宇賀神友弥を導いた“永遠の反骨心”とは?プロ8年目の苦労人が日本代表に登りつめるまで

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2017-05-26-urawa-ugajin(C) Getty Images for DAZN
エリートコースを歩んできたわけではない。回り道もした。だが、宇賀神友弥は今、日本代表のメンバーに名を連ねるほどの選手になった。彼はいかにしてはい上がり、母国の代表にまで登りつめたのか? その過程を、紐解いていこう。

2017シーズン、浦和レッズの宇賀神友弥はキャプテンの阿部勇樹を支える副キャプテンを任され、常に先発のピッチに立っている。今の立場を得るまでには紆余曲折があった。幾多の困難に見舞われ、挫折しながら、それでも這い上がり存在を誇示した証がここにある。

埼玉県内で『サッカー不毛』と言われた戸田市で生を受け、地元サッカークラブの戸田南FCを経て浦和レッズジュニアユース、ユースへと昇格した。だが、ここで宇賀神は一旦プロへの道を閉ざされる。サッカーをプレーし続ける思いは尽きずに名門・流通経済大学の門を叩いた彼に待ち受けていたのは、4年生から1年生まで学年毎に各50人計200人を擁するチームの中で底辺に位置する4軍からのスタートだった。流経大から後にJリーガーとなる選手は1年生時から2軍、もしくは飛び級で1軍に入ってプレーするのが常だったが、宇賀神は2年生時に3軍、2年生時途中に2軍へと昇格し、念願のトップチームに加われたのは最上級生になってからだった。

努力の末に掴んだ成果は馴染みのあるプロサッカークラブが拾い上げた。2009シーズン、フォルカー・フィンケ監督率いる浦和レッズが流経大4年の宇賀神を強化指定選手として招き、そこで指揮官からプロ入りの打診を受けたのだった。かつて夢への道を閉ざされたクラブからのオファーに逡巡した彼は、他クラブからの獲得打診も精査した上で再びのチャレンジを決めた。それは2009年冬のことである。

プロ入り後の宇賀神は、これまでの人生と同様に山と谷の稜線を行き来した。プロ初年度の2010シーズンはフィンケ監督の下でリーグ戦26試合2得点の成績を残したが、2011シーズンのゼリコ・ペトロヴィッチ監督体制ではリーグ戦14試合0得点に留まった。しかし翌年、宇賀神はミハイロ・ペトロヴィッチ監督との運命の出会いを果たす。

ペトロヴィッチ監督は宇賀神に3−4−2−1の左サイドアタッカーのポジションを与えて彼に全幅の信頼を置いた。指揮官の意を汲んだ彼は現体制の特長でもある全方位からのアタックを具現化させるために、左ストッパーの槙野智章と縦のラインを築いて役割を全うする。

『サイドを如何に崩すか』。そのノウハウを熟知する宇賀神は自らの能力をチーム戦術にアダプトさせる努力を怠らなかった。チームコンセプトに則した素早い判断とアクションは相手の脅威となり、相乗効果で自らの個人突破にも斬れ味を増した。『3メートルの加速』は他の追随を許さず、右足インサイドで前へボールを押し出して相手マーカーを引き剥がす縦突破は猛威を振るった。宇賀神と対峙した相手が「やめてくれ!」と叫んだ瞬間に利き足ではない左足からクロスが上がり、それを味方選手が鮮やかにフィニッシュへと繋げた。

宇賀神の内面を支えるのは永遠の反骨心だ。自らを叩き上げと認識する者は慢心を生まない。レギュラー確約と称されても、いつかは危機を迎えると認識して精進を続ける。2014シーズンに浦和ユースの関根貴大がトップチームに昇格してプロデビュー戦で果敢な縦突破を繰り返した際には「素直に、『アイツ、スゲーな』と思った」。その瞬間、彼の心にメラメラと炎がたぎり、更なる覚悟で自らの価値を内外に示した。それは常に支え合う存在でもあるサポーターに対しても同様だ。不甲斐ないゲーム後にブーイングを浴びた時、宇賀神は過去ではなく未来へ目を向け、次のゲームで結果を残して『どうだ!』と自己顕示した。感情のぶつけ合いは彼自身が常に敢然と、真摯に戦い続けてきた証でもある。あえて正念場に身を置き、そのプレッシャーを跳ね除けた先にさらなる成長がある。宇賀神はそうやって一歩ずつ確実に前へ進んできた。

ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は6月7日の国際親善試合・シリア戦と6月13日のロシアワールドカップ・アジア最終予選・イラク戦に向けた日本代表メンバーを発表し、GK中村航輔(柏レイソル)、DF三浦弦太(ガンバ大阪)、MF加藤恒平(ベロエ・スタラ・ザゴラ/ブルガリア)と共に宇賀神を代表へ初招集した。

「長い間ずっと追跡していた選手だ。彼の監督とも話をした。4バックの左として考えている。右もできると思う。右利きだが、3バックの際は右センターバックもやっていた。過去にも、このポジションはいろいろな選手を呼んでトライしたが、今度は彼の番だ。29歳、すごく若いというわけでもないが、経験がある。この合宿でどのような活躍を見せるか、様子を見てみたい」

プロ8年目。29歳にして初代表選出。緩やかに成果を得る過程はこれまでの彼の生き様を示す。まだセレクションの入り口に立ったに過ぎないが、この境遇には慣れている。

「1秒でもいいから試合に出たい。少しでもいいので、日本を背負って戦うことを体験したい」

物怖じなんてしない。一瞬でもピッチに立つ機会を与えられれば、宇賀神友弥は必ずチャンスを生かす。

文=島崎英純

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