将来だけを見据える鋭い眼光…“冷静沈着”なFW久保裕也、復活のキッカケとは

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(C)Getty Images
今季開幕から出遅れたヘント久保裕也が復調をしている。“冷静沈着”な鋭いその視線の先に、見据えるものとは。

イヴ・ヴァンデルハーゲ監督率いる新体制移行後、ワースランド・ベフェレン、コルトレイク、ASオイペン相手に3戦負けなしで復調傾向にあったヘント。背番号31をつける久保裕也も、オイペン戦の開始3分に電光石火の先制弾を奪うなど、本来の得点感覚を着実に取り戻しつつある印象だ。

そんな中、迎えた10月28日のアウェー・シャルルロアSC戦。ここまで上位に食い込んでいる好調な相手に対し、前節同様トップ下に入った久保は、積極果敢にゴールを狙いに行った。開始4分にはペナルティエリア内で仕掛けて倒され、いきなりPKゲットかと思いきや、審判はノーホイッスル。疑惑の判定にヘントの選手たちはやや不穏なムードを感じたかもしれない。それでも久保は、その後も高い位置をキープし得点チャンスを伺い続けたが、徐々にシャルルロアがペースアップ。前半44分には久保がハーフウェーライン付近で相手ボランチに倒され、奪われたボールがカウンターにつながり、先制点を許す。久保は失点のキッカケになってしまった

「強いパスでセンターバックに返そうと思っていたけど、寄せられて中途半端になってしまった。あれは前に思い切り蹴っといてもよかった」と本人も反省しきりだった。

ハーフタイムに「ミスしてこのままでは終われない」と自らを奮い立たせ、挑んだ後半。久保の動きが見違えるようにイキイキしてきた。組み立てにも関与するようになり、「何が何でもゴール」という強い意志が感じられた。その流れに水を差したのが、後半18分の2失点目。これにはヘント全体が大きなダメージを受けた。

崖っぷちに立たされたヘントに光明が差したのが、後半22分の久保の一撃だった。DFのロングフィードを味方2人がヘッドでつないだところに反応した背番号31は、ペナルティエリア左隅でDFと駆け引きし、マークがズレた瞬間に右に切り返してシュートを放った。非常に厳しいコースではあったが、ボールは見事に右隅を捉え、ネットを揺らす。生粋の点取り屋らしいスーパーゴールで、今季4点目を記録した。

「もうとっさですけど、こぼれ球を拾ったところから自分で行こうと。あとはシュートの感覚。『あそこしかない』というコースにすんなり蹴れたんでよかったです」と本人も安堵感をにじませた。結局、ヘントは1-2で新監督就任後初黒星を喫したが、彼の存在感の大きさが改めて伺えた。

■新体制下での新たな役割

冬の移籍期間にヘントに加入した昨季は、17試合11ゴール(リーグ戦&プレーオフ)と大ブレイクし、瞬く間にヘント攻撃陣の中心となった久保。しかし、今季は7月3日のベルギー1部開幕戦でスタメンを逃し、今季初得点も9月17日のオーステンデ戦になるなど、予想外の苦しいスタートを強いられた。昨季3位だったチームも2部降格圏に低迷し、10月1日のクラブ・ブルージュ戦で敗れた後には、ベルギーきっての名将として知られるハイン・ヴァンハーゼルブルック監督(現アンデルレヒト)を解任。現指揮官を招聘し、立て直しを図った。

久保は当初、日本代表と同じ4-2-3-1の右FWで起用されていたが、新体制3戦目からトップ下へポジションを移動。そこから一気にゴール量産体制に入った。

「(中だと)『ボールを受けて出して』っていう繰り返しをしていく中で、自分のリズムでできる。右サイドよりボールを受けれているんで、いいかなと思います。今の監督は前(攻撃陣)に自由がある。前の監督はガチガチに役割を決めてた。もちろん結果を残せば何をやってもいいところがあったけど、残さないと型にはめられる感じだった。今はそういうのが全くない。その分、前の選手のイメージが大事になると思います」

「1対1の仕掛けも重要ですね。監督は『1枚はがせたら(状況が)変わる』って考え方だと思うんで、サイドだけじゃなくて、僕のところもそうだと思います」と久保はこの1カ月間でのチームスタイル、自身の役割の変化を冷静に受け止めている。

攻撃の自由度が増したことで、久保本来のゴール前への推進力とシュート時の落ち着きが高まっているのは間違いない。点が取れずに苦しんでいた9月の日本代表戦の際、彼は「入る時は入るし、入らない時は入らないって気持ちでやってます」と物事をあまり深く考えないように努めていた。10代の頃から好調と不調を繰り返してきたからこそ、メンタル的に浮き沈みしないことが肝心だと分かっていたのだろう。そうやって“平常心”を保ち、指揮官が変わっても自分を冷静に客観視しながらピッチに立ち続けてきた日々が、ここへきてようやく報われつつある。

「今季4点目が取れて、ここから乗っていきたいかなという感じです。今回得点したシーンみたいにゴリゴリ行けばチャンスがあるんで、それを増やしていけば、結果的にチームも勝つことになる。そういうふうにやっていかないといけないと思います」と1つの敗戦にくよくよせず、前だけを向いていくつもりだ。

■先を見据える鋭い眼光

昨季はベルギー1部で唯一の日本人選手だったが、今季はワースランド・ベフェレンに森岡亮太が加入。2つ年上のファンタジスタは、開幕からゴールとアシストを記録し続け、圧倒的な実績を残している。森岡は10月25日のコルトレイク戦でも決勝弾を叩き出し、今季6点目をマーク。アシストも8とリーグランキング2位につけている。久保もその活躍に大きな刺激を受けているという。

「彼は最初から絶好調なんで、自分も結果でも追いつけるように、ここから巻き返したいと思います。頑張ります」

こうキッパリ言って、シャルルロアのスタジアムを後にした久保。その眼光の鋭さは今後のブレイクを予感させるものがあった。

10月31日には11月の欧州遠征(10日=ブラジル戦、14日=ベルギー戦)の日本代表メンバーも発表される。久保が引き続き、リストに名を連ねるのはほぼ確実だろう。代表でも3月の2018年ロシアワールドカップ最終予選・タイ戦(埼玉)以来、ゴールから遠ざかっているだけに、早く明確な結果がほしいところだ。それがブラジル、ベルギーといった世界トップの強豪相手に叶えば理想的である。リオデジャネイロ五輪世代の代表格と言えるゴールハンターには、しばらく直面している壁を今度こそ破ってほしい。

取材/文=元川悦子

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