「難しい試合だったなというふうに思っています」
本田圭佑は、そう試合を振り返った。
2018 FIFAワールドカップロシア アジア最終予選 第10戦が5日に行われ、日本代表はサウジアラビア代表と対戦した。日本は後半、一瞬のスキをつかれてファハドにゴールを許し、0−1で敗れた。本田は先発出場したが、見せ場を作ることができずに前半のみでピッチから退いた。
“らしくないシーン”が目立った。相手に寄せられてボールをキープできず、奪われてチャンスに繋げられる場面もあった。かつてワントップを務めて屈強な相手DFを跳ね返し続けてきた男からすれば、到底満足できる内容ではなかった。
「(そういったシーンは)感覚的なものかなと思いますし、ああいうところはやはり取り戻していかないといけない」
「全然ダメですね。何を言っても言い訳になる。もうダメやったっていう結果しか残らない。色んなものを取り戻していかないといけないかなという風に思います」
前半だけでピッチを後にしたのは「コンディションのことをまだ心配してくれている」という首脳陣の判断で、試合前から決まっていたという。もっとも、そうであれば前半のうちに結果を出してきたのが、本田圭佑という選手だった。示せなかったもの、取り戻さなければいけないものがある。そして、そのことは本人が最も実感している。
「事実としてサウジの方がいいサッカーしていた。(31日の最終予選)オーストラリア戦も(相手の)主力が何人か出てないってところも無視できない。結果だけでは判断できない部分があると思うんでね。振り出しに戻して、日本代表がどういった形でロシア・ワールドカップに向かうべきなのか。それを考えないといけないかなという風に思います」
最後に問いかけられた「自分自身も含めて?」という問いに対し、本田は「はい」とうなづいた。
ロシアまでに残された時間は少ない。しかも最終予選第9節のオーストラリア戦で浅野拓磨や井手口陽介といった若い力が台頭したことにより、「世代交代」がささやかれるようになった。かつて絶対的な存在だった本田にしても、今は熾烈な競争の中に身を置く選手の一人に過ぎない。
もっとも、ロシアまでに残された時間は皆平等だ。若手にも中堅にもベテランにも、等しく時間は与えられている。多くの選手が「これからは自分の所属チームで活躍を」と口にしたように、個人個人のスキルアップがロシア行きの切符をつかむカギになってくる。
本田はメキシコを、ロシアへの“中継地”と位置づけた。それは、飽くなきチャレンジ精神を持つがゆえに下された決断だった。いかにしてメキシコで輝くか。失ってしまった「色んなもの」を取り戻していけるか。
ロシアW杯を「集大成」と位置づける男は、また一から、戦いに挑んでいく。


