけるその集中力とかそういうのは、今まで以上に高めなければいけない」と強い気持ちでこの試合に臨んだ。困難な状況の中でも、常に準備を怠らずにチャンスを待ち続けた34歳のベテランは「その中でPKを止められたっていうのは、やっぱり自分自身もすごく嬉しかった」と結果を残せたことに笑みを浮かべる。

代表チームは次なる戦いを見据えつつ、それぞれの所属クラブでの競争に戻ることとなる。川島も正守護神争いに目を向け、「向こうでレギュラーを取るっていう1日1日の勝負の日々なので、今回できたからといってそういう(浮ついた)気持ちは自分の中にはないですし、それを自分のチームで表現できるようにならなければ意味がない」と改めて気を引き締めた。

「今、(メスで試合に)出ている21歳のGK(トマ・ディディヨン)はポテンシャルもありますし、もう1人のGK(ダヴィド・オベルハウザー)も、見ていてすごく上手い。ヨーロッパのGKのスタンダードは本当に高いなとすごく感じるし、若い世代からどんどんいいGKが出てくる。そういう高いレベルの中で自分を高めるっていうのは厳しいですけど、それが今の自分の力になっていると思う。今回、この2試合で実際にゲームに出て、そういう部分を実感できた」

改めて試合に出る喜びを感じたベテランは、フランスでのポジション奪取、そして日本代表での正GK争いに闘志を燃やしている。「『自分が目指しているレベルのプレー』を練習の中でも、自分が出る試合の中でも出していきたいと思う。それこそ(クラブの監督やスタッフを)納得させられるようにやっていきたい」。

数々の苦難を乗り越え、日本のゴールマウスに帰ってきた守護神は、6月の最終予選でも再び日本を救ってくれることだろう。

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