■「効率的」なユーヴェのフットボール
Getty「アヤックスはユヴェントスとはまるで違うチームだった。彼らはより攻撃的でアグレッシブにプレーをしていたんだ」
ユヴェントスのゴールキーパー、ヴォイチェフ・シュチェスニーは、1-1のドローに終わったアヤックス戦でのチームメイトの「堅実な」プレーを称賛しつつも、相手チームは攻撃に関して自分たちを上回っていたことを正直に語った。
今シーズンのユヴェントスのゲームを観ていれば明らかだが、その発言は的を射ている。マッシミリアーノ・アッレグリ率いるチームは、またもやセリエAで独走し、8連覇は目前であるが、そのスタイルでイタリアを熱狂させるには至らなかった。
これまで、32試合中27試合で勝利を手にている彼らだが、そのうち観客を沸かせた試合は数えるほど。アタランタやナポリなど、ユヴェントスよりも見ごたえのあるチームはイタリアに多く存在している。ナポリのアミン・ユネスも「ユヴェントスのフットボールは美しいというよりも、効率的なんだ」と嫌味なく話している。
アムステルダムでのドローが象徴しているように、これにはロナウドの存在が大きく関わっている。
ユヴェントスのアヤックス戦でのパフォーマンスは、ひどいものだった。ボールキープに苦しみ、支配率はたったの39%、枠内シュートにいたっては1本のみだ。それでも何とかドローに持ち込んだ彼らを支えたのは、ロナウドであった。
ラウンド16のセカンドレグでハットトリックを達成し、合計スコア3-2でアトレティコ・マドリーを下した功績を思い出してみれば、実際のところユヴェントスが今でもトーナメントに残っているのは、このポルトガル人のおかげとしか考えられないのだ。
■ロナウド依存はマドリー化のはじまり?

アトレティコ戦でのゲームプランは、「ロナウドにクロスを供給せよ」といったシンプルかつ効率的なものだった。
その作戦は功を奏した。背番号7はヘディングで2度もネットを揺らし、トリノの観客を熱狂させた。そして彼は、アムステルダムでも再び頭で強烈な一撃を見舞っている。
ロナウドの圧倒的な空中戦の強さもそうだが、さらに注目すべきなのは、ノックアウトステージでゴールを挙げた選手が今のところロナウドだけであるという事実だ。
チームのパフォーマンスが低調であるにもかかわらず、ロナウド頼みで結果を得ることができるこの状況をみて、ユヴェントスが「新たなレアル・マドリー」であると思わずにはいられない。
ロナウドはラ・リーガでのレアルの失墜を、絶えずチャンピオンズリーグで栄光を残し続けることで埋め合わせてきた。
当然ながら、そこにはセルヒオ・ラモス、ラファエル・ヴァラン、ルカ・モドリッチ、トニ・クロースといったワールドクラスの選手からのサポートを受けられる環境があったが、試合を決めるのはゴールだけであり、ロナウドはその点において結果を残すことでスター選手として君臨していた。
彼はレアル時代、CLノックアウトステージにおいて、たった1人で50ゴールを挙げるという驚くべき離れ業をやってのけているのだ。そして、ロナウドなきレアルはすでに今シーズンのトーナメントから姿を消しており、逆にロナウドを迎えたユヴェントスが4強の椅子を争っていることは偶然では片付けられない。
とはいえ、ロナウドがチームを移ってもCLのタイトルを保持し続けられるのかは誰にも分からない。
アリゴ・サッキは、ユヴェントスの指揮官アッレグリが保守的で堅実すぎるため、CL制覇は難しいと考える人間の1人だ。
アッレグリ自身も「見苦しい」と認めていた、アウェーのアトレティコ戦での後半の非常におとなしいユヴェントスの姿からも、サッキが言うことが間違っていない可能性が高いことが分かる。
