Maya Yoshida of Japan.jpg(C)Getty Images

吉田麻也、日本代表の仲間が認める存在感とは?活躍の背景にあるもの/コラム

3月23日に行われた2018 FIFAワールドカップ ロシア アジア最終予選・アラブ首長国連邦(UAE)代表戦で、欠場した長谷部誠に代わりキャプテンマークを巻き、最終ラインで強い存在感を示した吉田麻也。プレミアリーグでの奮闘とレギュラーとして出場し続けることで得た確かな自信は、日本代表でのパフォーマンスにも結び付いているようだ。

2月26日に行われたリーグカップ決勝で、吉田は12年のロンドン五輪から4年半ぶりにフットボールの“聖地”ウェンブリー・スタジアムに立った。惜しくも優勝は逃したものの、出場機会に恵まれない時期やサイドバックで継続的に起用されるなど、厳しい時期を乗り越え、センターバックの主力に定着した象徴的な出来事となった。

そこからプレミアリーグの2試合にもスタメンでフル出場し、結果は1勝1敗。そこで喫した5失点のうち味方のミスや対応の甘さが要因のものもあるが、吉田の対応次第では防げた失点があった。ただ、それらも継続的に試合に出ているからこその経験であり、吉田という選手はそうした苦い経験も糧にしていける選手だ。

実際にUAE代表戦でのパフォーマンスは特筆に値するもので、インサイドハーフで奮闘した今野泰幸と1得点1アシストを記録した久保裕也が表のMOMならば、吉田はGKの川島永嗣とともに、背後から無失点の勝利を支えた“影のMOM”と言える。来る28日のタイ代表戦でも引き続き安定した守備で日本の勝利を支えることができるか。30日間を振り返り、さらなる活躍のために課題を展望する。

▽3月4日(土)プレミアリーグ ワトフォード戦

試合結果:4-3(勝ち)
90分(フル出場)
評価:6.5

昨年の夏にホームで引き分けた相手で、その試合は吉田もフル出場していた。ワトフォードはシンプルにステファノ・オカカや元ミランのエムバイェ・ニアンといったパワフルなFWを生かすスタイルで、今回の試合も吉田は常にタフな対人戦を強いられた。3失点のうち最初の失点は、吉田が競ったこぼれ球をペナルティエリア内で粘り強くつながれた形からだった。

2失点目は23歳の相棒ジャック・スティーブンスの対応が甘く、吉田は直接絡まなかったが、3失点目はクロスをニアで競ったDFミゲル・ブリトスにすらされ、裏の選手に押し込まれたものだ。吉田自身もTwitterで「ワトフォードフォワード強すぎ」とつぶやくほどゴール前の“デュエル”がオンパレードだった試合。チームとして3失点は多いが、直接の守備機会が普段よりも多い中で耐えて、勝利につなげた部分は評価できる。

▽3月19日(日)プレミアリーグ トッテナム戦

試合結果:1-2(負け)
90分(フル出場)
評価:5.0

クリスティアン・エリクセンを中心とした速い攻撃でラインを崩され1失点目。さらに吉田のクリアが中途半端になったところから味方のファウルにつながり、PKでトッテナムの2点目を献上した。また韓国代表FWのソン・フンミンに飛び出しで裏を取られるシーンもあった。

相手FWのパワーに苦しんだワトフォード戦と打って変わり、技術とスピードを駆使した速攻にディフェンスラインが後手を踏み、その流れに吉田も飲まれた部分があった。90分の中では粘り強い対応もあり、吉田個人のパフォーマンスが全て悪かったわけではない。むしろ彼がいなければ2失点では済まなかったかもしれないが、トッテナムのように中盤でプレスが利きにくく、速い仕掛けで崩しにくる相手に対し、守備の統率役としてのさらなる向上が問われる敗戦となったことは確かだ。

▽3月23日(木)アジア最終予選 UAE代表戦

試合結果:2-0(勝ち)
90分(フル出場)
評価:7.5

両チームの監督が勝負のポイントに挙げた“ゲームコントロール”の部分で日本代表を助けたのが吉田だった。ラインの統率はもちろん、苦しい時のカバーリングやクリアしかり、イルマトフ主審とのやり取り、縦に速い攻撃を一時落ちつかせるボールキープなど、ほとんど文句の付けようがないパフォーマンスでチームを後ろから引き締めた。

欲を言えばもう少しラインを上げる時間帯を長くしたかったが、UAEもホームで勝ち点3を獲得するためにリスクを冒して攻勢を掛けてきており、ちょっとの隙が失点につながりかねない部分もあっただけに、状況によっては無理にラインを上げず、どっしり構えたことは的確な判断と言えるかもしれない。

■今後の課題

「存在感とかって、この前の試合は抜群だったと思う」。日本代表のチームメイトで、同ポジションのライバルでもある昌子源がUAE代表戦の吉田麻也をこう評していた。

「常に口が動いていた印象があって、僕だってもちろん攻撃の部分は見るけど、ボールの全く関係ないところで見ると、常に麻也くんが前の選手に何か言っていた」。キャプテンマークを巻いていたこともあるが、最終ラインを統率する吉田の存在感は非常に頼もしく、威風堂々とした振る舞いとコーチング、堅実なカバーリングで無失点勝利を支えた。

優勝した2011年のアジアカップからレギュラーとして日本代表を支え、ロンドン五輪で主将としてベスト4進出に貢献した吉田。

初の欧州挑戦となったオランダのVVVフェンロを経て、プレミアリーグのサウサンプトンに加入したのが2012年夏。それ以降も日本代表では常に中心的な存在だったが、クラブでの微妙な立場が要所での“頼りなさ”にリンクしていた。しかし、前半戦の厳しい競争を乗り越えてサウサンプトンでセンターバックの主力に定着し、マンチェスター・ユナイテッドに敗れたとはいえ、リーグカップ決勝を経験した吉田は、チームメイトも感心する存在感に結び付いている。

センターバックとして着実に経験を積む吉田だが、世界から猛者が集まるプレミアリーグにおいて、ワトフォード戦で経験したような対人戦、トッテナム戦で露呈したゴール前の危険をカバーするポジショニングなどは、さらに向上できる課題だ。一方の日本代表では予選に関しては、UAE代表戦で見せたようなパフォーマンスを残りの予選でも安定して発揮できれば日本のディフェンスが大崩れすることはないはずだ。

ただし、日本代表はUAE代表のように積極的に人数を掛けてくる相手より、一発のロングカウンターやセットプレーの対応に課題がある。2014年3月のヨルダン代表戦では味方のミスから受けたカウンターに吉田のカバーリングが遅れ、決勝点を奪われてしまった。同じような危険が起きた時に、しっかりとはね返せるのか。もちろん、そうした危険が生じないようにチームとしてリスクを管理できることが理想だが、90分完璧にゲームをコントロールすることは難しい。

まずは28日のタイ代表戦で勝利を収めることが重要だが、2つの“中東アウェイ”とホームのオーストラリア代表戦という厳しい試合を残しており、そこで日本を本大会に導ける大きな存在となれるかどうか。それはクラブでの成長が大きく関わってきそうだ。

文=河治良幸

Jリーグのライブを観るならDAZNで!1ヶ月間無料のトライアルを今すぐ始めよう。
広告

ENJOYED THIS STORY?

Add GOAL.com as a preferred source on Google to see more of our reporting

0