Cristiano Ronaldo Real Madrid Juventus

レアル・マドリーに立ちはだかるジンクスとユヴェントスの鉄壁…史上初の連覇を成し遂げるために

UEFAチャンピオンズ・リーグ準決勝のセカンドレグ、レアル・マドリー対アトレティコ・マドリーは、ジネディーヌ・ジダン監督率いるレアルが第一戦のアドバンテージを維持し、6月3日にカーディフで行われる決勝へと駒を進めた。決勝の対戦相手はユヴェントスである。

CLには1989-99シーズンから27年間に渡り、7年周期でイタリアが優勝するというジンクスがある。そのジンクスに従うのであれば、まさに今年がイタリアのチームが優勝する年になるのだ。しかし11度の優勝を誇るレアルにもそんなジンクスを跳ね返すだけの力がある。

決勝戦はヨーロッパ最高の2チームが勝ち進んだ。この日は今から待ち遠しい特別な一夜となるだろう。どのような試合が展開されるのか。早速両者の力を分析してみよう。

■ユヴェントスの鉄壁に挑む、C・ロナウド

まず、ユヴェントスが長けているものの一つは、言うまでもなく守備力だ。準々決勝のバルセロナ戦では、その自慢の守備力でバルサの攻撃をシャットアウトし、2試合合計3-0で欧州をリードし続けるビッグクラブを葬り去った。バルセロナはリオネル・メッシ、ルイス・スアレスそしてネイマールの3人で今季のCLで記録した26得点のうち18ゴールを積み上げてきたが、その世界最高のトリデンテ(3トップ)でさえもユヴェントスの守備陣という高い壁の前に為す術はなかった。

しかし、その守備陣がレアルの攻撃を同じように止めることができるかと言われれば、ユヴェントスの関係者以外確信を持った答えは出せないだろう。レアルにはバルサが持っていない武器がある。それはどんな守備にも風穴を開けてきたクリスティアーノ・ロナウドという存在だ。世界最高の選手はメッシかクリスティアーノ・ロナウドかという論争は長く続いているが、少なくとも今シーズンのCLにおいてロナウドの活躍は目覚ましいものがある。

6カ月もの間ゴールなしという不毛な時期を過ごし、ついには“全盛期を過ぎた”とまで囁かれていたロナウドであるが、彼はここ数試合で一気にギアを上げてきた。バイエルン・ミュンヘンとアトレティコを相手に3試合で8ゴールを挙げ、そのうちの2試合は連続でハットトリックを決めるなど大爆発しているのだ。

世界最高のGKマヌエル・ノイアー擁するバイエルン、そして強固に洗練された守備システムを誇るアトレティコでさえもロナウドを止めることはできなかった。もし彼がユヴェントスのマークをくぐり抜け、GKジャンルイジ・ブッフォンの隙を見つけたならば、スコアボードの数字は次々に変わっていく可能性さえある。エリア周辺でボールが一度ロナウドに渡ってしまえば、ユーヴェ陣営は彼が枠を外すのを祈る他に出来ることはないだろう。

Gigi Buffon Juventus Monaco Champions LeagueGetty Image

■レアルは守備面に不安?

ただし、ロナウドの活躍はさておき守備面のみに注目をすればユヴェントスの優勢は変わらない。ブッフォンは今大会のGKで最多となる8試合を無失点で終えており、手足を問わずその素晴らしいセービングで勝利に貢献している。CLの決勝トーナメントにおいて、ユヴェントスのゴールが破られたのは準決勝でモナコのFWキリアン・ムバッペがショートコーナーから一瞬の隙を突いて得点したときのみだ。

さらにディフェンスラインでは、レオナルド・ボヌッチとジョルジュ・キエッリーニが非の打ち所の無いパフォーマンスを披露している。指揮官のマッシミリアーノ・アッレグリはこの2人にセンターバックのアンドレア・バルザーリを加えた3バック、またはオーソドックスな4バックという多彩なプランでゲームをコントロールしている。ユヴェントスの守備陣はどのような布陣であろうと、流動的にプレーすることを身に付けている。

一方のレアルはというと、ユヴェントスとは対照的に場当たり的なものになっているのが現状だ。GKケイロル・ナバスが守るレアルはアトレティコとの準決勝ファーストレグは無失点で抑えたものの、公式戦での失点数は昨季を超え、とてもではないが“強固”というものからはかけ離れている。守備陣でカギとなるのはキャプテンのCBセルヒオ・ラモスとSBマルセロだが、彼らの存在感は守備というよりも反対側のゴール前で得点やアシストを決めるという点でより際立つというものだ。

ユヴェントスの狙いは試合序盤に訪れるであろうチャンスを確実にモノにし、レアルの攻撃をシャットアウトするという分かりやすいものだ。ユヴェントスにはダニエウ・アウベスとアレックス・サンドロという優れたサイドのオプションを持っており、もしレアルの隙を突くことができれば得点のチャンスは訪れるだろう。

Toni Kroos Real Madrid Champions LeagueGetty Images

■中盤の戦いを制するのは?

