大胆変更のないメンバーから見える森保監督の意図。焦点のひとつは大迫の代役・鎌田だ

　Jリーグで気を吐く選手やU-22年代からの抜擢はなし。日本サッカー協会（JFA）は3日、10月に行われるカタール・ワールドカップ（W杯）アジア2次予選の2試合に臨む日本代表メンバー23人を発表した。このメンバーから見えてくる森保一監督の意図を、スポーツライター飯尾篤史氏はこう見る。

■今は予選突破が先決

(C)Goal

　鈴木武蔵と負傷中の大迫勇也に代えて鎌田大地と浅野拓磨を呼んだだけ。国内組からの抜擢もなければ、U-22日本代表からの昇格もなく、パラグアイ、ミャンマーと戦った９月シリーズからのメンバー変更は、最小限に留められた。

　ヴィッセル神戸のＦＷ古橋亨梧や鹿島アントラーズのＭＦ白崎凌兵など、国内にも選んだら面白いと思える選手はいるが、まずは現状のベストメンバーを招集し、カタール・ワールドカップ・アジア２次予選を突破することが先決――。森保一監督はそう考えているのだろう。

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　このあたりの慎重さは、アジア最終予選の初戦で大島僚太をいきなり代表デビューさせたヴァイッド・ハリルホジッチ元監督の大胆さと大きく異なるところ。２次予選の突破が決まる来年３月や６月に、U-22日本代表からの昇格も含め、おそらくメンバーの入れ替え、テストがあるはずだ。

　モンゴル、タジキスタンと戦う10月シリーズの焦点のひとつが、大迫の不在にあるのは間違いない。

　大迫が不在の際に、どう戦うか――。

　今年１月のアジアカップで突きつけられたこのテーマは、ここまで明確な解答を見いだせていない。

　森保監督は今回、スピードが魅力の永井謙佑と浅野、フランクフルトでトップ下を務める鎌田の３人をＦＷとして招集した。一見、ファーストストライカーの大迫とは異なるタイプばかりのようだが、実際のところは、どうなのか。

■大迫と鎌田の共通点

(C)Getty Images

　４−２−３−１を基本布陣とする日本代表において、１トップを務める大迫への縦パスは、いわば攻撃のスイッチだ。大迫のポストプレーを合図に、中島翔哉、南野拓実、堂安律といった２列目の選手たちとの連動・連係した攻撃が繰り出される。

　とはいえ、大迫が最前線で相手ＤＦと常にバトルを繰り広げているかと言えば、そんなことはない。相手のボランチの脇にスルスルっと降りてきては、ボールを収めてパスをさばく。このとき、トップ下の南野のほうが大迫よりも前にいることが多い。

　つまり、大迫が日本代表でこなしている役割は、ゼロトップ。まるでトップ下のような役割を演じているというわけだ。

　こうしたタスクを担える選手が、今回のメンバーの中にいる。今季、フランクフルトでここまで全試合に出場している鎌田だ。「トップ下か、インサイドハーフが適正」と本人が語っているように、最も得意とするのは２列目だが、昨季はベルギーのシント＝トロイデンでセカンドトップを務め、リーグ戦12ゴールをマークした。そして何より柔らかいトラップでボールを収め、周りを輝かせることができる。

　そうした資質の片鱗を覗かせたのが、３月のキリンチャレンジカップ・ボリビア戦だった。この試合で初めて１トップを務めた鎌田は、「最初は難しかったですけど、徐々にボールに触れるようになって、良い受け方を見つけられたり、うまく収めることができた」と手応えをつかんだようだった。

　鎌田が代表に招集されるのは、このとき以来のことになる。ハマれば大迫のように、２列目を最大限に生かしながら自らも輝くゼロトップになれるはずだ。

■永井、浅野の役割はスピードだけではない

(C)Getty Images

　ただし、モンゴル、タジキスタンともに自陣に引いて守ってくることが予想される。相手陣内でスペースを見いだすのは、簡単なことではないだろう。そこで気になるのは、鎌田よりも、永井と浅野だ。相手のディフェンスラインの裏にスペースがないのに、なぜ、スピードが武器の浅野と永井が呼ばれたのか。

「浅野とは広島時代から特長は分かっているし、永井も６月に一緒に戦うことができた。起点となるプレーもこれまで見せてくれている。今回も自分たちの良さを発揮しながら、チームのひとりとして力を発揮してくれると思っている」

　こうした指揮官の言葉を聞くと、単に彼らのスピードを期待しているわけではないことが伝わってくる。ゴール前を固める相手の守備を賢く、こじ開けられるかどうか。その際にFW陣に託される役割にも注目したい。そこに、10月シリーズのテーマのひとつが隠されているはずだ。

文＝飯尾篤史

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