2017-09-14-shinji-kagawa(C)Getty Images

大舞台で見せた“5年前の姿”…ドルトムント香川真司が意識した「自分らしさ」

13日に行われたトッテナムとのCLグループリーグ初戦で、ドルトムントの香川真司が今シーズン公式戦で初先発を果たした。6月7日に行われた日本対シリアの親善試合で左肩を脱臼して以来、約3カ月ぶりの先発。4分にドルトムントの同点弾をアシストすると、66分に交代でピッチから退いた。

■「サッカーの聖地」で披露した最大の長所

ドルトムントは昨シーズン限りでトーマス・トゥヘル監督と決別し、新たにピーター・ボス監督を迎えた。そんな仕切り直しのシーズンに、香川は左肩の脱臼で出遅れてしまう。

コンデションが整っていないこともあり、リーグ戦3節まではベンチスタート。攻撃的MFには、マリオ・ゲッツェとゴンサロ・カストロの2人が入った。香川が「中盤を含めて良い選手が多い」とドルトムントについて語るように、ポジション争いは厳しさを増している。まずは香川も、定位置を奪い返すところから始めなければならない。

こうして迎えたCLで、香川に先発の機会が与えられた。サッカーの聖地「ウェンブリー・スタジアム」で行われた試合で4−2−3−1のトップ下の位置に入ると、立ち上がりから精力的に動き回った。

特に目を引いたのが、トッテナムの「MFの背後」と「DFの前方」にできる”ポケット”に入ってパスを呼び込む動き。バイタルエリアに顔を出しつつ、さらに前方にスペースを見つけるとペナルティエリアに侵入した。前半に67%のポゼッションを記録したドルトムントのポゼッションサッカーの中で、フリースペースに入り込んでチャンスを生み出そうとした。

そんな積極的な姿勢が実を結んだのが、4分の同点ゴールのシーンだ。敵の3バックシステムの隙間に入ると、スコアラーのヤルモレンコにボールを落として同点ゴールをアシストした。香川は言う。

「自分の対角線上にスペースが空いていて、アンドレ(ヤルモレンコ)も(パスの出し手として)そこを見ていた。そこにボールが入れば、ワンツーなどでチャンスになるかと。狙い通りでした」

首を左右に振りながら周囲の状況を確認し、サイドステップを踏みながら危険なエリアを動き回る。フリーになれば、両手を拡げてパスを要求。そして、マーカーのいないエリアを見つけると素早く入り込んだ。もちろん、先発復帰の初戦であっただけに、後半に入ると運動量とキレは落ちたが、その動きは当時ブンデスリーガの覇権を握っていたチームで見せていた、5年前の姿に通じるものがあった。

■激しい定位置争いの中で意識する“自分らしさ”

「どこで自分の評価を高められるかと言ったら、(ゴールに近い)より前のポジションだと思う。こういうタイプの選手はなかなかいないと思っているし、それを生かしていきたい。必ずやれるという自信があります」

ポジションを争うゲッツェにはゲッツェの良さがあり、カストロやマフムド・ダフードにもそれぞれの持ち味がある。それなら、香川のストロングポイントは何か。「自分のようなタイプの選手はなかなかいない」と捉えているように、狭い局面で縦パスを引き出す動きや、短い距離感の中で周囲と連携して崩す上手さは、ドルトムントでも群を抜いている。こうした自身の長所を戦術のなかに落とし込んでいけば、チームの攻撃もいっそう活きてくると、香川は考えているのだ。

「今日も(自分はバイタルエリア周辺に)入っていきましたけど、もっと入って行ってもいい。そこに自分が入らないと、クリスチャン(プリシッチ)やアンドレ(ヤルモレンコ)といったサイドの選手も生きてこない。そうしないと、相手も怖くないでしょうから。そこの限られたスペースの中で、自分がどれだけパスを呼び込み、受けられるか。今後は、もっともっと精度を上げていきたい」

中盤からスルーパスで2度好機を演出したが、やはり香川の怖さは「パスの出し手」よりも、「受け手」にまわったときの方が倍増する。ポケットに侵入し、一瞬のアジリティを生かして敵のマークを外す。そして、冷静なフィニッシュでネットを揺らす──。そこに、彼の怖さが凝縮されているといっても過言ではない。

「『バイタルの中でボール受けられたか?』というところでは、もう少し自分のところにパスが欲しかった。あそこでボールが入れば、より決定的なチャンスが生まれていた。僕自身、体力面も上げていかないといけない。もっと重要な存在になるために、(自分の価値を)ピッチで証明していきたい」

香川も気がつけば28歳。選手として最も脂の乗る年齢になった。そして、シーズン終了後にはロシアW杯が控えている。

香川が強く意識する「自分らしさ」。ドルトムントの23番は今シーズン、はたしてどんな活躍を見せてくれるだろうか。

取材・文 田嶋コウスケ

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