Danilo Real Madrid Atletico Madrid La Liga 27022016

不安定な右サイドバックに38億円…ダニーロはマドリー史上最悪の補強となるのか

■ダニーロの加入はマドリーに何をもたらしたのか

ブラジル代表ではダニエウ・アウヴェスの後継者と目されていた右サイドバック、ダニーロがポルトから3150万ユーロ(約38億円)の移籍金でレアル・マドリーに加入したのは2015年夏のこと。

当時の彼はその資質を高く評価されており、未来は輝かしいものと思われていた。しかし現在、この移籍はマドリーにとって紛れもない大失敗との烙印を押されている。

かつてサントスでプレーしていたこの右サイドバックは、15-16シーズンの開幕戦、スコアレスドローに終わったスポルティング・ヒホン戦でリーガデビューを飾った。当時チームを率いていたラファエル・ベニテスは、フロレンティーノ・ペレス会長の強い希望で、夏に契約したこの選手をスタメンに起用せざるを得なかったという。

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突き詰めて言えば、このことが彼の失墜につながった。2-3で敗れた第11節のセビージャ戦でダニーロは、ピッチ上で自信を失い、途方に暮れていた。続く第12節、本拠地サンティアゴ・ベルナベウでのクラシコでマドリーは0-4という衝撃的なスコアで敗れる。この試合、まるでレアル・マドリーは数的不利の状況であるかのように、やすやすと右サイドからバルセロナに攻撃を許していた。そう、ダニーロが守る右側からだ。

2016年1月にベニテスがチームを去った後も、彼のプレーはたびたび問題視された。第15節アウェーでのビジャレアル戦(0-1)、第26節ホームでの“マドリー・ダービー”アトレティコ・マドリー戦(0-1)、そしてUEFAチャンピオンズリーグ準々決勝第1戦、アウェーでのヴォルフスブルク戦(0-2)……。大きな失望を覚える負け試合でダニーロはことごとくプレーしていた。

そして2015-16シーズンが終わった時、衝撃の事実が発覚する。このシーズンでマドリーが負けたのは以上の5試合だけ。つまりダニーロは敗戦したすべての試合で出場していたのだ。この事実が明らかになった時、そこにいた誰もが、彼のディフェンス能力に非難を浴びせた。

Danilo Real Madrid Atletico Madrid La Liga 27022016

■指揮官ジダンは重要な試合でダニーロを起用せず

そして残念ながら今シーズンもダニーロはレアル・マドリーにとって十分な働きを見せているとは言い難い。加入2年目になればチームにフィットし、プレー面でも改善されるだろうと思われたが、ダニーロの存在はマドリーにとって頼れる戦力とは程遠い状況だ。

右サイドバックのファーストチョイスはダニエル・カルバハルであることは揺るぎなく、彼が連戦で疲弊し始めた時に、ダニーロが出てくるという状況だ。しかも、起用される試合は激戦が予想される上位チームではなく、地力の差が明らかな下位チームとの対戦ばかりである。

ジネディーヌ・ジダン監督は今シーズン、ダニーロをリーグ戦11試合で起用しているが、バルセロナとのクラシコ、アトレティコ・マドリーとのマドリード・ダービーといった大一番では一切起用せず。チャンピオンズリーグでもラウンド16以降のビッグマッチでは出場機会さえ与えていない。

もちろん、こうした傾向はそのまま鵜呑みにして良いものではない。ただ、ジダン監督がダニーロをピッチに送り出す試合状況を踏まえると、彼に対して全幅の信頼を寄せているとは言い難いのだ。

■失点が許されない状況で“ポカ”を見せてきたダニーロ

そして、マドリーファンの中には気付いている人もいることだろう。そう、ダニーロがピッチにいないほうがチームはずっと強い、ということを。

試合中、彼はしばしばポジション外の位置に、まるで攻撃を仕掛けているかのような場所にいることがある。だがそれは奏功するどころか、彼が不在となった右サイドから反撃を許し、相手に崩されてしまうことが多い。もしかしたらこのブラジル人を今後も戦力とするのなら、右ウイングとして起用したほうが機能するのではないかと思えるほどだ。ただ、ガレス・ベイルやルーカス・バスケスを押しのけて起用するほど、攻撃面でダニーロが優れた武器を持っているわけでもない。

1月25日にホームで行われたセルタとのコパ・デル・レイ準々決勝セカンドレグでは、ダニーロはサンティアゴ・ベルナベウのファンから大きなブーイングが浴びせられた。

ファーストレグでは1-2で敗れていたにもかかわらず、逆転での勝ち上がりを狙うセカンドレグの43分、ダニーロはオウンゴールを献上して相手に先制を許した。この失点が重くのしかかり、マドリーは2-2でドロー。2戦合計3-4で、レアル・マドリーはコパ・デル・レイで早期敗退を余儀なくされた。

ダニーロはセルタと戦う前の1月12日、コパ・デル・レイ5回戦セビージャとのセカンドレグでも前半10分に美しいヘディングを見せ、自陣のゴールネットを揺らしている。あまりに見事なオウンゴールに“わざとでは?”と報じられたほどだった。

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■ダニーロはこのまま“最悪の補強”となるのか

2015年夏にマドリーに加入した際に寄せられた期待、それに応えられるプレーをこれまでのところ彼はほとんど見せることができていない。クラブを長年支えてきたイケル・カシージャスがポルトに去り、入れ替わるようにポルトからやって来たブラジル人サイドバックに失望したマドリディスタは少なくないのだ。

レアル・マドリーは近年、大型補強で獲得した選手が期待外れに終わるという失望を何度も味わっている。これまでのところ、ワルテル・サムエル、アントニオ・カッサーノ、そしてジョナサン・ウッドゲート、カカーらがそのリストに名を連ねている。

ダニーロはクラブ史上最悪の選手の一人としてそこに名を連ねる可能性は十分に高い。彼はクラブと2021年までの長期契約を結んでいるが、指揮官ジダンはカルバハルが負傷で離脱でもしていない限り、重要な試合でダニーロを優先して、ピッチへと送り出すことはないだろう。ここまで期待を裏切り続けたパフォーマンスからして、汚名返上の機会は限られている。

今夏の移籍市場に向け、レアル・マドリーはカルバハルのバックアッパーとして、新たな右サイドバックを複数リストアップしていると報じられている。果たして、ダニーロは窮地の状況下で、長期契約にふさわしいパフォーマンスを披露することができるのか。

古くはジャウマ・サントス、カルロス・アルベウト。そしてジョルジーニョ、カフー、マイコン、ダニエウ・アウヴェス……。歴史に名を残す右サイドバックをブラジルは多数輩出してきた。同胞のダニーロに彼らと同じ期待を寄せるのは、酷だった……という評価を覆すことができるのか、今後も注目するとしよう。

文=Ben Hayward/ベン・ヘイワード

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