2017-12-09-japan-yasuyuki konno(C)Getty Images

ロシアW杯出場に向けてアピールが求められる“ボーダーライン組”…初戦・北朝鮮戦の勝利が第一関門に

2018FIFAワールドカップ ロシア前、最後の国際大会となるEAFF E-1サッカー選手権決勝大会(E-1選手権)。数少ない本大会メンバー入りの可能性を賭けたサバイバルマッチが、9日の北朝鮮戦(東京・味の素スタジアム)からいよいよ幕を開ける。

4日から東京都内で事前合宿に入っていた日本代表だが、12月2日のJ1最終節・ジュビロ磐田戦で右ひざを負傷した西大伍(鹿島アントラーズ)が合流前に辞退。合宿突入後には左肋骨骨折と左足首痛を訴えた杉本健勇、6日の練習中に頭を強打した清武弘嗣の両セレッソ大阪勢もチームを離れることになった。

彼らに代わって室屋成(FC東京)、川又堅碁(磐田)、土居聖真(鹿島)の3人が追加招集されたが、メンバー23人のうち国際Aマッチ未経験者が10人という国際経験の乏しい陣容なのは間違いない。そんなチームをヴァイッド・ハリルホジッチ監督がいかにしてマネジメントするのか。2年前の2015年中国大会(武漢)では1分け2敗とまさかの最下位に沈んだだけに、その二の舞だけは許されない。

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■初戦のスターティングメンバーは?

差し当たって重要なのは初戦だ。ノルウェー人のヨルン・アンデルセン監督率いる北朝鮮は安柄俊(ロアッソ熊本)、金聖基(FC町田ゼルビア)、李栄直(カマタマーレ讃岐)のJリーグ所属3選手を含む陣容。屈強なフィジカルを生かした肉弾戦に挑んでくるだろう。オーストラリアや韓国を渡り歩き、卓越したアジア経験を誇る高萩洋次郎(FC東京)も「相手は日本に対してモチベーション高く来るし、守備のところは体にぶつかってきて自由にプレーさせない狙いでやってくる」と警戒心をあらわにしていた。ハリルホジッチ監督もデュエルを前面に押し出すサッカーを志向しているだけに、一対一の攻防はまず負けられない。そこは最大のキーポイントになりそうだ。

日本の先発はGK中村航輔(柏レイソル)、DF(右から)室屋成(FC東京)、三浦弦太(ガンバ大阪)、昌子源(鹿島)、車屋紳太郎(川崎フロンターレ)、ボランチ・今野泰幸、井手口陽介(ともにG大阪)、トップ下・高萩洋次郎(FC東京)、右FW小林悠(川崎F)、左FW阿部浩之(川崎F)、1トップ・金崎夢生(鹿島)の4-2-3-1が有力視される。高萩のところに大島僚太(川崎F)、阿部のところに倉田秋(G大阪)が抜てきされる可能性はあるものの、昌子、今野、井手口ら軸を担うメンバーは不動のはずだ。

このうち、すでにロシア当確と見られるのが井手口と昌子。井手口は2017年に入って8試合に出場している通り、指揮官の信頼は絶大だ。彼自身もプレーでチームをけん引しようという意識が日に日に高まっていて、非常に頼もしい。今回は大黒柱として攻守両面で圧倒的な存在感を示すべきだ。

一方の昌子も、10月のニュージーランド(豊田スタジアム)・ハイチ(日産スタジアム)2連戦以降は槙野智章(浦和レッズ)の後塵を拝する格好となっているが、センターバックの重要な戦力の1人に変わりない。今回は槙野も欧州組の吉田麻也(サウサンプトン/イングランド)もいないだけに、彼が最終ラインのリーダーとして守備陣のみならず、チーム全体を統率する必要がある。その役割をよく理解しているから、練習でもつねに先頭を走り、声を出している。本人は「僕は鹿島でキャプテンマークを巻いていないけど、チームでもずっと先頭を走っているし、海外組がいる中でも極力先頭を走ろうと思っているから」と謙遜していたが、最終予選終盤につかんだ代表レギュラーを奪回したい思いは強い。そこに近づけるような守備リーダーとして発信力を示してほしい。

■ボーダーライン組にとってのラストチャンス

それ以外のメンバーは、本大会出場を目指して懸命のアピールを見せなければならないだろう。とりわけ、ロシア大会のアジア予選に出場した金崎、小林、今野の3人は最終メンバーに滑り込める可能性が少なくないだけに、この好機を生かすしかない。

金崎は2015年11月の2次予選・シンガポール戦(シンガポール)と2016年3月の同・アフガニスタン戦(埼玉スタジアム)でそれぞれ1点ずつ奪っていて、得点能力の高さとゴール前でのアグレッシブさは折り紙付き。アジアトップレベルの相手にその能力を堂々と出せれば、ロシア行きの道も開けてくる。実際、1トップに関しては、大迫勇也(ケルン/ドイツ)以外は横一線。日本代表111試合出場50得点の岡崎慎司(レスター/イングランド)でさえ復帰できるか未知数だ。それゆえ、金崎には少なからずチャンスが広がっている。それを頭に入れて、北朝鮮戦のピッチに立ってほしい。

2017年JリーグMVP&得点王に輝いた小林も今まさに旬の選手。久保裕也(ヘント/ベルギー)、浅野拓磨(シュトゥットガルト/ドイツ)、本田圭佑(パチューカ/メキシコ)がしのぎを削る右FWに滑り込むのは至難の業だが、小林が今大会でゴールを量産し、FWとしてマルチな能力を示すことができれば、状況も変わってくる。今回の事前合宿でハリルホジッチ監督は金崎と小林の2トップもテストしていたが、彼にはそういう起用法も考えられる。そこもメリットと言っていい。2016年10月の最終予選・オーストラリア戦(メルボルン)でも前線からのアグレッシブな守備、ゴール前への推進力を見せていて、アジアレベルなら十分やれるはず。ここはエース級の働きを示すことが肝要だ。

国際Aマッチ90試合4得点の今野にも「代表魂」を示してもらう必要がある。2014年ブラジルW杯経験者の清武が離脱した今、真の世界レベルを知るのは彼しかいない。本人もブラジル大会最終戦のコロンビア戦(クイアバ)について「中盤での球際だったり、ルーズボールってのは全部持っていかれた。パススピードもムチャクチャ速かったし、差をすごい感じた。チームとしてやることも大事だけど、やっぱ個も上げないといけない」と神妙な面持ちで語っていた。その経験値はフレッシュなメンバーの多い今回の日本代表にとって非常に大きい。本人も「ハリルジャパンでは新人」というチャレンジャー精神を前面に押し出していくつもりだ。その飽くなき向上心とタフなメンタリティーは必ずチームにプラスに働くだろう。

こうした面々を軸に一体感を持って戦い、北朝鮮を下すことができれば、2大会ぶりの東アジアタイトル獲得も現実味を帯びてくる。韓国のシン・テヨン監督が「韓国はこれまでこの大会で3回優勝したが、連覇したチームはない。今回それを達成するのではないかと思う」と自信満々にコメントしていたが、そのプライドを打ち破ることが日本代表に課されたノルマだ。そういう機運を盛り上げるためにも、まずは初戦で北朝鮮にいい内容で勝ち切ること。それを日本代表には強く求めたい。

文=元川悦子

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