2019_9_18_Sugimoto(C)J.LEAGUE

ルヴァン杯・鹿島vs浦和でVARモニターを確認しなかった理由。選手や観客に求められる理解とは

JリーグのYouTube公式チャンネルが、気になったジャッジを徹底解説する「Jリーグジャッジ リプレイ」の番外編として「ビデオアシスタントレフェリー特集」を16日に公開した。

Jリーグ原博実副理事長、Jリーグウォッチャーの平畠啓史さん、JFAトップレフェリーグループ扇谷健司マネージャーが登場し、今シーズンのJリーグYBCルヴァンカップ・プライムステージ準々決勝から導入されているビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)の運用について解説した。

明治安田生命Jリーグでの導入に先駆けて、ルヴァンカップにて運用されているVAR。4日、8日に行われた準々決勝では、Jリーグの公式戦として初めての使用となった。

以下に続く

扇谷氏は、原則としてVARは「ビデオを使いながら主審の判定をサポートするもの」であると説明する。関与できる場面も「得点かどうか」、「PKかどうか」、「退場かそうではないか」、「カードの出し間違い」の4つの事象について「明白な間違い」があった場合に限られるとのことだ。

「誰が見てもこれは違うのではないかというものに介入する。あとは主審が判断できない、見えないものも当然ある。ハンドだったり、全然プレーと関係ないところで相手選手を蹴ってしまったとか、そういったものに関与することがVARの原理・原則」

つまり、あくまで最終決定を下すのは主審であり、VARの役割はその判断材料が不足していた場合に補うことに過ぎない。それも、関与するのは重大な4つの事象のみだ。FKやスローインの度に使用されるものではないとしている。

■VARの介入の仕方は2パターン

VARが介入する場合の主審の関わり方には、大きく2つのパターンがあるようだ。

そのうちの1つが『オンフィールドレビュー』と呼ばれるもの。主審がピッチ上でVARを使用するジェスチャーをし、実際にピッチ脇のモニターを確認しに行くものが当てはまる。用いられるのは、「反則の強さ」や「オフサイドポジションから相手選手を妨害したか」など、事実かどうかのみでなく「主観的な判断に基づく判定を下す場合」だ。

もう1つのパターンは『VARオンリーレビュー』。通常であれば「客観的な事実に基づく判定を下す場合」に用いられ、「オフサイドラインを出ているかどうか」、「反則が行われたのはペナルティーエリアの内側か外側か」といった主観的に判断する余地がないものに適用される。この場合、主審はVAR使用のジェスチャーを行った後、モニターを確認せず無線で情報を受け取って最終判断を下す。

■オフサイドの旗を上げるタイミングが変化

2019_9_18_Flag(C)Getty Images VAR導入下の試合において、特にオフサイドを判定するタイミングに関して留意すべき点があると扇谷氏は語る。

「VARを使う試合の中では無線で使う言葉の決め事が増えていて、その中でオフサイドディレイという言葉を使っている」

「副審はオフサイドだと判断しているが、万が一間違って実際の得点が取り消される可能性がある。それを避けるために、1メートル、2メートルくらいの間で(オフェンスが)オフサイドポジションにいて、それも攻撃が相手のゴールにダイレクトに向かっているケースでは、旗を上げないでオフサイドディレイという言葉を使う。一連の攻撃が終わったタイミングで旗を上げてください、という流れなっている」

この『オフサイドディレイ』という言葉が使われた場合、際どい状況のオフサイドによって得点機会が作られた際に、副審が旗を上げるのは攻撃の流れが切れたタイミングになる。主審が即座に笛を吹かないことで守備側の選手や観客に混乱が生まれる可能性があるが、VARであれば通常は見逃すことがないため、双方に不利益を生まないための仕組みになっているようだ。

『オフサイドディレイ』に関してつきまとうのが「どこからどこまでを一連の攻撃」とするかという問題だ。得点が決まった際に、数分前のプレーでのオフサイドに遡って取り消しとすることは可能なのだろうか。

「1分前のオフサイドを適応するのは難しい」と語る扇谷氏によれば、その範囲は『APP(Attacking Possession Phase)』という言葉で定められているという。「得点、PKとなる、また決定的な得点の機会阻止の反則が起こる前にVARが攻撃側の反則があったかどうかをレビューすることが可能な範囲」と説明されるAPPは、VARの担当者によって攻撃の度に整理されるとのこと。一連の攻撃が続いているか否かはVARが判断し、それを基に主審に助言することになる。

■VARは常に主審と意見を交わしている

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最後に、『ジャッジリプレイ』ではSNS上で議論が巻き起こったVAR導入試合における一例を紹介。ルヴァンカップ準々決勝第2戦鹿島アントラーズvs浦和レッズの試合終了間際、ボックス内に侵攻した浦和FW杉本健勇が鹿島DFブエノと接触して倒れた場面だ。ブエノはボールに触れておらず、PKだったのではないかという疑問が噴出しているが、主審はVARのモニターを確認せずにノーファウルとした。

このシーンについて、扇谷氏は「数字で言うと9割の人がPKと思うような明白なもの」であるかが重要だと指摘。さらに、実際に試合中に交わされたVARと主審のやり取りの音声を流した。

音声の中ではまず、VARが主審に対してPKの可能性があることを指摘する。それに対して、主審はコンタクトを認めつつも「自分からディフェンスのコースに身体を入れている」と強く主張。すると、VARも納得した態度を示す。これを確認した扇谷氏は主審の判断を尊重する立場をとる。

「主審がどう判断したかを常にVARに伝えるということが非常に重要。VARはそれを聞いて、レフェリーが言ったことと自分たちが映像で見たことに違いがあるかということの擦り合わせをしなくてはならない」

「(微妙な)場面でもVARが何もしていないわけではない、ということを理解して欲しい」

つまり、VARと主審の間に齟齬が生まれていなかったため、「明白な間違い」でもなく、モニターを確認せずに最終決定を下したことに問題はないという意見のようだ。また、原副理事長は「PKかどうか全部見てくれると思ってしまっている。そうではなく、明らかな時にしか介入しないということを選手にも観客にも理解してもらうことは重要なこと」だと締めくくっている。

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