勝負の一戦に臨む川島永嗣…メスGKコーチに聞く守護神争いの真実

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(C)Getty Images
マルセイユ戦では4試合ぶりにゴールを守った川島永嗣。9日のレンヌ戦には正GKが固定されるようだが、メスの守護神争いは一体どういった状況になっているのだろうか。GKコーチに話を聞いた。

11月29日に行われたリーグ・アン15節、メス対マルセイユ戦で、メスのGK川島永嗣は4試合ぶりにゴールマウスに立った。マルセイユの右SB酒井宏樹との日本人対決が実現している。

試合は、開始直後にメスが相手ゴールを破り、よもやの展開を期待させたが、これがオフサイドで無効になると、結果的に0−3でアウェーチームが勝利した。

1点目は、フロリアン・トーバンが右サイドの微妙な位置からミドルシュート。パスでさばく選択肢もあった中、川島は「打ってくると思って、狙ってはいた」と振り返る。そして実際指先は触れていたが、外までは弾きだせなかった。

2点目は、トーバンのロングクロスを、ファーポスト前に詰めたルイス・グスタボが至近距離から押しこんだ。そして71分に決まった3点目は、酒井宏樹がトーバンとのワンツーからペナルティエリア内に侵入、川島と向き合い、自ら打つか?とも思わせたが、ゴール前でフリーだったルーカス・オカンポスに咄嗟の判断で横パス。オカンポスがこれをしっかり決めきった。

勝ち点3を手にしたマルセイユは2位に浮上、そしてメスは、変わらず最下位に「定着」している。

■正GK争いの現況

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川島のパフォーマンスは、試合後酒井が「ホントに試合勘とか関係ない人ですよね〜」と感心し、現地記者たちが「マルセイユ相手に3失点で済んで良かった」「エイジのセーブがなかったら5、6点はとられていた」と評価したように、前半30分、ギリシャ代表FWミトログルと一対一のシーンで、至近距離からのシュートをワンハンドで弾き出したり、終盤もゴールライン際で際どいシュートを防ぐなど好セーブが目立った。

アンツ監督も「エイジは良いプレーだった。相当厳しいショットを浴びせられていたが」と労っている。

それから指揮官は「GKは、(トマ)ディディヨンとエイジ2人にとって厳しい状況にある。前半戦ではディディヨンを選んだことでエイジはとてもがっかりしていたが、それでも集中を切らすことなく練習にも全力で臨み、ポジティブに取組んでいる」と、現在のGK状況にも触れた。

クラブの生え抜きで昨季、川島にとって代わられるまで第1GKだった22歳のトマ・ディディヨンと、昨年夏、『第3GK』として迎え入れられながらも実力でナンバー1の座を奪った川島。

日本代表でもゴールマウスを守る男は昨シーズン、4月半ばの31節、対PSG戦でリーグ戦に初登板すると、35節から最終節までゴールを守り、リーグ・アン残留に貢献。今シーズンは、その彼が継続するのが妥当と思われた。しかし育成型クラブであるメスが生え抜きの選手を移籍マーケットでアピールしたいと考えているなら、8月のシーズン序盤はディディヨンを使う可能性もあった。

しかして8月5日の開幕戦、ゴールマウスに立ったのはディディヨンだった。

ただしこれはコーチ陣にも厳しい選択だったとGKコーチのクリストフ・マリシェズは言う。

「プレシーズンマッチは交互に試して様子をみた。ただ、エイジは代表チームに参加していて合流が遅れたから、試合数は限られた」

7月に入ってから合流した川島が最初にプレーしたのが14日のオセール戦。その試合でメスはリーグ2所属の相手に1-4と完敗する。

そしてこの試合の結果が、ヒンシュベルジェ監督が「開幕はディディヨンで」と決める決定打となったのだという。

その理由を監督は「合流が遅れたエイジは、プレシーズンのコンディションはいまひとつだった」とメディアに話したが、マリシェズGKコーチによれば、勤勉な川島のコンディションが悪かったということは決してなく、「ピンポイントに、ただあの1試合のパフォーマンスで決まってしまった」ということだった。

