■許されぬ恋
ひと夏の恋――。岡崎慎司がマラガで過ごしたこの1カ月半のことは、そう呼ぶしかないだろう。
マラガという町、そこにあるクラブ、そしてそのサポーターは、確かに恋に落ちていた。岡崎だって、きっと恋心を抱いてくれていた。だが、それは夏限定の、許されぬ恋になってしまった。高まる気持ちから火照った体は、いまだに熱を帯びている。それでも、私たちは別れなければならなかった。やるせなさは募る。が、それでも顔を上げて感謝の気持ちとともに、笑顔で手を振らなければならない。
岡崎は最後まで希望を捨てなかったし、最後まで私たちと一緒にいようとしてくれた。彼はリーガのサラリーキャップ制の条件を満たせないマラガが自分の選手登録を完了できるよう、その年俸をリーガ・エスパニョーラ2部最低額の8万ユーロ(約940万円)まで引き下げる意思すら示したのだから。しかし9月2日00時1分、マラガはこの日本人との契約を解消することを発表し、何万人もの心を引きちぎったのだった。クラブの歴史にさらなる泥を塗る、恥ずべき、悲しむべき出来事が起こったこの夜を、マラガの人々は決して忘れはしない。無論、「自分は何も後悔はしていない」と語った岡崎の優しさだって……。
■叶わぬ夢
岡崎はマラガの歴史において、実戦でユニフォームを着なかったにもかかわらず、愛情を注ぎ込まれた選手として記憶されることになる。その好感の持てる振る舞いや満面の笑みは、カリスマ的なリーダーを求めていた人々の心を鷲掴みにした。彼は私たちが日本人に抱く印象の通り、とても模範的な人物だったし、苛立ったり自暴自棄になったりする様子を一切見せなかった。彼は最後の最後まで、私たちが恋した男のままだった。
もちろん、どれだけクソったれな状況でも、愚かにも夢を見ようとし続けてしまう私たちだって分かってはいた。彼がここにやって来た理由が、マラガというクラブでプレーしたいというよりも、憧れの地スペインでフットボールの真剣勝負に臨むためであったことは。岡崎の心の中は、やはり穏やかではなかったろう。だからこそ私たちの心は、ビリビリと耳障りな音とともに張り裂けるのだ。本当に、耳障りに。
「我らがマラガで君はピチーチ(得点王)になるのさ、オカ、オカ、オカ、オカザーキ!」
マラガの選手でデビューすることなくチャントが作られた選手など、これまで聞いたことがない。しかし、岡崎はそれをやってのけてしまった。有名ツイッタラーのフランシス・ルンバがつくり上げたこの耳に馴染むチャントは、SNS上で一気に拡散し、皆が本拠地ラ・ロサレダで歌うことを心待ちにしていた。しかし、もはや岡崎がマラガの選手としてそのチャントを聞くことはない。
■真実の愛

私たちはただただ、まるで鬼畜のようにクラブを弄ぶオーナーのアブドゥラ・アル=タニを憎むしかないのだ。強化部門の無軌道さを恨むしかないのだ。今夏のマラガの失態は、フットボール史においても前例がない。サラリーキャップ制を守れないマラガは、岡崎のほかホセ・ロドリゲス、ムラ、イバン・ロドリゲス、シモン・モレノも手放さなくてはいけなかった。予算の負担を減らしてからアル=タニが獲得を強要したのが、欧州でのプレー経験がないアルジェリア出身モハメド・ビンハミーサであるというのも、私たちのため息を誘う。マラギスモ(マラガ主義)は今、かつてないほどに傷ついている。私といえば、移籍市場が閉鎖した翌日、起こってしまったことへの憤りを抑え切れずに『ラディオ・マルカ』でこうぶちまけたのだった。
「マラガを追い続けている記者として、この仕事に就くずっと前からマラガに情熱を傾ける一ファンとして言わせてもらう。何という悲劇が起こってしまったんだ。この恥ずべき状況にもう耐える必要はない。沈黙は何の役にも立たない。私たちはもう、声を上げるべきなんだよ。クラブの内部が持ち得ないマラガへの愛情を、今こそぶつけなくては、闘わなくてはならない。昨日みたいに眠れない夜は、もうたくさんだ!」
10年にわたってリーガ1部に所属し、チャンピオンズリーグにさえ出場したマラガはこの夏、ついにどん底まで落ちてしまった。岡崎を陥穽にはめた形になってしまったことは、本当に心苦しく思う。
ただ日本の皆さんには、たとえ岡崎にとっては脱出すべき場所だったとしても、私たちが苦しみながら闘っていることを、それでもマラガというクラブを町の誇りとしていることを覚えておいてほしい。そして何より、本当に岡崎を愛そうとしていたことも。
ひと夏の恋になってしまったとはいえ、私たちは日本人FWのことを忘れない。ウエスカの選手となった岡崎がラ・ロサレダに帰って来るとき、私たちは「オカ、オカ、オカ、オカザーキ!」と声を張り上げるだろう。そしてきっと、彼が電光掲示板の左ではなく右のスコアを動かしたときにも、そのチャントは繰り返されることになるだろう。
岡崎慎司は、私たちが好きになった人なのだから。
文=フアンへ・フェルナンデス・ルエダ(Juanje Fernandez Rueda)/スペイン『マルカ』マラガ番
翻訳・構成=江間慎一郎
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「※」は提携サイト『 Sporting News』の提供記事です





