元フランス代表DFリリアン・テュラムには、一人忘れられない対戦相手がいるという。
クラブレベルではモナコ、パルマ、ユヴェントス、バルセロナでプレーし、さらにフランス代表としては1998年ワールドカップとEURO2000優勝を果たしたフットボール界のレジェンド、テュラム氏。スペインのフットボールカルチャーマガジン『リベロ』とのインタビューに応じた同氏は、最も記憶に残っている対戦相手として、元スペイン代表MFペドロ・ムニティス氏の名前を挙げている。
「簡単だよ。ムニティスだ。私は名前に関してほとんど記憶力がない。人の名前もスタジアム名もね。『このスタジアムでプレーしたのを覚えているか?』と言われても、覚えてはいない。『準決勝はどこでプレーした?』と言われたって分からないし、私にとってはどこかのスタジアムでプレーしたということでしかないんだ。しかしムニティスについては、とてもよく覚えている。本当に記憶に刻まれているんだ。彼はピッチ上で、私に最も悩ませた選手だった」
「あれはEUROのフランス対スペインだった。そう、2000年のだよ。本当、信じられなかったよ。『しかし、何なんだこの選手は?』と独り言を口にしていたほどだ。ハーフタイム、私は『もう無理だ』とさえ感じていた。『彼のことは止められない』とね。チームメートのクリスティアン・カランブーは『一度も抜かれてはいない』と言い張って、私を落ち着かせようとしていたよ。面白いのは、その後にスペインの監督が彼をピッチから下げたことだ。私は、心底ホッとしていたよ」
「私はときにムニティスの悪夢を見る。『うわ、ムニティスだ!』ってね。実際、フットボールの写真があまりない私の事務室に、長い間ムニティスの写真を飾っていたんだ。彼の顔を覚えておくために? いや、謙虚さを養うためだ。ムニティスは、私に謙虚であることを教えてくれるんだよ」
ムニティス氏はラシンの下部組織出身で、ラシンのほかレアル・マドリーやデポルティボでプレー。スペイン代表としては21試合に出場した。170センチと小柄で、俊敏かつ創造的なMFだった同氏は現在、スペインリーグ3部のデポルティボ・バダホスで監督を務めている。
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