■目まぐるしく入れ替わった先発キーパー

しかしディディヨンの先発は3試合しか続かなかった。3敗で計6失点の中にはディディヨンのミスによる失点もあったため、次の4節では川島を先発に起用。昨季は終盤になってようやく第1GKを交代したが、監督は「今季はそこまで様子を見ることなく臨機応変に変えていく」と決めていたという。

そうして川島は4節のカーン戦で今季初出場し、結果は0-1の惜敗だった。

しかし次のPSG戦で、ネイマール、カバーニ、エムバペのMCNに揃って得点を奪われ1-5と大敗すると、次の6戦から2試合はディディヨンに、そして8節からはまた川島にと、先発GKは目まぐるしく入れ替わった。

コーチ陣も、それが彼ら本人やチームにとって好ましい状態ではないとは理解しながらも、勝ち星のあげられない状況の中、改善策を求めて常に模索状態にあったのだ。

しかしそのヒンシュベルジェ監督も10節のディジョン戦での敗戦をもって更迭。後任のフレデリック・アンツ監督もまた、すぐにはナンバー1GKを決めることができなかった。

「着任当初、彼は、2人ともよく知らないからまずは見極めたい、という意向を示した。そこでまずはディディヨンから試すことになった」(マリシェズGKコーチ)

■9日レンヌ戦に正GKが決定

12節から14節までの3試合は、ディディヨンが登板。そして15節のマルセイユの前に、アンツ監督は報道陣に対してGK選考の方針を明確にした。

「次のマルセイユ戦はエイジを使う。そして2人を試した後、翌週の試合から正GKを固定する」

マリシェズGK コーチによれば、ニース戦のあとスタッフで話し合いを行って正GKを決定するとのことで、マルセイユ戦の3日後のニース戦でも川島の起用が濃厚だ。

そして12月9日の17節、対レンヌ戦から正GKが固定される。マリシェズGKコーチは2人の長所をこう語る。

「ディディヨンはエイジより身長が高いこともあり、空中戦をより得意としている。ジャンプの伸び幅も大きい。一方エイジは、足元を使ったライン際のセービングがうまい。国際マッチ出場など経験値においては比較にならない。それに下手にリスクを犯すようなプレーをしない」

では今の、現状でのメスに必要なGKはどのようなタイプのGKか?と尋ねると、「それに答えるのは難しい……」と躊躇しながらも、「自信をもってプレーができるタイプのGK。いまチームは厳しい状況にある、その中で、みんなを落ち着かせてあげられるような統率力があり、動じない強さ、強靭な精神力を備えていること、そして彼自身の強みをチームに加味できるような選手」と描写した。

これを見るかぎり、タイプ的に今のメスに必要なGKがどちらかは明らかなように思えるが、コーチ陣の決断は9日のレンヌ戦のピッチに誰が立っているかで知ることになる。

川島本人は、「こうして負けが続いて気持ち的には厳しいし、ポジション争いもあるので、いろいろな意味で難しさはありますけど、自分が試合に出たときに結果につなげるようなプレーをするしかない」と目の前の状況とだけ向き合っている。

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メスの現地記者の一人は、「仮にエイジに決まらなかった場合、日本代表GKである彼は冬に移籍を考えるのだろうか?」と疑問を口にしていたが、川島がいま考えているのはおそらく、次のニース戦でいかに良いプレーをするかということだけだ。

ニースのFWバロテッリは前節で今季7点目のゴールを決めて調子が上がっている。

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マルセイユ戦の夜から、チームはニース戦に向けて2日間の特別合宿に入った。着任以来4試合でいまだ0勝のアンツ監督もそろそろ勝ち星が欲しいところだろう。そして何より、次のニース戦には川島の今季の命運もかかっている。

取材・文=小川由紀子

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