セカンドレグではハットトリックを決めたロナウドだが、こうした経験は彼にとって初めてのことではない。2016年のCL準々決勝、彼はベルナベウでのヴォルフスブルク戦で、同じくハットトリックを決めてチームを救った。こうしてロナウドが過去にレアルの危機を何度も救ったように、彼にはユヴェントスで堅実すぎるチームを変える救世主となることが求められている。
■「勝利」にしか価値はない

今シーズンのセリエAやCLでの戦いからも分かるように、ユーヴェは激しい攻撃を仕掛けるようなチームではない。今のところ今シーズンで1試合に4ゴール以上を奪ったのは、先月にウディネーゼを4-1で下したゲームだけだ。
彼らのプレーから感じるのは、ユーヴェが果敢に攻撃を仕掛ける力がないチームというわけではなく、単にそうしたプレーが許されていないのではないかということだ。これは、アッレグリ政権下でのベストパフォーマンスが、間違いなく昨シーズンのサンティアゴ・ベルナベウにて3-1のスコアでレアル・マドリーを下した試合で発揮されたことからもうかがえる。ファーストレグを3-0で落としていたユーヴェは、その試合でとにかく攻撃を仕掛けるしか選択肢が残されていなかったのだ。
今年1月に移籍したかつてのユーヴェのディフェンダー、メディ・ベナティアは、「アッレグリのセリエAとCLにおける功績は素晴らしいよ。彼はフットボールを本当によく理解している監督なんだ。だけど、彼がCLのタイトルをつかめるかどうかは分からないね」と語っている。
しかし、ロナウドは不可能を可能にする男だ。彼の元でゴールは高い確率で保証されており、それゆえどんなチームのどんなシチュエーションであろうと、決定的な仕事をすることができるのである。
レアルは多くのシーズンで、スペイン国内でさえもベストチームではなかったように、常にヨーロッパ最強のチームというわけではなかった。それでも彼らは、5年間で4度のチャンピオンズリーグ制覇を果たした。
確かに、彼らには運も味方していた。ロリス・カリウスやスヴェン・ウルライヒといったゴールキーパーの信じられないようなミスが、レアルに大きな恩恵を与えたこともあった。さらに、判定を巡って激しい論争が巻き起こったこともある。2016年にバイエルン・ミュンヘンのミッドフィルダー、アルトゥーロ・ビダルが退場させられたことや、その1年後にベルナベウで下された、疑惑のPK判定などがその最たる例だ。
とはいえ、チャンピオンになるためには運も必要だ。もしチェルシーとの準決勝で何度か見られた疑惑の判定がなければ、2009年のCLでバルセロナが栄光をつかむことはなかっただろう。
もちろん、当時のバルセロナはペップ・グアルディオラの指揮のもと、一生に一度とも思える豪華なプレイヤーを揃えてフットボールの一時代を築いていたことは確かだ。
ジネディーヌ・ジダン率いるレアル・マドリーが、同じような黄金期を過ごしているわけではない。しかし彼らの功績は、多くの人に認められているわけではないが、一定のリスペクトを受けていることに違いはない。「セルヒオ・ラモスとその仲間たち」にフットボールファンが反感を抱いていたとしても、彼らがCLで結果を残してきたという事実は消えないのだ。
そしてその栄冠こそ、CLファイナルで5連敗といった不名誉に耐えてきたユヴェントスが唯一欲しているものだ。
だからこそ、彼らのプレーが美しくなかったとしても、多くのユーヴェファンは気にしない。たとえ彼らのフットボールが見苦しいものであったとしても、22年間CL制覇の夢を追い続け、それが叶っていないといった現状のほうがずっと苦しいのである。
最後に笑えるのであれば、彼らは手段を問わない。レジェンドであるジャンピエロ・ボニペルティのユーヴェの哲学に関する言葉を借りるとすれば、「勝利は重要なものではなく、価値ある唯一のもの」なのである。
文=マーク・ドイル/Mark Doyle
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「※」は提携サイト『 Sporting News』の記事です