それでは両チームの中盤を見ていこう。レアルはロナウドがビセンテ・カルデロンで決めたハットトリックのおかげでアトレティコを退けることができたわけだが、そこに至るまでには、クオリティの高いラストパスを出すことができる中盤の存在があったことを忘れてはいけない。

ジネディーヌ・ジダンは依然過小評価されているが、少なくともアトレティコ戦においては主導権を握ることに成功している。指揮官はMFイスコに自由を与えたことで数的優位な状況をつくり、両サイドのダニ・カルバハルとマルセロの動きを効果的にした。それに加えレアルにはカゼミーロのカバー能力やトニ・クロースとルカ・モドリッチの高い構成力がある。アトレティコ戦でも彼らのプレーは中盤にバランスをもたらし、ピッチ中央を完璧に支配することに成功したのだ。

しかしユヴェントスとの決勝では、アトレティコ戦での成功は頭から一度消し去る必要があるだろう。なぜならユヴェントスは喜んでレアルにボール支配を譲るからだ。ユヴェントスはボールを支配することをレアルに譲った上で、どんなチームであれシャットアウトするだけの戦術的なアドバンテージを有するという自負がある。

だが、レアルがボールを支配し続けたとすれば、理論上いつかはギャップが生まれてくる。ずっとボールを追い続けるとなると、さすがのユヴェントスも消耗するはずで、前線へフィードを送ることも難しくなるはずだ。ユヴェントスはレアルに比べて守備陣に安定感があることは確かであるが、可能な限りポゼッションをフィフティ・フィフティに近づけなければ、レアルの猛攻を前に決壊してしまう確率は上がるだろう。

Gonzalo Higuain Monaco Juventus Champions LeagueGetty Images

■レアルのロナウド、ユヴェントスのイグアイン

FW陣に関してはロナウドに注目が集まりがちの中、存在感が薄まっているFWカリム・ベンゼマにも触れておきたい。調子が良い時の、彼のロナウドとFWガレス・ベイルを効果的に活かす能力に疑いはない。準決勝の2ndレグでも、ジダン監督が尋ねてしまうような理解不能のドリブル突破からイスコのゴールをお膳立てしている。

だが、エリア内での仕事ぶりには疑問符がつけられている。最前線に立つ彼自身のゴールとなると、再三チャンスを逃してきたと言わざるをえない。これが彼のパフォーマンスを不満に思うファンからさらなる反感を買っているのだ。

一方で、ベンゼマとのレギュラー争いに敗れ、スペインの地を去った男がユヴェントスにはいる。ゴンサロ・イグアインだ。イグアインはセリエAではすでに24ゴールを記録し、モナコとの第一戦では2ゴールを挙げてチームを勝利に導く選手となった。イグアインは今、自信を持った選手であり、かつて所属したクラブに“恩返し”をしてやろうと考えているはずだ。

Alvaro Morata Deportivo Coruna Real Madrid LaLiga 26042017

■控え選手はレアルが優位か?

厳しい試合が予想されるがともにゴールが生まれないような展開であればユヴェントスが有利であると言えるだろう。だがもしジダンがベンチメンバーからインスピレーションを得れば、ユヴェントスのチーム以上にチャンスを得られるかもしれない。

元ユヴェントスのレアルFWアルバロ・モラタは、今シーズン、スターティングメンバ―に名を連ねることはあまりないが、それでもリーグ15得点を挙げている。CLではこれまですべて途中出場ながら3得点を決め、今大会リザーブメンバーで最も多くの得点を決めた選手である。

MFマルコ・アセンシオに関してもバイエルンとアトレティコのファーストレグにおいてベンチスタートだったのにも関わらず、ともに途中出場ながらアシストと得点を記録し、チームの決勝進出に大きく貢献した。彼はレアルの次世代を担う期待の若手の一人である。

今大会レアルがここまで挙げた31ゴールのうち6つが控えメンバーによる得点であり、これは今シーズンどのチームよりも多い数字だ。控えにはモラタとアセンシオの他にも、ハメス・ロドリゲス、ルーカス・バスケスという秘策が虎視眈々と準備を進め、ともに控え選手からの脱却を狙っている。

ユヴェントスのスターティングイレブンはトップクラスだが、ベンチメンバーはレアルほどのクオリティを備えていない。ベンチも含めた試合の展開を想像すると、ユヴェントスがレアルを抑え込むことは難しいだろう。

ユヴェントスのベンチにはMFフアン・クアドラードやクラウディオ・マルキージオがおり、彼らは中盤に機能性をもたらしてくれる選手ではあるが、他に特筆すべき存在はいない。この点はレアルが大きなアドバンテージを有している。ジダンはこの厚い選手層を活かして、鉄壁のユーヴェ守備陣を打ち破ることができるだろうか。指揮官の力も試されている。

ジンクスに従えば今年は守備力で勝るユヴェントスが優勝するが、またそれに勝るとも言える攻撃陣がレアルには備わっている。いずれにせよ、6月3日の夜はCL史に残る最高の試合が展開されることとなるであろう。

文=ピーター・ストーントン/Peter Staunton

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